業種別開業ガイド

バイクショップ

2023年 7月 7日

トレンド

近年、二輪車の需要台数が増加傾向にあることについて、日本自動車工業会では「新型コロナウイルス感染症拡大の影響下において、二輪車の“三密”を避けて移動できる有用性や、ワークライフバランスの充実に適した趣味という特性が認められつつあること等」が背景にあるとしている。

そんな中でいま注目を集めているのは、走行中に二酸化炭素を排出しない「電動バイク」だ。脱炭素社会に向けて、2050年二酸化炭素実質排出量ゼロに取り組むことを表明した地方公共団体が増えつつある中、東京都では「電動バイク」や「燃料電池バイク」など、走行時に排気音や排出ガスを出さない二輪車を「ゼロエミッション・バイク(ゼロエミバイク)」と呼び普及促進に取り組み、「電動バイク」の車両購入費用の補助を行っている。

また、令和5年7月1日から改正道路交通法が施行され、「特定小型原動機付自転車」(特定小型原付)という車両区分が新設される。これまで「原動機付自転車」の区分だった「立ち乗り電動スクーター」(電動キックボード)や「セグウェイ」(電動立ち乗り二輪車)、「ウィングレット」(トヨタ自動車製の充電式1人乗り車両)などは、新たにこちらの区分になり、16歳以上であれば運転免許証が不要になり、ヘルメット着用も努力義務となる。

これまでの「原動機付自転車」は速度制限が30km/hと定められていたが、「特定小型原動機付自転車」の区分では速度制限20km/hまでなら車道や自転車専用レーンも走行可能となり、6km/hまでなら歩道でも利用可能だ。

こうした状況はバイクショップにとっても、新たな顧客層を開拓する絶好のチャンスと言えよう。

バイクショップのイメージ01

近年のバイクショップ事情

全国軽自動車協会連合会と日本自動車工業会の調べによると、令和3年の二輪車国内販売台数は、前年より13.7%増加して約41万6,000台となった。原付第一種が4.3%増の約12万8,000台、原付第二種は23.5%増の約12万6,000台、軽二輪車は6.1%増の約7万9,000台、小型二輪車は約24.0%増の8万4,000台だった。なお、原付第二種以上(51cc以上)は18.3%増の約28万8,000台となった。

二輪車国内販売台数の推移
二輪車販売台数

バイクショップの仕事

バイクショップにおける主な仕事は以下の通りだ。

  1. バイクの仕入(新品・中古)
  2. 販売
  3. 登録
  4. 修理、車検、点検
  5. 自賠責や任意保険などの手続き

開業するバイクショップの周辺に、バイクをたくさん使っている企業や商店、公共施設などがあるかどうか、ぜひチェックしておきたい。新聞配達店や宅配ピザなどの拠点、郵便局、警察署から修理や整備の仕事が入るように、事前にルートを開拓しておきたい。

バイクショップでは新車の販売だけでなく、利益率の高い中古車の買取・販売を行っているところが多い。店頭での買取のほか、全国で開催される業者向けのオートオークションに参加するなど、買取ルートを複数確保しておくと良いだろう。中古車を整備・点検し、チューンアップして販売する技術も必要となる。

バイクはリユース性の高い製品と言われており、故障した車両も修理・整備を施せば再び使え、分解すればパーツとして再利用できる。しかしいざ廃車という場合には、公益財団法人自動車リサイクル促進センター(JARC)二輪車事業部が、ユーザーが安心して安全に廃棄できる「二輪車リサイクルシステム」を運用している。バイクショップは「廃棄二輪車取扱店」に登録。所有者が持ち込んだ車両を引き取り、指定取引所に持ち込む。すると処理再資源化施設で資源回収と廃棄物エネルギーを回収、廃棄物の最終処分が行われるという流れだ。

バイクショップのイメージ02

バイクの種類

わが国では「バイク」(bike)という呼び方のほかに、「自動二輪車」、「単車」、和製英語の「オートバイ」などとも呼ばれているが、これらの名称はみな同じもので、「原動機(ガソリンエンジンや電気モーター)を搭載した二輪車」のことを指している。

