飲食店開業の諸手続き

1. 飲食店開業のためのステップ

飲食店の開業には、構想から実際の開業までさまざまな手順がある。

はじめに、店のコンセプトを確立しなければならない。
つまり、どんなメニューをどういったサービスで提供するかを最初に決定する。
次に出店地や物件の選定を行なう。
家賃や保証金額などを地域相場と比較しながら、店舗規模や給排水・空調の設備などに留意して物件を探す。
開業候補地が決定したら、市場調査をし、人口、性別・年齢、最寄り駅の乗降客数、人口動線などにより、その候補地がどういった特徴のある市場なのかを把握する。

出店地と物件が決定したら、商圏内のニーズを想定したり競合店の調査をしたりするなど客観的な視点から判断し、最初に考えたコンセプトがビジネスとして成り立つかどうかを再度検討する。

ここで最終的な店の業態イメージが決定したら、主力商品(メニュー)はどうするか、目玉商品や利益商品はどうするかなどの具体的な方針を立てる。そして、こうした流れに基づいて事業計画書を作成する。

オープンする店舗のイメージが固まったら、店舗や厨房のデザイン・レイアウトを具体的に検討していく。
このとき、建築関係業者だけでなく厨房機器メーカーなどとも相談しながら話を進め、随時見積もりを取りながら予算計画内に収めるようにする。そして、実際の工事に入ったら工期など状況チェックをつねに行ない、必要に応じて改善していく。

店舗が完成したら、開店前準備としてアルバイトの採用教育活動、チラシなどでの宣伝などを行なう。また、プレオープンの日を設定し、関係者を招くなどして開店リハーサルを実際に行なうと、準備の不足点などを発見するうえで大変有効である。

2. 開業までに行なう届け出

1)飲食店など営業許可申請

飲食店を開業する場合、食品衛生法に基づき保健所の「飲食店営業許可」が必要になる。
一般的な申請・許可までは図2のような書類・手順が必要となるが、これは各都道府県の所轄となっており、細かい部分は保健所によって異なる。詳細については、所轄の保健所に問い合わせる。 また、深夜(午前0時から日の出前※)において酒類の販売を行なう場合は、「深夜酒類提供飲食店営業」として別途、公安委員会への届出も必要になる。詳細は、最寄りの警察署保安係へ問い合わせる。

※日の出前とは、文字通り「日の出前」であり、その時間は地域によって異なる。

【保健所の許可までの流れ】

1. 事前相談

着工前に平面図を保健所へ持参し、設備面でのアドバイスを受け、必要な提出書類をもらう。

2. 書類提出

竣工7~10日前に書類を保健所に持参する。申請書、営業設備の概要、印鑑、手数料、水質検査成績書、食品衛生責任者証明を用意する。(法人の場合、印鑑は登記済代表者印、登記簿謄本も必要)

3. 検査

保健所の担当者が来店して設備をチェックする。基準に満たないときは再検査を受ける。実地検査の日程や立ち会い人については書類の提出時に相談しておく。

4. 許可

上記の検査が合格なら許可書が後日交付される。許可書を受け取る際には印鑑が必要。

※許可が下りるまでの期間は一般的には2週間弱程度だが、地域によって異なるので、所轄の保健所まで問い合わせる。

2)食品衛生責任者の設置

食品衛生法では、各店に1人「食品衛生責任者」を置くことが義務づけられている。
食品衛生責任者は、調理師、栄養士、製菓衛生師のいずれかの資格が必要である。有資格者がいない場合は、所轄の保健所が実施する食品衛生責任者のための講習会を従業員のうち少なくとも1人が受講し、テストに合格しなければならない。このテストに合格すれば、食品衛生責任者の有資格者となる。
詳細については、所轄の保健所に問い合わせる。

3)開業届などの申請

個人で開業する場合は事業開始月から1カ月以内に「開業届」「青色申告承認申請書」「給与支払事務所等の開設届出書」などを所轄の税務署へ提出しなければならない。
一方、法人で開業する場合は、設立後2カ月以内に「法人設立届出書」「青色申告承認申請書」「棚卸資産の評価方法の届出書」「減価償却資産の償却方法の届出書」「給与支払事務所等の開設届出書」などを所轄の税務署へ提出する。
詳細については、所轄の税務署に問い合わせる。

4)社会保険などの申請

「個人経営で常時5人以上の従業員を雇用している事業所」または「法人企業で常時1人以上の従業員を雇用している事業所」は、健康保険、厚生年金保険に加入しなければならない。
詳細は、最寄りの社会保険事務所に問い合わせる。
また「個人、法人ともに常時1人以上の従業員を雇用している事業所」は、雇用保険、労災保険に加入しなければならない。
雇用保険に関する詳細は最寄りの職業安定所に、労災保険に関する詳細は最寄りの労働基準監督署に問い合わせる。