【社員に理解させる】
会社にとって、社員の恒常的な長時間労働を抑制することの目的は、残業代を抑制することだけではありません。社員の心身に与える悪影響を回避し、育成した有用な人材の喪失を防ぐことで、会社の優位性を発揮することができるのです。一方、社員にとっては、長時間労働の改善が、個人の自由時間を確保できるというメリットがあります。しかし、長時間労働を抑制するにあたっての説明で、「残業を減らせば、自由時間が確保できます」ということだけでは、人件費の抑制のためだけと誤解されるうえ、会社と社員の関係が悪くなるとも限りません。
そこで、効果を上げるには、長時間労働を改善して自由時間ができることに、以下のようなメリットがあることを社員に示し、十分に理解させる必要があります。
1.家族とのかかわり
時間外労働が削減されれば、家族と過ごす時間が多くなり、充実した家庭生活が送れます。また、子育てや親の介護に必要な時間を確保することができます。
2.趣味・自己啓発
趣味や自己啓発を行うことができ、さらに質の高い仕事へつながります。
3.健康と心のゆとり
心身の疲労やストレスを解消し、健康でゆとりある生活を送ることができます。
4.地域・社会とのかかわり
地域・社会の一員としてその活動に参加することで、さまざまな人との交流が図れます。
5.能力向上
時間内に業務を完了させるために、その遂行能力、リスク管理能力が高まります。また、業務の遂行には、他の社員との連携・協力を図る必要があるため、コミュニケーション能力も向上します。
【仕事と生活が両立できる職場環境の形成】
長時間労働の抑制には、時間外労働を削減することと、年次有給休暇等(以下「年休等」)をしっかり取得させることです。しかし、長時間労働の抑制を社員が理解しても、時間外労働が恒常的に行われることを良くないとする組織風土、年休を取得しやすい職場環境が整備されていなければ、その効果は上がりません。そのため、各階層には果たす役割があります。
1.経営者トップの役割
取り組みの推進には、経営トップが目指すゴールを明確にする必要があります。また、トップが率先して推進体制を整備し、強い意志を持って取り組む姿勢を社員に示さなければなりません。
2.リーダーの役割
経営トップが取り組みの姿勢を示しても、各職場のリーダーが、年休等を請求する部下を排除するようなことがあってはなりません。リーダーも十分理解し、年休等の請求には適切に応じることです。そして、自らも積極的に年休等を取得して、その促進に努める必要があります。また、適正な時間管理、職場内コミュニケーションの円滑化を図りながら、業務効率化のために部下への支援、指導を行うことです。
3.社員の役割
社員も、会社が用意した制度を積極的に利用し、「ダラダラ残業」をやめ、自らの働き方を見つめなおさなければなりません。さらに、他の社員の年休等の取得には、「お互い様の精神」で業務に協力することで、組織風土の形成の担い手になることです。
【長時間労働抑制のための具体的取り組み】
1.改善のための意識の改革と共有化
労使の話し合いの機会を設定し、長時間労働の改善についての認識が共有されることを確認することからスタートします。
2.実施体制の整備
あくまで経営トップが主導しますが、推進者を社員から選任し、社員中心に進めることです。
3.現状の把握と改善点
時間外労働の実態、年休等の取得状況、業務体制、社員の働き方、現在の取り組みの現状から、ムダ、ムラなど改善されるべき点を洗い出します。
4.取り組み内容の検討と制度づくり
アンケートやインタビューから、社員のニーズを調査し、改善されるべき点について採用する制度や仕組みを構築します。内容を検討するにあたっては、実施可能であることがポイントです。
5.制度の運用・定期的フォロー
導入には、説明会を実施し、理解と利用促進を求めます。そして、定期的に効果測定をして、取り組み内容を見直します。