業種別開業ガイド

化粧品販売(製造/コスメ)

2021年 8月 13日

トレンド

(1)化粧品の市場規模

(株)矢野経済研究所が2020年2月に発表した国内化粧品市場調査によると、2018年度の国内化粧品市場は2兆6,490億円で前年度比4.1%増となった。

また、家計調査(二人以上の世帯、2019年)によれば、世帯当たりの年間支出額は50,834円と、2015年以降増加傾向となっている(石鹸類・化粧品)。

(2)異業種からの参入が相次ぐ化粧品業界

化粧品業界は成熟市場のため大きな成長は見込めないが、通販市場の拡大や、化粧品の安全対策が製造販売事業者に一本化されたことなどを背景に、大手企業の新規参入が相次いでいる。美容経済新聞によると、1990年代から2018年3月までの約28年間に異業種から化粧品分に新規参入した企業数は約110社となっている。

(3)品質管理

化粧品OEM会社に依頼すれば、専門知識や技術、製造設備を持つことなくオリジナルコスメを作ることができる。簡単にオリジナルの化粧品が完成するメリットもある一方で、完全に依存すると品質の維持確認が困難になるため、品質管理やチェック体制を整えておく必要がある。

(4)品質管理販売チャネルの多様化

化粧品の販売チャネルは、対面販売(専門店や百貨店など)とセルフ販売(ドラッグストア、ホームセンター、コンビニエンスストアなど)に大別される。国内大手メーカーの商品や海外の高級ブランドでは対面販売が多く、リーズナブルな商品はセルフ販売店舗での取扱いが主となっている。

特にドラッグストアチェーンの普及やコンビニエンスストアでの取扱いにより、販売チャネルは多様化している。

また、エステティックサロンや美容院で化粧品を販売する例や健康食品販売業が化粧品も販売する例もあり、他の業種もビジネス上の競合となる可能性がある。

ビジネスの特徴

化粧品を作る場合、最小ロットでも一般的には1,000個単位の商品を作ることになるため、初期費用がかかる。また、化粧水・乳液・クリームなど数種類の商品展開をする場合にはさらに初期費用は大きくなる。商品が売れるまではお金が入ってこないため、費用を回収するまでに時間がかかることや、売れなかった場合は在庫をそのまま抱えるリスクがある。

開業タイプ

通常、OEMとは生産と製造の工程のみとなるが、中には、商品の企画、研究・開発、パッケージや容器のデザイン設計までサポートしてくれるOEM会社もある。また、サンプル検討が何回でも無料であるほか、小ロット対応、アフターフォローがあるなど、独自のサポートを行っている会社も多く存在する。そのため、まずは自身のニーズに合ったOEM会社を選択する必要がある。

※週刊粧業 2020年4月13日号より作成

開業ステップ

(1)開業のステップ

企画段階から相談に乗ってくれるOEM会社もあるので、連携を取る場合には早めに相談しておくことが望ましい。ただし、スムーズに製品化をするためには、あらかじめブランドコンセプトを考えておく必要がある。

【化粧品OEM~販売までの流れ】

開業のステップ

(2)必要な手続き

販売するために化粧品を製造する場合や、販売するために化粧品を輸入する場合は「化粧品製造業」の許可が必要となる。また、完成した製品をオリジナルブランドとして市場に流通させる場合には、「化粧品製造販売業」の許可が必要となる。

ただし、すでに2つの許可を取得している化粧品OEM会社に、製造・販売を依頼すれば、製造販売元としての役割はOEM会社が担うことになるため、自身での手続きは不要となる。

必要なスキル

(1)薬機法の知識

前述のとおり、必要な許可や薬事申請はOEM会社が担うため不要だが、関係する薬機法の知識は得ておく事が望ましい。

(2)コミュニケーション能力

OEM会社での打ち合わせなど、人と接する機会も多く、また長期にわたり関係を築くことも想定されるため、的確に意思疎通ができるコミュニケーション能力も必要である。

開業資金と損益モデル

ここでは、OEM製造で販路を通販のみとし、無店舗での開業を想定してモデルを示す。

(1)開業資金

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

年間営業日数、顧客単価等を以下のように想定し、売上計画を算出した。

 売上計画例の表

b.損益イメージ

標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

※標準財務比率は、医薬品・化粧品小売業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

化粧品のOEM製造で重要なのは、製造ロット(数量)をどの程度にするかということになろう。小ロットの場合、1個当たりのコストが割高になるため、高価格帯の商品を作る必要がある。したがって、商品の品質も高いものを要求されるため、付加価値の高い商品開発が求められる。

一方で、大ロット(数量)の場合は、低価格帯の商品を大量に販売することが可能になるが、在庫リスクも大きくなる。そのため、在庫リスクを抱えないよう、確実に販売できる販路などを確保することが望ましい。

いずれにしても、小ロット高価格帯の利益率の高いビズネスモデルとするか、あるいは、低価格帝の商品を大量に販売する高回転型のビジネスモデルとするかなど、商品のコンセプトを明確に決めたうえで、販売戦略を立てることが望ましい。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討する際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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