業種別開業ガイド

焼肉店

トレンド

1.家計の焼肉店利用は好調に推移

総務省「家計調査」によると、家計1世帯あたり2017年と2015年の外食費全体は約16万2,000円から約15万7,000円へ5,000円(3%)程度減少しているが、焼肉店での外食に支出する金額の平均は2017年で6,528円であり、2015年と比べて652円(11%)の増加となっており、焼肉店利用は好調に推移していると言える。

2.中高年齢者もターゲットに

焼肉店と言えば、若者中心に人気のある業態というイメージがあった。しかし、テレビ番組などの影響で、「肉料理は健康長寿に良い」という認識が広がり、最近では、中年層の間でもよく利用されるようになってきている。

3.バラエティに富んだ業態に

かつて焼肉店と言えば、煙や臭いを気にして入店しづらいイメージがあった。しかし近年では、テーブルまたは焼き台ごとに吸煙器を取り付ける店が多くなり、清潔感やおしゃれな雰囲気を売りにする店も増えている。昨今、肉の産地や牛などの飼育法、調理法にこだわり肉料理を楽しむ「肉ブーム」が続いている。このブームを背景に、熟成肉や希少部位、和牛専門などを売りにした高級店も増えている。また、比較的低価格帯で提供する店、食べ放題のファミリー・若者向けの店もある。このように、客の予算に応じてバラエティに富んだ店舗が展開されている。

焼肉店の特徴

炭火を使った本格的な焼肉料理は多くの煙を出すため、一般家庭では、調理されにくい料理である。また、「炭火焼のおいしい焼肉なら専門店で」と考える消費者も多く、外食における焼肉需要は高いと言える。近年のトレンドを見てもわかるように、その市場は堅調に推移している。

焼肉料理は肉のおいしさが店の評価に直結することから、品質の良い食材(肉)の安定仕入が欠かせない。食材の多様さは店の独自性を出せるポイントであり、特定の部位(希少部位)にこだわったメニューづくりもできる。また、有名産地を訴求するなど、他店との差別化を図ることも可能である。

焼肉店業態 開業タイプ

あらかじめコンセプトを定め、それに沿って店舗タイプを選定することが重要となる。

(1)高級店

高級な肉を高付加価値な接客サービスで提供する店舗である。客単価は5,000円以上となっているところが多い。無煙ロースターは全席に完備され、店内の清潔感にも気が配られている。質の高い接客サービスが提供されている。

(2)居酒屋風カジュアル店

居酒屋風の店舗で、客単価3,000円~5,000円が中心の店舗である。メニューも、カルビ、ロース、ハラミといった肉類以外にも、おつまみや食事メニューなどが豊富で、居酒屋寄りの構成になっている。

(3)低価格店

客単価3,000円未満の顧客を主なターゲットとする店舗である。食べ放題を打ち出し、ファミリー層や若者を集客する店舗も多い。調理・接客オペレーションはマニュアル化され、アルバイトでも対応できるようにして、コストを抑える工夫がなされている。

開業ステップと手続き

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の8段階に分かれる。

(2)必要な手続き

焼肉店の開業に際して必要な主な許可や届出は、以下の通りである。

メニューづくり

  • 肉は牛肉が主であるが、豚肉、鶏肉も提供されている。人気メニューのほかにも、高価な希少部位やホルモンなど、多様な肉が提供される。サイドメニューとして、生野菜、サラダ、キムチ、スープ、飯類、クッパやビビンバ、その他デザートまであるのが一般的である。
  • 客層としては、若い男性客だけでなく、女性や中高年齢者の割合も増えてきている。肉料理店ながら野菜もたくさん取れるメニューづくりなど、健康志向を打ち出した取り組みも必要になるだろう。

必要なスキル

料理の特性上、「食材=肉」のおいしさが店の評価を左右する。肉の部位によっては希少なものも含まれるため、安定的な仕入先、価格に見合った等級の肉を仕入れられるルートの確保が必須である。このため、開業に向けては、まず焼肉専門店で働きながら、仕入先との人脈作りや店舗運営ノウハウを身に付けて独立することを検討してもよいだろう。産地にこだわる場合は卸業者を通さず、自ら産地に足を運び、直接仕入を実現する努力も求められる。

2018年6月 「食品衛生法」が15年ぶりに改正された。今後は、すべての食品を扱う事業者にHACCPに沿った衛生管理が要求されることになる。HACCPは健康被害を引き起こす可能性のある要因を加工工程の中で管理する手法である。小規模事業者などにおいては、緩和措置も取られる予定であるが、それでも、HACCPに準じた高度な管理手法が必要になってくると思われる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

一般に、30坪前後の店舗面積をもつ店が多い。新しい焼肉店舗は、吸煙ロースターが完備されており、テーブル席ごとに排煙ダクトが設置されているところが一般的である。その分、内外装工事費などのコストがかさむ場合が多い。

【参考】
繁華街:店舗面積約30坪、席数50席の焼肉店(駅前・繁華街立地)を開業する場合の必要資金例

(2)損益モデル

■売上計画
店舗の立地や業態、規模などの特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。平日、土曜、日曜で来客予想数を変えるなど、細かく作りこむことが重要である。

(参考例)焼肉店(駅前・繁華街立地)

※土曜・日曜のいずれか1日休業日を設定。

■損益イメージ(参考例)焼肉店(駅前・繁華街立地)

人件費:従業員2名とアルバイト2名を想定
  • 開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

掲載日:2018年12月