業種別開業ガイド

立体駐車場

2024年 4月 12日

立体駐車場のイメージ01

トレンド

立体駐車場には、主に「月極駐車場」と「コインパーキング(時間貸し駐車場)」の2つの運営方法がある。近年、特にコインパーキングでは以下のような新しいシステムが取り入れられるようになってきた。

(1) キャッシュレス・パーキング
これまでのコインパーキングでは精算機が必要不可欠だったが、完全キャッシュレスで駐車場の精算が可能になった。

運営側は、精算用のQRコードを発行し駐車場に掲示する。利用者は、QRコードをスマートフォンで読み込み、簡単な操作で電子決済によって精算ができる。

精算機、フラップ板、アスファルト舗装が不要となり、初期費用を抑えられる。

(2) 車両ナンバー認識システム
AIを活用して、カメラで撮影した画像から車のナンバープレートを読み取り、駐車場への入退場を管理するシステムである。

入場時に車両ナンバーが撮影されているため、利用者は車両ナンバーを入力すれば精算ができる。駐車券がいらなくなり、ゲートがなくスムーズに出庫できるなど、管理者と利用者双方にとってメリットが多い。

(3) ETC決済駐車場
高速道路料金の支払いに使われるETCを、駐車場の決済に利用するシステムである。ETCは多くの車両に搭載されているため、簡単に自動支払いができる。

また、ETC認証機能を活用した仕組み作りが可能で、例えば、障害者用駐車スペースに障害者車両だけを判別して駐車を許可するといった仕組みの普及が期待されている。

(4) シェアリングサービス
近年、カーシェアリングの利用者数は増加傾向にある。民間の調査によると、2022年のカーシェアリング車両ステーション数は約20,000カ所(前年比5.3%増)、車両台数は約52,000台(同19.1%増)、会員数は約264万人(同17.4%増)である。

わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移

コインパーキングの一画を、カーシェアリング用の駐車スペースとして貸し出すケースも増えている。

また、土地所有者が貸し出したいときにだけ駐車場として提供できるシステム「駐車場シェアリングサービス」も徐々に普及してきている。貸す側は空きスペースを無駄なく活用でき、借りる側は比較的安く便利な立地の駐車場を探せるため、双方にとってメリットがあるシステムである。

近年の立体駐車場事情

国土交通省の「自動車駐車場年報 令和4年度版(2022年)」によると、自動車保有台数は、増加から現状維持を推移している。平成20年(2008年)頃は、自動車保有台数は減少傾向にあったが、その後増加に転じている。

自動車保有台数と駐車場供用台数の推移

2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、公共交通機関からマイカーに移動手段がシフトした。しかし、コロナ禍の外出自粛や商業施設休業の影響を受け、駐車場の需要は冷え込み、新規開設も抑制される傾向があった。

コロナ禍が明け、人々の移動が活発化するにつれて、今度は駐車場の需要が高まり、地域によっては不足している状態となっている。

一方で、自動車利用動向に大きな影響を与えているのがガソリン代である。円高や国際情勢の影響を受けて、ガソリン代が高騰している。

資源エネルギー庁の「給油所小売価格調査(ガソリン、軽油、灯油)」によると、ガソリンスタンドでのレギュラーガソリン1リットル当たりの価格は、以下の通りである。

ガソリンスタンドでのレギュラーガソリン1リットル当たりの価格

ただし、EV(電気自動車)の普及により、ガソリンの高騰に影響を受けない車も増えている。

下図の通り、日本のEV普及率は上昇を続けており、2023年の上半期は普通乗用車EVと軽自動車EVの合計販売数は48,664台で、全販売台数の2.38%を占めている。

EV・PHEV(プラグインハイブリッドカー)月別販売台数・販売シェア(乗用車)の推移

EVに乗ることは、SDGs(持続可能な開発目標)につながる取り組みになる。EVを購入すれば国や自治体から補助金が出ることもあり、EV普及率はますます高まるだろう。

このような動向を受け、駐車場にもEV用の充電器を設置するところが増えてきた。充電設備も国からの補助があり、低コストで設置できるケースが多い。

今後は、利用者が駐車場を選ぶ際に「EV用充電器が設置されているか」が条件となることが見込まれ、業績にも影響しそうだ。

立体駐車場の仕事

立体駐車場の仕事は、「誘導」「保守・点検」「場内管理」「運営管理」などに分類できる。具体的な仕事は以下の通り。

  • 誘導:車両の誘導・整理など
  • 保守・点検:機械・設備の管理など
  • 場内管理:巡回、清掃など
  • 運営管理:会計、事務、利用者トラブル対応など
立体駐車場のイメージ02

立体駐車場の人気理由と課題

人気理由

  1. 土地を有効活用できて利回りが良い
  2. 賃貸住宅経営と比べると、初期投資が抑えられる
  3. 建設には所得税・法人税・固定資産税などの減税措置が適用される
  4. 事業用小規模宅地として評価減の特例が適用され、相続税節税効果も得られる

課題

  1. 初期投資が大きく、回収までに時間がかかる
  2. 撤退する際には解体費用がかかる

開業のステップ

立体駐車場の開業ステップは、以下の通り。

開業のステップ

立体駐車場に役立つ資格

立体駐車場の開業に必須の資格はない。できれば「防犯設備士」(*)などのように、防犯やセキュリティ関係の資格を取得しておくとよいだろう。

(*)防犯設備士についてはこちらを参照してください。

開業資金と運転資金の例

立体駐車場開業にあたっては、次のような費用が必要である。

  • 土地取得費:土地代、手付金、登記費用、印紙代、仲介手数料、ローン手数料・保証料、測量費など(土地所有の場合は不要)
  • 施設建設費:自走式(駐車スペースまで利用者が運転する)、機械式(機械で車を移動させる)で異なる
  • 什器備品費:精算機、ロック板、パソコン、事務用品など
  • 広告宣伝費:ホームページ制作費、広告チラシ制作費、印刷費、ポータルサイト登録料など
  • 求人費:求人媒体の利用費など

施設建設費については、自走式と機械式で以下のように異なる。

立体駐車場の施設建設費(1台当たり)

開業資金と運転資金の例として、表にまとめた(参考)。

開業資金例
運転資金例

なお、初期投資額を1億円として、5年間で回収するとすると、毎月200万円ずつ減価償却していくことになることを踏まえている。

立体駐車場開業のための資金調達には、日本政策金融公庫の新規開業資金(限度額7,200万円)などが利用できる。銀行よりも有利な条件で借り入れができるため、まずは相談してみることをおすすめする。

また、各地方自治体が独自の融資制度を用意しているケースもあるため、都道府県庁や市区町村役場に確認してみると良い。

売上計画と損益イメージ

立体駐車場を開業した場合の1年間の売上のシミュレーションは、以下の通りである。コインパーキング(稼働率40%)とした場合の事例とする。

  • 駐車料金:300円/時間
  • 日商:24時間×50台×300円×0.4=14万4,000円
  • 年商:14万4,000円×365日=5,256万円

次に、損益イメージを算出してみよう。

年間支出:約4,920万円(水道光熱費・諸経費:150万円、人件費:60万円、施設減価償却費:200万円の合計約410万円×12カ月)
初年度売上高:5,256万円
売上総利益:336万円

稼働率40%が確保できた場合に見込める売上であるため、オープン当初から達成できるとは限らないことに注意が必要である。

また、減価償却が終了した6年目からは、減価償却費は不要となるため、大きな利益が見込めるだろう。

立体駐車場のイメージ03

※開業資金、売上計画、損益イメージなどの数値は、開業状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)