業種別開業ガイド

化粧品販売店

2019年 12月 3日

トレンド

(1)化粧品の市場規模

富士経済の国内化粧品市場調査(2018年9月)によると、化粧品市場は2015年以降、毎年3%を超える拡大が続いており、2018年は2兆7,858億円(見込)となっている。また、同調査では2020年には3兆円を超えると予想、インバウンド需要、しわ改善などの効果がある高機能品、敏感肌向けの機能を持つ製品や、新しいコンセプトの製品により、活況を呈するとしている。

また、総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯、2018年)によれば、世帯当たりの年間支出額は2008年の42,954円から2018年には47,740円へと増加している(石鹸類・化粧品)。

(2)インフルエンサー・マーケティングによる広告戦略

化粧品は従来からテレビCMや雑誌の広告、ファッション誌の記事などを通じたマーケティングが行われてきた。最近では、インフルエンサーと呼ばれる影響力のある有名人を起用した動画による若年層向けの訴求がなされている。また、ある化粧品メーカーでは男性向け化粧品を成長市場ととらえ、「企業の従業員向けセミナー」の場で、肌を清潔に見せることがビジネスにおける成果に直結することを訴求するマーケティングまで行われている。

(3)販売チャネルの多様化

化粧品の小売のチャネルは、大別すると専門店や百貨店などにおける対面販売とドラッグストア、ホームセンター、コンビニエンスストアなどにおけるセルフ販売に分けられる。国内大手メーカーの商品や海外の高級ブランドでは対面販売の店舗が多く、リーズナブルな商品はセルフ販売店舗での取扱いが主となっている。

特にドラッグストアチェーンの急激な普及やコンビニエンスストアでの取扱いにより、販売チャネルは多様化している。

近年ではエステティックサロンや美容院で化粧品を販売する例や健康食品販売業が化粧品を販売する例もあり、他の業種もビジネス上の競合となる可能性がある。

ビジネスの特徴

化粧品は、メーカー系列の販売会社経由で取扱う化粧品専門店の専用商品と、一般の商品に大きく分かれる。高価格帯の化粧品と低価格帯の化粧品と二極化しており、前者の専用商品は高価格帯、後者の一般の商品はコンビニエンスストアやドラッグストアなどでも販売される低価格帯という傾向がある。

また、製品の種類や容量にもよるが、化粧品は他の嗜好品消費財に比べて購入間隔は長い傾向がある。そのため、化粧品販売店では、売れ筋商品の見極めや在庫管理などが課題となってくる。

開業タイプ

出店にあたっては、すべてを自らの責任で選ぶ一般の化粧品小売店と、メーカーの販売代理店として開業する方法がある。

(1)一般の化粧品小売店

出店場所や商品の仕入れなどに努力を要するが、努力が実れば高収益が期待できる。なお、他店との競合状況や小売業態によっては、直接メーカーやメーカー系列の販売会社から仕入れることができない場合がある。そのため、二次卸を利用する場合には、仕入原価が相対的に高くなる点に注意する必要がある。

(2)メーカーの販売代理店

系列の販売代理店などで「●●レディ」などの形で販売員として経験を積んだ後に独立する形が一般にみられる。メーカーの支援体制や開店の経費については、メーカーごとに異なるため、詳細を確認しておく必要がある。

開業ステップ

(1)開業のステップ

出店にあたっては、主に取扱商品の選定と出店場所の確保が重要となる。出店地域の選定は十分な調査が必要である。化粧品は嗜好性が高く、商品が気に入ると使い続ける傾向が高いため、リピーターを獲得できれば売上が安定する。反面、競合他社が多いビジネスであり、取扱商品の選定と顧客との関係維持の工夫が求められる。そのため、利便性を武器とするコンビニエンスストアやドラッグストアとの競合を避けるのも有効である。具体的には、店舗立地は路面店であれば意図的に路地裏や、ビルの二階以上を選定し店舗賃料を抑えるなどの方法がある。

開業のステップ

(2)必要な手続き

化粧品販売店は、国内メーカーの化粧品や他社が輸入した外国製化粧品を販売する限りは許認可業種ではないので誰でも開業できる。しかし、外国製の化粧品を自ら輸入・販売すると「化粧品製造業」「化粧品製造販売業」の許可が必要になる。

なお、メーカーによっては販売のための独自資格を求めることがあるため、取扱商品の選定をされる際に確認する必要がある。それ以外の手続きは、許認可が伴わない事業者の開業手続きと変わらない。

必要なスキル

(1)メイクや美容に関する知識及び経験

提供価値に直結する部分である。化粧品販売店は、単に化粧品というモノを販売するのではなく、「より、きれいになれる期待」という夢を売るビジネスでもある。販売員が身なりに気を使っているのは当然であり、来店客にアドバイスできるだけのメイクや美容に関する知識は常に学び続けることが求められる。

(2)カウンセリング技術・コミュニケーション能力(接客力)

高価格帯に近づくにつれ、来店客に「特別なお客様」であることを感じさせることが求められる。そのため、カウンセリング技術が重要であり、トップセールスを誇る販売員は、接客時の状況などを細かくメモを取り、次回の接客に情報を生かすといった工夫を自然と行っている。接客を通じて来店客に販売員のファンとなってもらうことでリピーターを生み、長きにわたって来店客と関係を築くことが求められる。そのための能力がコミュニケーション能力と言える。

開業資金と損益モデル

開業費用は、予定する店舗規模によっても異なるが、ここではメーカー系列の販売会社経由の品を取り扱う化粧品専門店を想定する。

(1)開業資金

【33平米の店舗で開業する例】

必要資金例の表

※平米単価15万円の内装工事費として計算

※店舗賃貸の保証金(賃料の10か月分)は上記には計上していない

(2)損益モデル

a.売上計画

店舗面積10坪の化粧品販売店の売上

 売上計画例の表

※客単価は総務省統計局の家計調査の年間支出額47,740円を月当りに換算し8掛けし百円未満を四捨五入

b.損益イメージ

標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

※標準財務比率は、医薬品・化粧品小売業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

化粧品は高単価で購入間隔が長いため、在庫量を少なくする工夫が必要である。具体的には、接客を通じて購買サイクルを把握し、購買サイクルを生かした在庫管理が求められる。小型店の小回りの良さを生かす意味から、ターゲットの絞り込みも必要になる。出店地域の女性の嗜好に合わせた品ぞろえが大切である。また、顧客と良い関係を築く手段の一つとして、サンクスレターや定期的なコスメキャンペーンの実施や口コミを利用した紹介キャンペーンなども固定客数の増加を図るうえで効果的である。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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