業種別開業ガイド

園芸店

トレンド

(1)ガーデニング人口の減少により国内市場は縮小傾向

日本花き卸売市場協会「2018年花き市場流通調査」によれば、鉢物類の年間市場取扱高は前年比94.7%の862億円であった。

総務省「家計調査年報」における園芸用植物・園芸用品の1世帯当たり年間支出額は、2011年以降7,100~7,600円で推移していたが、2018年は6,804円と7,000円台を割り込んだ。日本生産性本部発行「レジャー白書2018」においても、「園芸・庭いじり」の参加人口は前回調査よりも減少している。

(2)多肉植物・観葉植物ブーム

ここ数年、主に若い女性の間でサボテン等の多肉植物のブームが続いている。手がかからず育てやすいだけでなく、ユニークな形状や色が魅力的との声が高い。また、観葉植物も希少品種や珍しい種類を取り扱う専門店が増えている。

(3)パルダリウム

水槽の中に用土や流木などを入れ、熱帯植物、コケなどを植えて育てる「パルダリウム」が注目されている。LEDライトを使うことで、日当たりのない屋内でも植物を育て、楽しむことができる。庭のないマンションなど集合住宅での新しい園芸の1つとして、今後トレンドとなる可能性もある。

ビジネスの特徴

園芸店で扱う植物は、花や野菜の苗、種や球根、鉢物(鉢植え)、観葉植物、庭木、花木、果樹など多種にわたる。そのほか、培養土、肥料、薬剤、植木鉢やプランター類、ショベル、水やり用品、支柱、ネット等の園芸用品やツール、ウッドデッキ、テーブル、チェア、ベンチ等のガーデン用家具、ブロック、煉瓦、砂利などの庭用資材など、多様な商品が取り扱い対象となっている。それだけに、季節や流行に応じた品揃えなども必要になってくる。

こうした商品をトータルで扱うには、ホームセンターや園芸センターといった大規模店舗並みに広い用地があることが必要条件となる。個人が小規模店舗で開業する場合は、扱う商品を絞り込んで店の特色を出し、インターネットやSNSも活用しながらターゲットとなる顧客層に訴求していく方がよいだろう。

植物は花き市場で卸業者から仕入れるほか、仲卸業者から仕入れる。代表的な仕入れルートは以下のとおり。

代表的な仕入れルート

開業タイプ

(1)専門店

珍しい観葉植物や多肉植物などを専門に取り扱う。雑貨や飲食と組み合わせて植物のあるインテリア空間を提案する。品揃えに特化し、小規模でも個性的な店づくりが可能。

(2)地域密着型

近隣の顧客を対象とし、販売だけでなくアドバイスも行う。グリーンアドバイザーやグリーンコーディネーター等の有資格者が、定期的にテーマを決めて園芸教室や寄せ植え・アレンジメント講座などを開催する。

(3)ネットショップ

実店舗とは別にネットショップを開設し、ホームページやSNSで発信。遠方の顧客を開拓できる可能性がある。

開業ステップ

(1)開業までのステップ

開業に向けてのステップは、主として以下のとおり。

開業までのステップ

(2)必要な手続き

園芸店の場合、開業にあたっては特に許可や資格等は必要なく、個人事業主の一般的な開業手続きとして税務署への開業申請を行う。

商品である植物の仕入は、店舗に最も近い花き市場からが中心となる。市場で卸売業者から直接仕入れる方法と、仲卸業者から仕入れる方法がある。どちらも市場への申請登録が必要となる。安い単価で大量に仕入れたい場合は卸売業者との直接取引、小ロットで仕入れたい場合は、多少単価は高いが仲卸業者を利用する。大量に売れない小規模店舗では、仲卸業者を利用することが多い。

SNSの活用

今や小規模店舗の販促ツールとして、SNSは欠かせないものとなっている。特に観葉植物や多肉植物などをメインに扱う店では、店舗のインテリアや品揃え状況、入荷商品など写真をアップし、検索ワードにハッシュタグ(#)をつけて情報発信をこまめに行うことで、フォロワーを増やし、遠方の顧客を開拓することも可能である。また最近では、植物に特化したSNSアプリがリリースされ、無料で店の宣伝ができる機能もついており、利用する店舗も増加している。

必要なスキル

開業に免許や資格等は不要だが、グリーンアドバイザーやグリーンコーディネーター等の民間資格は、園芸について一定の知識を持っていることの証明にもなるため、取得しておいた方がよいだろう。一定の知識を裏付けとして、来店客の疑問に対して的確にアドバイスができる店であれば、リピーター増加も期待できる。

また、園芸店では季節や流行に応じた品揃えや、常に元気な植物を店頭に並べるためこまめな品質管理が求められている。そのためには、オーナーやスタッフが園芸の知識を豊富に備え、情報収集を欠かさないことが必要である。さらに、植物のアレンジ・ディスプレイのセンスやテクニックも、顧客に訴求する重要な要素となる。したがって、植物や育て方についての知識・スキルを習得するとともに、実務を通してノウハウを蓄積していくことが求められる。

なお、珍しい植物の中には、絶滅危惧種に指定されているものや遺伝子組み換え技術を用いて栽培されたものなど法律で規制されている品種もあるため、情報収集は怠らないようにしたい。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

小規模な店舗の開業を前提しているが、保管庫に相応の投資をしていることを前提としてモデルを示す。

【参考】15坪の地域密着型園芸店を開業する場合の必要な資金例

必要資金例の表

(2)損益モデル

週6日営業をベースに、休日営業も含めて売上計画を作成した。

a.売上計画

売上計画例の表

b.損益イメージ(参考イメージ)

標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

※財務標準比率は園芸サービス業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

商品自体の粗利益率は50%前後と高く、その利幅の中から一定割合で発生する商品ロス分、人件費などを賄いつつ、初期に投じた店舗開設費用(ショーケース、貯蔵庫などを含む)を回収していく。

小規模な地域密着型店舗を開業する場合、店頭でのキメ細かいアドバイス、アフターフォローなどで地元の固定客を確保していくことがまず重要である。その上で扱い商品に特色を出したりして単純な価格競争に巻き込まれないよう努めることもよいだろう。その点、SNSなどを活用した顧客開拓、ネット販売は今後期待できる分野であり、小資本ゆえの小回りを生かし、扱い商品にいち早くトレンドを取り入れていくことなども生き残りには鍵となってこよう。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)