売上を伸ばす商品陳列のコツ

本レポートは、小売店経営者の方を対象として、主にゴンドラ(棚)を用いた商品陳列についてポイントを紹介している。

1.商品陳列の意義

買い物客の足を引きとめ、商品に興味・関心を持たせ、最終的な購買意思を決定づけるのは、陳列の方法によるところが大きく、商品の並べ方ひとつが同じ商品の売上を変えてしまうことさえある。

たとえばスーパーマーケットでは、買い物客のほとんどが来店後に購入商品を決めるといわれている。したがって、はじめは買うつもりがなくても、商品を買い物客の目にとまりやすい場所に陳列し、つい欲しくなるような演出を施しておけば、購入する可能性が高まると考えられる。そのため、最近では大手チェーン店をはじめとして棚割り(*)や陳列手法に対する関心が高まっており、小売店のそうした取り組みを積極的に支援するメーカーや卸売業者も増えつつある。

(*)棚割り:
棚割りとは、多種多様な商品を、買い物客が「見やすく、取りやすく、選びやすい」ように、用途・機能、デザイン、価格帯などのテーマ設定によって分類・整理し、関連する商品を効果的に組み合わせて、陳列位置を決めること。

以下に、主にゴンドラ(棚)を用いた陳列について、「何を陳列するか」「どこに陳列するか」「いくつ陳列するか」「どんな形で陳列するか」という4つのポイントについて解説していく。

2.何を陳列するか

買い物客は、用途・機能、素材、色、柄、デザイン、サイズ、価格帯、ブランドなど、様々な観点で比較検討して商品を選択する。これらのうち何にこだわるかは、商品により、あるいは選ぶ客により異なるが、「買い物客がどのような要素を優先させて商品を選ぶのかを考えて商品を分類する」ことが重要となる。こうして分類・整理した商品をグループ毎にまとめて陳列することが、買い物客にとって比較しやすく、選びやすい陳列といえる。

また、関連商品を組み合わせて一緒に陳列することも大切。関連商品とは、「かみそりとシェービングクリーム・アフターシェーブローション」「パスタとパスタソース・タバスコ・粉チーズ」など。衣料品店の多くは洋服だけでなく靴やバッグ、アクセサリーなどをコーディネートしてディスプレイしているが、これらも関連商品といえる。

具体的に買い物客がその商品を使用する場面を考えることで、さまざまな関連商品が思い浮かぶ。なかには、思いがけない商品を組み合わせ、意外な使い方を買い物客に提案している店も。だから、買い物客が一緒に購入することが多く、関連商品を一緒に陳列することで買い物客の購買意欲が刺激され、その商品の売上増加や購買点数の増加が期待できる場合などは、商品を組み合わせ、わかりやすく関連づけて陳列することを心掛けること。

3.どこに陳列するか

一般的なゴンドラの場合、買い物客の胸から肩の高さが、最も商品が目につきやすく、手に取りやすい位置。これがゴールデンゾーンと呼ばれる、最も販売力の高いスペースである。したがって、売れ行きのよい商品や粗利益率の高い商品はゴールデンゾーンに陳列すること。一方、1.8メートル以上の高い場所や、 0.3メートル以下の低い場所は、商品を眺めることはできても、手に取ることが難しい。したがって、サンプル商品の展示スペースとしたり、在庫のストックスペースとすること。

さらに、サイズの大きな商品や重量のある商品は下に、サイズの小さい商品は上に陳列した方が、取りやすいうえ、見た目にも安定感がある。

ちなみに女性の場合、一般にゴールデンゾーンは0.6~1.5メートルの範囲といわれる。当然、男性の場合は高くなり、子供の場合は低くなる。自店の客層を考慮してターゲットに応じた商品陳列を考える必要がある。

【陳列位置と陳列すべき商品】

陳列位置と陳列すべき商品

横陳列はボリュームを訴求でき、買い物客を店奥へ誘導できるといったメリットがあるが、同一グループの商品の場合は、ゴンドラに縦長(上下)に陳列した方がよいとされている。横陳列だと、商品を比較するために左右を見渡して移動しなくてはならない。だから、ゴールデンゾーンを外れた商品は売れ行きが鈍るというデメリットがある。買い物客が一度に見渡せる範囲は幅1.8メートルが限度であり、それ以上横に広げても買い物客の視線は届かない。

一方、縦陳列は、買い物客が移動せずにグループ内の商品を比較できるうえ、各グループにゴールデンゾーンが割り当てられるというメリットがある。ただし、各グループの幅が狭すぎると品揃えが貧弱に感じられるので、最低0.9メートルの幅は確保しておくこと。

縦陳列と横陳列の説明

4. いくつ陳列するか

商品をいくつ陳列するかは、売上数量を基準に考える。主力商品や売れ筋商品などは欠品による機会ロスを防ぐためフェイス数(買い物客から見える商品の列数)を増やし、あまり売れない商品はフェイス数を少なくするのが基本。ただし、むやみにフェイス数を増やすと、廃棄ロスが増えたり、在庫負担が重くなるので、適切な陳列量(売場在庫量)を計算しておくこと。