道路交通法と道路運送車両法による電動バイクの定格出力(kw)による区分

バイクには次のようなモデルのタイプがある。

1. レーサーレプリカ

レースで使われているようなバイクを市販用にアレンジしたバイク。体重移動がしやすく、コーナリング性能が良いのが特徴。

2. ツアラー

ツーリング向けのバイク。本体がどっしりとしていて、体のバランスを取りやすく、長時間運転していても疲れにくい。

3. ネイキッド

いわゆる「正統派」と呼ばれるタイプ。教習用バイクともされており、扱いやすさが特長の一つとなっている。

4. アメリカン

もともとアメリカの広大な道を走るために設計されたもので、豪快な野性味ある外観をもち、長時間ゆっくり走っていても疲れない。

5. ストリート

比較的小型で、軽量なものが多い。街を気軽に走ることに向き、女性でも運転しやすい。価格が比較的リーズナブルなのも特徴の一つ。

6. オフロード

林道や砂利道、舗装されていない道などを走るためのバイク。車体が軽めで初速が速いのも特長。ただ高速で長時間乗ると疲れやすい。

7. ビッグスクーター

派手さこそないものの、運転のしやすさは群を抜いている。また、収納スペースが比較的大きく取ってあるので通勤にも便利。

8. オールドルック

クラシックでどこか懐かしみのあるデザインが特徴。レトロ感だけでなく、現代的な味付けを加えたものや、走行性能を追求したタイプなどもある。

バイクショップ開業の人気理由と課題

人気理由

  1. バイクに関する新しい技術や情報にいち早く触れることができる
  2. 車種によっては中高年や女性にも人気があり、幅広い層に販売することができる
  3. 整備によって性能が上がればオーナーに感謝される
  4. バイクファンに交流の場を提供できる

課題

  1. バイク離れの傾向にある若年層の取り込み
  2. 整備・点検・チューンナップなどの技術習得が必要
  3. レンタルやシェアリングサービスと差別化

バイクショップ開業の11ステップ

バイクショップ開業の11ステップ

バイクショップの開業に必要な資格等

バイクショップを開業するために専門的な資格は必要ないが、以下の資格については取得を検討したい。

バイクの整備やメンテナンスの技術を証明する国家資格として「二輪自動車整備士(バイク整備士)」がある。3級を取得すればバイクの各部・装置の基本的な整備が可能となり、2級取得で整備全般を単独で行う事ができるようになる。取得のためには、専門課程のある学校での履修や実務経験が義務づけられているので、各校の案内サイトを参照するか、実際に販売店や整備会社などで経験を積みながらチャレンジする方法もあるだろう。

また保険代理店の資格も取得しておきたい。バイクの場合も自動車と同様、自賠責保険(強制保険)と任意保険がある。代理店の資格があれば、その都度、保険契約のために代理店担当に依頼する必要がなくなり手続きが早く済み、代理店業務も収入源となる。資格試験は「損保一般試験」と呼ばれ、基礎単位試験と商品単位試験(自動車保険)という少なくとも2つの試験に合格しなければならないが、試験の難易度そのものは比較的「やさしい」とされている。

また、中古車売買を扱うには「古物商許可」が必要になる。事前に所轄の警察署(生活安全課防犯係)に申請する必要がある。また、営業所での業務を適正に実施するための責任者として、管理人1人を選任しなければならない。

バイクショップの開業資金

一例として、店舗契約、内装工事、さらに専用機材・設備をそろえる初期費用で1,000万円程度は用意したい。また、仕入れや人件費などの運転資金は、軌道に乗せるまで半年から1年程度を、合計2,000〜2,500万円くらいの資金は見込んでおきたい。

バイクショップの損益イメージ

バイクショップの損益イメージ
バイクショップのイメージ03

※開業資金、損益イメージの数値は、開業状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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