業種別開業ガイド

ファミリー向け写真館

トレンド

(1)フォトイメージングの市場規模

写真館そのものの市場規模に関するデータはないが、日本フォトイメージング協会の調べによると、2018年度のフォトイメージング市場は約1,854億円、前年度比44億円減の98%と推計されている。フォトブック(同年度140億円)の増加に加え、証明写真やフイルムDPが堅調に推移したことから、減少幅は小さくなった。

(2)子供向け写真の伸長

矢野経済研究所によると、子供向け写真の市場規模は、2012年調査で、2013年予測が700億円で、今後も伸長が見込まれるという。

少子化というマイナス要因にもかかわらず、市場が伸長傾向にある理由としては、シックスポケットという少子化時代を反映した言葉が示すように、子供の成長を記録することに対する価値観の高まりがある。

(3)新しい撮影シーンの登場

写真館の利用シーンは、七五三や節句、入学卒業、成人式、結婚記念日、還暦などの長寿の祝いが一般的だったが、近年ではマタニティフォトや十歳の祝い(1/2成人式やハーフ成人式とも言われる)、十三祝い、ペット撮影など、新たな撮影シーンが増えている。これには、大手チェーンをはじめとして、需要を喚起しようとしていることがうかがえる。

(4)形態の多様化

一昔前までは、街の写真館、現在ではショッピングセンターなどでよく見かけるスタジオ型の写真館に加え、一軒家を貸切りにして撮影を行うスタイルの写真館や、屋外の公園などで撮影をする出張撮影といった形態も増えている。また、撮影だけでなく、写真館でなければ購入できない商品の販売や、スタジオ内での貸衣装、七五三や卒業式、成人式など記念日の衣装レンタルといったサービスも展開されている。

ビジネスの特徴

ある程度の設備投資が必要だが、写真館は、撮影料の比重が大きく利益率が高いとされている。また、需要の季節性がはっきりしているため、集客のためのキャンペーンを打ち出しやすい。一方で、ニーズは多様化しており、記念撮影となるため撮影技術やコミュニケーション能力、写真の仕上がり具合にもクオリティが求められる。

現代の写真館としての役割は、写真を撮ることにとどまらず、衣装を着て様々なポーズで撮影をするという非日常的な体験を通じた「思い出」作りの場としても重要な要素を含んでいる。

開業タイプ

(1)一軒家貸切型

撮影は基本的には一組ずつとなり、貸切の空間で撮影を行う。一軒家を改装しインテリアがセットされているので、撮影シーンごとに場所を移動する。カメラマンは手持ちカメラで動きながら撮影するため、様々な角度や構図で撮影ができる。

(2)商業施設内マス型

有名ブランドなどの衣装が豊富で、衣装レンタルも行う。また、子供が好きなキャラクターとコラボ撮影も行っている。固定カメラを使用している写真館が多く、立ち位置や背景などの撮り方が概ね決まっている。複数のスタジオで同時に何組も撮影を行う。

(3)出張型

場所や時間など顧客の望む都合に合わせてカメラマンが出張し撮影を行う。または写真館が企画して屋外で撮影を行う。撮影シーンは、お宮参りや七五三といった記念日に加え、旅行先やペットとの撮影など様々である。

(4)フランチャイズ

主として一軒家型の写真館となる。集客面や技術面でのサポートがある。

開業ステップ

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下のとおり。

開業のステップ

(2)必要な手続き

ファミリー写真館を開業にするあたり許可等の申請は必要ない。

個人であれば一般的な開業手続きとして都道府県や税務署への開業届出を行う。法人であれば必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連はハローワーク、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きを行う。併せて、消防署への防火管理者の届出も行う。

宣伝と集客

宣伝活動は、ホームページやSNSの活用、広告掲載、生活圏内としている地域へのチラシの配布などが挙げられる。

集客方法としては、ホームページ経由の他に、外部サイトの予約システムを活用したWEB集客がある。外部サイトは費用がかかるが、すでにユーザーがいるため多くの利用者へアプローチができる。また、アクセス解析ツールを活用することで、閲覧している客層など情報収集も行える。

必要なスキル

経営者や主要スタッフは、資格の所有は義務付けられていないが、撮影テクニックとカメラ機器の知識を習得し、経験を積むことが必要である。さらに撮影を行うカメラマンやアシスタントには、乳幼児を含め被写体の自然な笑顔を引き出すなどの対応力も求められる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

カメラなど撮影機材は高額に及ぶ可能性もあることから、什器・備品類の金額を下記のとおりとした。

【25坪程度の店舗を開業する際の資金例】

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

年間営業日数、1日あたりの客数、平均客単価を以下の通りとして、売上高を算出した。
なお、平均客単価については、単なる撮影料ではなくセットメニューやアルバム、フォトフレームなどの物販販売も考慮している。

売上計画例の表

b.損益イメージ(参考イメージ)

標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

c.収益化の視点

カメラや照明器具、撮影用のセットなど設備面への資金負担があり初期投資はやや大きくなるが、デジタル化の進展もあってネガフィルムや薬品類などの仕入れ負担は軽く、原価率はさほど高くはない。

ただし、設備への投資負担が効率化につながるような業態ではないため、原価率が低くとも、いたずらに人件費などの固定費を高くするべきではない。まずは利幅の大きいセットメニューなどの受注につとめ初期投資の早期回収を図るのが望ましい。

このような取組により手持ち資金を蓄え、カメラや照明器具などの老朽化に関わる設備更新需要への備えを図ることが重要である。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)