【フェイス数の数え方】

フェイス数の数え方

なお、アイテムごとに適度なボリューム感を与え、全体の品揃え(品数)も豊富に感じられるようにするためには、正面からみた場合のフェイス幅に統一感を持たせながら、各フェイス幅を広げすぎないように心掛けることが大切である。そのために、商品のどの面をフェイス(買い物客から見える面)とするかが問題となる。それにより、陳列量や陳列面積が変わってくる。

たとえば、書籍を背表紙が見えるように棚に並べる場合と表紙が見えるように平台に積む場合とでは陳列量も面積も異なる。また、缶詰の場合は、ゴンドラに並べるならラベルが貼ってある面を前にして積んでいくが、バスケットに入れるならラベルが貼ってある面を上に向けて寝かせて並べる。そこで、通常フェイスは、ラベルが貼ってある面や中身が見える面、もっとも魅力的に見える面、陳列しやすい面などを選ぶが、陳列量や陳列面積、使用什器、陳列方法などについても考慮したうえで陳列の仕方を決めることが大切となる。

5.どんな形で陳列するか

陳列方法を大別すると「量感陳列」と「展示陳列」がある。この2つを、業種や業態、あるいは商品によって適切に使い分けること。

また、関連商品を組み合わせて一緒に陳列することも大切。関連商品とは、「かみそりとシェービングクリーム・アフターシェーブローション」「パスタとパスタソース・タバスコ・粉チーズ」など。衣料品店の多くは洋服だけでなく靴やバッグ、アクセサリーなどをコーディネートしてディスプレイしているが、これらも関連商品といえる。

具体的に買い物客がその商品を使用する場面を考えることで、さまざまな関連商品が思い浮かぶ。なかには、思いがけない商品を組み合わせ、意外な使い方を買い物客に提案している店も。だから、買い物客が一緒に購入することが多く、関連商品を一緒に陳列することで買い物客の購買意欲が刺激され、その商品の売上増加や購買点数の増加が期待できる場合などは、商品を組み合わせ、わかりやすく関連づけて陳列することを心掛けること。

1)量感陳列

(1)量感陳列のポイント

量感陳列とは、平台やワゴン、ゴンドラなどを用いて商品をまとめて陳列することで 活気とボリューム感、安さを演出する陳列方法。

<ゴンドラを用いて陳列する場合のポイント>
  • 商品の高さに合わせて棚板の間隔をきちんと調整する。列ごとの棚の高低アンバランスを少なくした方が、整然として美しく見える。
  • 商品のフェイス(表面)は常に正面に向けて揃え、きちんと並べる。営業時間中も定期的に陳列の修正を行う。
  • 商品が売れると後方に残った商品は隣の商品の間にはさまって見えにくくなるため、こまめに前出し作業を行い、常に最前列にフェイスが揃っているようにする。
<衣料品をハンガーなどで陳列する場合のポイント>
  • ハンガーに掛ける量は、片側に寄せたときに3分の1が空く程度とする。ただし、大衆品は商品を多めに、高級品は少なめにするとよい。
  • ハンガーおよび洋服の向きを揃える。特にフックハンガーは手に取りやすいよう、取り出す向きに揃える。
  • 1本のハンガーには同じイメージの商品を掛ける。また、前方より、丈の短いものからサイズ別・色別に揃えて並べる。サイズ分類の多いものはネックに色別票をつけ、選びやすくする。

(2)具体的な演出方法

a 島陳列

通路に平台や段ボールなどを臨時に設置して、島のように商品を陳列する方法。よく目立ち、季節感や豊富感を強調できるが、通路が狭くなって買い物客の回遊性が悪くなるため、通路の広さを考慮し、目玉商品などに限って行うのがよい。

b 飛び出し陳列

ゴンドラの棚板を少し伸ばすなどして、フェイス面だけ飛び出させる陳列方法。特売商品などに用いる。

c スロット陳列

主に特売用に用い、棚を外して同じ商品をまとめて陳列し、迫力を出す陳列方法。

d ジャンブル陳列

テーブルやバスケット、ショッピングカートに商品を投げ込むように陳列する方法。ただし、安っぽく感じられるため、特売商品向き。

e エンド陳列

列の端に専用台やダンボールで、その列のライン内にある品種と同じものをまとめて陳列する方法。

2)展示陳列

(1)展示陳列のポイント

展示陳列とは、ショーウインドーやステージ、コーナーなどに商品を展示することで、 商品の魅力を強調したり、特定の商品を目立たせる陳列方法。季節や素材、ブランド、カラーなど何らかのテーマを設定したうえで、何をどのように見せるかというストーリーを練り、効果的にディスプレイ(ショーアップ)することを心掛ける。

(2)具体的な演出方法

a 集視陳列

量感陳列をしたゴンドラやショーケースの一部分だけを展示陳列とし、陳列のメリハリをつけて目立たせる方法。

b 壁面上部陳列

手に取りにくい高い場所に展示陳列する方法。スペースが狭いため、陳列商品の選択とディスプレイの手法がポイントとなる。

c 空間陳列

天井から洋服などの商品を吊り下げる陳列方法。