業種別開業ガイド

脱毛サロン

2019年 10月 11日

トレンド

(1)市場規模

「2019年版 エステティックサロンマーケティング総鑑」(出典:(株)矢野経済研究所)によると、2018年度のエステティックサロン市場規模は3,587億円の見込みである。また、クリニック及びエステサロンの経営サポートを手掛けるライズネット(株)によると、エステティックサロン市場のうち女性脱毛市場が1,500~2,600億円、男性脱毛が150億円程度の規模であるという。

女性脱毛の市場規模の見込みに大きなブレがみられるものの、脱毛関連市場は、エステティックサロン市場で大きな割合を占めている。

(2)新たな客層の開拓への取組

「ムダ毛・脱毛に関する意識調査」(出典:(株)リクルートライフスタイル「ホットペッパービューティーアカデミー」)によると、脱毛サロン・脱毛クリニックの利用経験がある女性は36.1%にとどまっている。

このような調査結果から、脱毛サロン・クリニックの主要顧客は女性であるものの、その開拓は十分とはいえない状況にあり、新規開拓や利用促進を図る動きがみられる。

(3)男性需要の増加

最近では、男性の需要も増えている。この背景としては、就職活動やビジネスシーンにおいて、対外的な印象を良くしようとする意識変化がある。

(4)脱毛機器の低価格化・高機能化

脱毛機器は高額な機器であったが、サロン数の増加などの追い風もあって低価格化が進み、現在では20~30万円の製品も登場し、かつ高機能化も進んでいる。こうした要因もあって、現在では、低価格かつ高品質でサービスを提供するサロンが登場しており、好調な業績を示している。

ビジネスの特徴

脱毛サービスを提供する施設には、クリニック系とサロン系がある。クリニックは医師の関与の下での施術となる。一方、医療外のサロンでは、業界団体の(一社)日本スキン・エステティック協会が施術者の資格認定や育成、サロンの認定を行い、消費者の信頼に応える取組を実施している。

なお、クリニック系脱毛サロンは、毛根部にレーザー光を当てて組織を破壊するレーザー脱毛が採用されている。一方の脱毛サロンでは、高周波の加熱作用により、発毛組織を凝固させて処理する高周波の出力が高い方法と低い方法の2タイプのフラッシュ法が採用されている(一般社団法人日本スキン・エステティック協会)。

開業タイプ

開業タイプは、次のようなタイプに分けられる。

  1. 医師が関与するクリニック
  2. 医師が関与しない民間のサロン
    1. エステティックサロンからの特化型
      大手系列とその他既存サロンからの専門化、つまり、サービスを特化しての出・開店である。
    2. 経験者による独立開業型
      エステティックサロンでの従事経験者などが独立して開業する。

開業ステップ

(1)開業のステップ

ここでは、一般人でも開業できるモデルを示すことを前提として、医師が関与しない民間のサロンについて紹介する。

(2)必要な手続き

法に基づく業種ではないため、特別な許認可は必要ない。ただし、利用者の信頼確保のため、資格の取得やサロンの認定を受けることが推奨される。

また、クレジットカードやキャッシュレス対応も必要であり、クレジットカード会社との契約は事前に済ませておく必要がある。

メニュー、カリキュラム、商品の品揃えなど

脱毛サービスの他に、健康、痩身や身体美の向上などを切り口とした付加的なサービスの提供、あるいは他のエステティックサロン等への紹介システムの導入も有効である。

必要なスキル

高度な技術と知識(肌に関する知識、施術手技と機器操作技術)の習得が求められる。また、CPE(認定電気脱毛士:Certified Professional Electrologist)の認定など利用者に対して安心をアピールできる資格が求められる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

施術用のベッドや椅子、脱毛機器に加え、備品や消耗品などが必要となる。モデルでは、賃借料月額15万円と想定し、保証金は家賃の6か月分、仲介手数料10万円として推計している。小規模での開業を想定し、以下の開業モデルを示す。

【10坪程度の店舗を賃貸で開業する場合に必要な資金例】

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

年間営業日数、客数及び平均客単価を以下の通りとして、売上高を算出した。

売上計画例の表

b.損益イメージ(参考イメージ)

標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

※標準財務比率はエステティック業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

エステティック業に近い業態であり、エステティック業の売上総利益率は72.5%と高いことから、安定した収益を確保しやすい業種であるといえる。ただし、労働集約型の業種であることから、人件費や家賃などの固定費を賄えるだけの収益を確保するために、一定数の利用者を確保する必要がある。

また、脱毛機器は低価格化が進み、低価格でのサービス提供も可能となっている。しかし、一定の顧客を確保するためには、ある程度の台数を揃える必要もあり、初期投資負担がやや大きい。したがって、低価格でのサービス提供による集客ばかりに気を取られず、初期投資の回収期間が、適正範囲(5~10年以内)となる価格設定も大事である。

利用者の維持や増加のためには、サービスの充実だけに留まらず、販売促進の工夫を常に心がけておくことが必要である。顧客満足度の向上によるSNSや口コミでの評価による利用客増を図る努力が成功のポイントである。

経営の安定には、施術技術の質の維持・向上は不可欠であり、さらに接客態度やコミュニケーション能力の向上なども求められる。そのため、事業所の内外での研修などを定期的に実施することも有効な取組みである。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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