業種別開業ガイド

家事支援サービス

トレンド

(1)単身35歳以上女性の利用が急増

単身世帯では、従来から高齢男性の利用が最も多く、次いで高齢女性などの利用が多かったが、近年は女性の社会進出もあり、35~59歳女性の利用額の伸びが顕著である。自宅に業者が入る家事支援(代行)サービスの場合、単身の女性利用者の不安を払拭するため、契約時に個人情報保護や秘密保持の誓約書を交わすなど信頼性向上に向けた取り組みを行っている。

(2)利用者の増加によるサービスの多様化

女性の社会進出や単身世帯、共働き世帯、高齢者のみ世帯の増加を背景に、家事支援サービスのニーズは拡大していると考えられる。また、利用者の増加によるサービスの多様化も進んでいる。従来は、家事代行の範囲は、洗濯や掃除、買い物、食事の支度(調理)、といった業務が中心であったが、近年では、子どもの送り迎えやペットの世話や散歩、そして特殊清掃まで、サービス内容が多岐にわたってきている。

家事支援サービス業の特徴

  • 家事支援サービスと呼ばれるビジネスは、「家事代行業」とほぼ同義で、「事業者のスタッフが利用者宅を訪問し、主に利用者宅において、家事に関する業務(掃除、洗濯、炊事等)の全部又は一部を利用者に代わって行うサービス」と経済産業省の「家事支援サービス推進協議会」は定義している。
  • このサービスは開業に際して届出や許認可などを必要とせず、また、小資本でも参入が可能である。そのことから新規参入が多く、そのため、技術や経営管理が未熟なまま開業する事業者も多く、トラブルも多いようである。経済産業省は「家事支援サービス推進協議会」を設置し、業界の健全化のための環境整備を図っている。
  • 差別化の視点としては、顧客の属性に応じて特化したサービスを提供することが考えられる。たとえば、女性や高齢者世帯に特化して体力を要する仕事を中心に請け負う形、また外国人世帯に特化して各国の文化や生活習慣、言語に対応したサービスを提供する形などである。
    一方、業務範囲を拡大することで差別化を図っている業者もある。たとえば、庭木の手入れ、日曜大工、ペットの世話や飼い猫(犬)探し、または、汚れの酷い箇所の本格的な清掃など、便利屋やハウスクリーニング業者等の業務領域に参入しているところも多い。

家事支援サービス業 開業タイプ

家事支援サービスの開業タイプは、ターゲットやオプションの特色により大きく2つのタイプに分けることができる。また、相互のタイプを各種組み合わせることもできる。

(1)ターゲット特化型

一般家庭はもちろん、女性や高齢者世帯、外国人世帯などにターゲットを絞って差別化を行い、それぞれのニーズに合わせたサービスを提供するタイプである。たとえば、女性や高齢者の世帯に対しては体力のあるスタッフを派遣して力仕事にも対応できるようにし、外国人世帯に対しては各外国語に対応できる人材を派遣する。ターゲット顧客に合わせて対応できる人材を募集することが必要である。

(2)オプション拡大型

通常の家事代行サービスの内容に加え、便利屋やハウスクリーニング業者等の業務領域にも参入することで他社との差別化を図るタイプである。この場合、料金はオプション付きで高額になるが、全てのサービスを自社で賄う必要はなく、場合によっては他社に業務委託することを考えてもよい。

開業ステップと手続き

開業に向けてのステップは、主として以下の6段階に分かれる。

(2)必要な手続き

家事支援サービス業を開業するに際して、特に必要な許認可などはない。

サービスメニュー作り

家事支援サービスは、日常掃除から、料理、洗濯など、家事全般を代行して行う。一般的なサービス内容は以下の通りである。以下の中から、利用者の要望に応じたサービスを選択的に行う。

<サービス内容>
日常清掃(掃除機がけ、雑巾がけ、食器洗い、窓拭き、片付け)、水回り清掃(キッチン、バス、トイレ、洗面所)、洗濯(アイロンかけ)、料理、買い物、ベッドメイキング、布団干し、靴磨き、郵便物・荷物・クリーニングの出し受け、庭の手入れ(除草、植物への水やり、掃き掃除等)、ペットの世話(散歩、餌やり、掃除等)、部屋の模様替え(家具の移動、荷物の搬入出等)、高所の電球交換、不在中の部屋の換気 等

上記の他、以下のような付加的サービスを行うところもある。

<オプション>
日曜大工(棚等の製作等)、車洗浄、裁縫・衣服のお直し、庭木の剪定、ペット探し 等

金額設定については、月額料金を設定しているところが多い。また、代行する作業の内容や量に応じて細かく料金設定しているところも多い。短時間でも気軽に利用してもらえるよう、1時間単位から料金を設定しているところもある。

オプションサービスを豊富に用意することは、利用者の多様なニーズに応えつつ、客単価の向上を図ることにもつながる。同業他社のサービス内容や価格設定を参考にして、自社サービスの内容を組み立てたい。

必要なスキル

  • 「前回に依頼した際とサービス内容が違う」ということにならないよう、業務の標準化とマニュアル化を図り、どのスタッフが対応しても一定品質のサービスを提供できるようにしなければならない。そのためにも、作業終了後には利用者アンケートを実施し、利用者満足度向上とクレーム防止、スタッフのスキル向上につなげたい。
  • 一般家庭を訪問して行うサービスであるため、スタッフの技術やサービスの質、不快感を与えない身なりや接客マナーも大変重視される。そのため、スタッフを定期的にマナー研修に参加させる、社内で勉強会を行う等して、常にスキルアップを図っていくことが重要である。
  • オプションとして新規サービスを導入する際は、新たな技能(スキル)が必要になる。その場合は、経験者を採用したり、既存スタッフに新たに研修を受けさせる等して、自社で対応できる体制作りが必要である。ハウスクリーニングの業務内容であれば、以下のように、各協会が研修を行っているので参加し資格を取得することをお勧めする。

<ハウスクリーニング技能士>
公益社団法人全国ハウスクリーニング協会が、職業能力開発促進法に基づき、技能試験合格者に付与する国家資格である。

<ハウスクリーニング士>
NPO法人日本ハウスクリーニング協会が同協会の研修修了者に付与する資格である。

ただし、新規サービスの売上見込みが大きく見込めない場合は、コストを勘案し、外注の請負業者を探してもよいだろう。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

開業資金はタイプによって異なるが、自宅を事業所にして、小資本で始めることもできる。

【参考】:自宅を利用して家事支援サービスを開業する場合の必要資金例

(2)損益モデル

■売上計画
自社の経営資源と営業区域の需要を考慮して、無理のない計画を立てることが重要である。

■損益イメージ
(参考例)自宅を利用した家事支援サービス

  • 個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。
  • 開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

関連記事