業種別開業ガイド

まつ毛エクステサロン

2019年 10月 17日

トレンド

(1)まつ毛エクステサロンの市場規模は拡大

まつ毛エクステサロンの市場規模は、近年拡大を続けている。背景としては、まつ毛エクステ自体が一般化したほか、化粧時間の短縮を図りたい客が定期利用するようになっていることが大きいと考えられる。

「美容センサス2019年上期」(株式会社リクルートライフスタイル ホットペッパービューティーアカデミー)の調査結果や総務省統計局調査の女性人口から、まつ毛エクステサロンの市場規模は800億円程度の市場規模と推計される。

(2)まつ毛エクステの施術には美容師資格が必要

2003年に厚生労働省は、まつ毛エクステが美容師法に定める美容に該当する旨を回答し、2004年・2008年の二度にわたって通知を行っている。さらに2017年には経済産業省からも、まつ毛エクステンションの施術には、施術の範囲が一部であっても美容師免許が必要である旨の回答が公表されている。

(3)専門サロンには類似サービスや複合サービスとの差別化が求められる

美容師免許が必要ない方法として、客に施術方法を指導して自分でまつ毛を付けさせる「セルフ方式」の店が現れている。セルフ方式では価格の安さや一定の頻度で店に通わなくて済むことなどを訴求している。

その他に、一般の美容室のメニューとしてまつ毛エクステを行うケース、アイブロウと合わせてアイビューティーサロンとして営業するケース、ネイルメニューとの同時施術をうたうケースなどもある。

まつ毛エクステサロンとしての専門性による差別化が、より一層求められるようになっている。

開業のステップ

ビジネスの特徴

独立開業して適正な営業を行っていくという点では、参入障壁が高いというのが、まつ毛エクステサロンビジネスの特徴である。美容師の資格が必要であるうえ、一般の美容室では技術を習得することが難しいため、スクールに通い関連資格を取得するなどして基本的な技術を習得する。そのうえで、まつ毛エクステサロンで一定の経験を積み、独立のための資金も貯めてから独立開業する。施術を行うスタッフにも美容師資格と基本的な技術の習得が必要となる。このプロセスを経なければならないため、それほど簡単に開業できる訳ではない。

開業時の特徴としては、小規模店舗から始められ、立地が良ければ狭小な物件でも開業することができ、初期投資を抑えられる。

開業後の特徴としては、固定客の獲得が重視されるビジネスモデルであることが挙げられる。まつ毛エクステは、客がまつげエクステをやめない限りは、メンテナンスを繰り返すために、一定の頻度でサロンに通い続けることになる。そのため、スタッフの技術力と接客力、店舗の雰囲気の醸成により、自店を利用する固定客のリピート利用を維持することがポイントとなる。

開業タイプ

実際の開業のパターンとしては、美容師免許を持たずに美容師免許保有者を雇用して開業するパターンと、美容師免許を持つ本人が開業するパターンがあるが、ここでは後者のパターンに絞って記述する。無免許開業者によるトラブルが続出し、美容師免許が必要になった経緯があるためである。

開業タイプとしては大きくフランチャイズチェーン加盟タイプと独自ブランド新規開業タイプに分かれる。

(1)フランチャイズチェーン加盟タイプ

メリットとしては、確立されたブランドがあることのほか、チェーン本部からの支援が受けられることがある。開業立地で有利になることもある。

デメリットとしては、フランチャイズ契約に縛られることと、フランチャイズフィーと呼ばれる初期加盟料や毎月支払うロイヤリティの負担が挙げられる。

(2)独自ブランド新規開業タイプ

メリットとしては、自分が思うような店舗をつくり上げることに向いていることが挙げられる。また、フランチャイズフィーやロイヤリティの負担がないことも資金的には大きなメリットとなる。

デメリットとしては、まず店舗運営を軌道に乗せるまでに時間が掛かることが挙げられる。また、自分自身にノウハウが不足している場合には、まつ毛エクステサロンの経営に関する専門的な支援を受けにくいこともデメリットとなる。

開業ステップ

(1)開業のステップ

ここでは比較的長いステップになるが、まつ毛エクステサロンの開業を目指して美容師資格の取得から始め、店舗への勤務を経て独立開業する例で開業のステップを記述する。

(2)必要な手続き

美容師免許の保有を前提にすれば、開業に特有の手続きは、保健所への美容所登録の手続きである。それ以外は、一般の開業手続きを行うことになる。

メニュー例

以下に示すメニューは一般的なものを挙げている。他店のエクステのリペアは、接着剤の混合などの問題があるため行わないことが一般的である。

  • お試しメニュー
  • 通常のエクステメニュー(本数ごとの料金)
  • プレミアムなエクステオプション(オプション料金)
  • リペアケア
  • リムーブ(オフ):付け替え
  • 他店リムーブ:付け替え
  • リムーブ(オフ)のみ
  • 目元ケアメニュー(保湿など)

必要なスキル

自らが独立開業してサロンオーナーとして施術も行う場合、前述の通り、美容師免許が必須である。また、まつ毛エクステに関連する資格を取得していることが望ましい。

店舗運営という観点では、まず自らの技術力・接客力が重要である。サロンオーナーの技術力や接客により固定客になることが多い。さらにそれをスタッフに指導し、店舗の経営管理を行うスキルがサロンオーナーには求められる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

ここでは独自ブランド新規開業タイプの例で記載する。フランチャイチェーン加盟タイプの場合、各チェーンの事業説明会などで詳細に説明されることが多い。

【面積20坪程度の店舗を開業する際の資金例】

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

年間営業日数、1日あたりの客数、平均客単価を以下の通りとして、売上高を算出した。

売上計画例の表

b.損益イメージ

標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

c.収益化の視点

収益化の視点としては、第一に固定客の維持が挙げられる。売上計画に示したような形で安定的な売上をあげられることが収益化の第一歩となる。

第二の視点としては、客単価の向上が挙げられる。まつ毛エクステは近年、平均単価が上昇しているが、その牽引役は30代・40代の女性である。経済的に一定の余裕のある客に対し、価値を訴求したプレミアムメニューを販売することが単価向上につながる。

第三の視点としては物販売上の拡大が挙げられる。いわゆる技術料(人件費)の比率が高くなるため、アイケア商品などの併売を行うことが収益化の視点となる。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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