ビジネスQ&A

ワーク・ライフ・バランスへの取組みのためには何が必要ですか?

雑貨品のパッケージデザイン・製造を行っている会社です。産休や育休制度を整備しているにもかかわらず、優秀な女性従業員が出産を機に簡単に退職してしまうケースが何件か発生しています。何が原因で、どう改善すればよいか、ワーク・ライフ・バランス(以下、WLB)の取組みについて良いヒントをいただければと思います。

回答

産休や育休制度、介護休暇制度などを導入すれば、社内のWLBはうまく運用されると考えられがちです。しかし、社内の従業員には一人ひとり違った生活の場面があります。WLBは、社内全体に対する支援の問題ととらえることが重要です。

図1 ワークライフバランス運用のイメージ 図1 ワークライフバランス運用のイメージ
図1 ワークライフバランス運用のイメージ

【働き方を変えることが重要な課題】

WLB制度が導入されている企業は、WLBに熱心な企業のように思われますが、前述の基礎的な部分が弱いと、制度の利用適用から外れた際に、仕事と生活の調和が図れないという問題に直面します。それは、従業員のモチベーション低下や離職といった結果を招き、職場全体の問題となっていく傾向が見られます。つまり、WLB制度実施のみを充実させるのではなく、働き方を変えることが重要な課題となります。
たとえば、ある従業員が子育てや介護など、いままでどおりの仕事ができなくなった場合、WLB制度を利用して働き方を変更しないと仕事が続けられなくなります。しかし、働き方がハードな状況にあると、想定以上に制度利用が増えたり、制度利用限度まで期間が長期化したりすることになります。そのような状況下で制度を利用した従業員は、他の従業員との働き方の違いが大きくなるため、任される業務や責任の範囲が制限されるようになり、モチベーション低下や離職へとつながるケースも出てきます。
制度の整備・充実が、従業員のWLBにとって重要であることは間違いありませんが、制度が効果的に利用されるためにも、働き方とそれを支える職場風土の改革こそが、WLB制度運用にとって重要となります。

【働き方の変革への優先課題】

従業員全体の働き方変革の優先課題として、以下に3つの優先課題を挙げます。これらを解決することによって、WLB制度が効果的に運用されていくものと思われます。

1.総実労働時間の短縮

WLB実現のためには、何よりもまず、仕事に傾きすぎている時間配分の現状を改善する必要があるでしょう。
たとえば、半日単位の有給休暇取得制度を導入し、柔軟な取得が可能な状態にしておくことや、お盆、年末年始、地元の祭事などに合わせて年次有給休暇の計画的付与を行うことなどが考えられます。また、定期的にノー残業デー、家族サービスデー、一斉消灯日などを設定することや、業種、業態などを考慮し、自社に適した変形労働時間制度の導入を検討することなども有効と思われます。

2.男性従業員の育児休業取得促進

妊娠・出産を境に仕事を辞めざるを得なくなる女性従業員の存在や、家族や育児にかかわりたいと希望する男性従業員の実際の育児休業の取得率などを見ると、男女を問わず、仕事と子育てを両立できる状況になく、相当数が意思に反して仕事と子育ての二者択一を迫られている状況が認められます。
たとえば、短期間の分割での育児休業取得も可能にするなど、男性労働者が取得に前向きになるような柔軟な休業期間の設定を行うことなどが考えられます。また、職場復帰後の処遇などを明確にしておくことや、育児休業中の支援体制を作ることも有効かと思われます。

3.家族介護・看護が必要な従業員への支援制度の充実

家族への介護・看護については、高齢化社会の進行を背景に、その必要性が増しています。にもかかわらず、介護休業については、わずかな取得が見られるのみです。そのため、家族介護・看護を必要とする労働者への支援制度を充実させていくことが必要でしょう。
たとえば、国や県、その他地方自治体などが行っている企業への支援制度を活用し、職場の介護などに係る支援制度を整備することなどが考えられます。

企業はWLBを導入・整備する前に、まずは従業員全体にかかわる基礎的な部分を整理し、そのうえでWLBに取り組む姿勢が必要ではないかと思います。

回答者

中小企業診断士
高橋 順一

関連情報

内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室

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