業種別開業ガイド

1,000円カット

トレンド

(1)1990年代後半に本格的に登場して以来、「QBハウス」を展開する業界大手のキュービーネットホールディングスなど大手チェーン店を中心に売上、店舗数ともに伸張をみせており、飽和状態が続く理美容業界にあって独自のポジションを固めつつある。

1,000円カットが台頭する反面、理美容業界全体は苦戦を強いられており、2013年には2兆2,000億円台であった市場は、2018年には2兆1,382億円と、微減で推移している(矢野経済研究所調べ)。

(2)ビジネスマン、低学年の子供を主なターゲットとしてきたが、最近は毛先を揃える際などに使い分けて来店する女性客のほか、高齢者の利用も見られる。

(3)人件費高騰、消費税増税の煽りを受け、代名詞であった「1,000円」から1,200円~1,500円ほどに料金を改定するチェーンが増えている。

ビジネスの特徴

髭剃り、シャンプー、カラー、パーマなどを行わず、カットのみに特化した1,000円カットは、10分1,000~1,200円をベースとした短時間・低料金を売りとする理美容業態である。予約不要で、店頭に券売機を設置することなどで受付人員(アシスタント)を要さず、スタイリスト(美容師、理容師)のみで運営できる点が特色となる。また、大型の洗面台なども必要とせず、比較的簡素な設備での開業が可能ではあるが、客単価が低いため、集客が重要であり、大型商業施設内や駅近物件など好立地への出店が求められる。

コンセプトが単純明快であり、料金以外の付加価値を付けづらい面がある関係上、立地次第では大手チェーン店以外でも安定した経営が期待できる。

開業タイプ

(1)通常型

平均的に集客の見込める駅近物件への出店に対し、大型商業施設内は平日、ビジネス街への出店は休日の集客に課題を抱える。

(2)転向型

既存の理容室・美容室より改装。開業時より一定の固定客、スタイリストを確保できている点に強み。ただし、住宅地や生活道路に隣接するような従来店舗を踏襲するケースがあり、立地に恵まれないことも多い。

開業ステップ

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下のとおり。

開業のステップ

(2)必要な手続き

1,000円カットの手続きは主に美容所登録型、理容所登録型の2タイプがあり、加えて双方の資格を有する者のみからなる重複開設型も稀にある。

2-1)保健所への届出

美容所・理容所を開業する場合、開業予定日の1週間前までに保健所への届出を行う必要がある。届け出に際しては、以下のような書類を必要とする。

  • 開設届
  • 施設の平面図
  • 構造、設備の概要
  • 施設付近の見取り図
  • 開設者が法人の場合は、会社の登記簿謄本
  • 有資格者の美容師・理容師免許証
  • 従業員名簿
  • 従業員の健康診断書

2-2)検査確認

美容所・理容所開設の届出をした後、その構造設備について基準に適合していることの 確認を受ける必要がある。開設の届出から営業開始まで1週間程度かかるため、営業開始 予定日までの日程に余裕を持って申請すること。

*個人事業主の場合は、開業1カ月以内に税務署に「開業届出書」を提出する必要がある。

スタイリスト(美容師・理容師)の確保

理美容業界は定着率が低く、1,000円カットの課題としてスタイリスト(美容師、理容師)の安定した確保の難しさが挙げられる。そのため、大手チェーン店は研修制度の充実を図り、実務経験のない美容師の採用にも積極的である。特色として残業や休日講習の少なさ、パーマを扱わない特色があるため、小規模で開業する際には育児や重度の手荒れなどで離職した美容師の採用にも活路を見出したい。

必要なスキル

美容所登録型を開業するには、経営者自身が「美容師」の資格を有しているか、「美容師」の資格を有する者を雇用していなければならず、常時2人以上の美容師が従事する店舗においては「管理美容師」を置く必要がある。同様に理容所登録型を開業するには経営者自ら「理容師」の資格を有しているか、「理容師」の資格を有する者を雇用する必要がある。また、理容師が常時2人以上従事する店舗には「管理理容師」を置かなければならない。

1,000円カットの特色として、スタイリストの指名制を採用していないため、スタイリスト個人の集客力に依存する部分は少ないが、その分、スタイリストが兼ねることの多い経営者にはカット技術とは異なる、店舗運営のセンスも求められてくる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

駅近の好立地物件に出店することを想定して必要な資金例を記載する。

【参考】5坪・3席の1,000円カットを開業する場合に必要な資金例

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

年間営業日数、1日あたりの客数、平均客単価を以下の通りとして、売上高を算出した。

売上計画例の表

b.損益イメージ

標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

※標準財務比率は理容業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

通常の美容業、理容業と同様に労働集約的な側面が強い。加えて1,000円カットといった性格上、客単価が抑えられるため、客回転数を高め、粗利を稼ぐことが重要であり、好立地への出店で嵩みがちな家賃を如何に賄うかが当面の鍵となってこよう。そのためにも効率化の追及は不可欠で、適正なカット時間10分を守るべく、カット開始時のカウンセリング力を上達させ、カット後のやり直しを発生させない技術も必要となってくる。

通常の理美容室に比べ初期投資が抑えられ、投資回収期間も短いため、開業した店舗が軌道にさえ乗れば早期の多店舗展開も視野に入れやすい業態ではあるが、その場合、経験のあるスタイリスト(美容師・理容師)の確保が大きな課題となってこよう。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)