ビジネスQ&A

EU RoHS指令・附属書IIIの適用除外の有効期限について教えてください。

当社は電気電子機器に多用される電源ユニットを製造しています。当社の直接の顧客は国内の商社で、国内のセットメーカーが当社のユニットを組み込んで、電気電子機器を完成させています。
当社にはセットメーカー名や最終製品を正確に知らされていませんが、EU RoHS指令への順法が要求されています。
当社の顧客の商社からセットメーカーの要求として、2020年2月以降は、真鍮材の鉛は0.1%(重量比)以下にすることが通知されました。

一方で、EU RoHS指令 附属書III(第4条1項の規制から除外される用途)では、6(c)(銅合金に含まれる4%(重量比)までの鉛)は次のとおり、適用除外の有効期限が示されています。
・カテゴリー1〜7および10の電気電子機器:2021年7月21日
・体外診断用医療機器および産業用監視および制御機器以外のカテゴリー8および9の電気・電子機器:2021年7月21日
・カテゴリー8の体外診断用医療機器:2023年7月21日、
・カテゴリー9の産業用監視および制御機器、およびカテゴリー11の電気電子機器器:2024年7月21日

当社の製品の電源ユニットは、何処に使用されるか明確ではありませんが、早くても除外の有効期限が切れるのは2021年7月21日だと思います。顧客の根拠としている法規制は何でしょうか。

参考 製品カテゴリー(附属書I)
カテゴリー 1. 大型家庭用電気製品
カテゴリー 2.小型家庭用電気製品
カテゴリー 3.IT及び遠距離電気通信機器
カテゴリー 4.消費者用機器
カテゴリー 5.照明装置
カテゴリー 6.電動工具
カテゴリー 7.玩具、レジャー及びスポーツ用品
カテゴリー 8.医療用機器
カテゴリー 9.監視、制御機器(工業用監視及び制御機器を含む)
カテゴリー 10.自動販売機
カテゴリー 11.上記でカバーされないその他の電気電子機器

回答

附属書IIIに記載されている除外用途は、カテゴリー8及び9は7年毎、カテゴリー8及び9以外は5年毎に白紙に戻されます。
ただし、企業からの除外申請を受けて更新され、最長5年間または7年間の除外が適用されます。
2021年7月21日が、2回目の5年間の期限です。企業が2021年7月22日以降も除外の延長を望む場合は、18ヶ月前の2020年1月21日までに申請する必要があります。
2020年1月21日までに申請された内容は、2020年2月頃に公開される見込みです。
セットメーカーは附属書III 6(c)の銅合金(真鍮)中の鉛の除外項目が、延長されない可能性があると推察し、サプライチェーンに鉛の非含有(0.1%(重量比)以下)を要求したものと思われます。
しかし、附属書IIIから6(c)が削除されても、除外申請が出ていれば、最短12カ月間・最長18カ月間の移行期間がありますので、実際に除外の有効期限が切れるのは早くて2021年7月22日です。
なお、鉛フリーの真鍮材もJIS規格材として流通しています。

(1)EU RoHS指令の要求事項

EU RoHS指令の附属書IIIは、EU RoHS指令第5条(附属書の科学的・技術的進歩への適応)2項で、有効期間が定められています。
2011年7月21日時点でリストに掲載されている適用除外の対象物質に関しては、最大有効期間は次のとおりです。
カテゴリー1〜7、11及び10の電気電子機器は5年 
カテゴリー8及び9の電気電子機器は7年
カテゴリー8及び9の電気電子機器のみに適用される附属書IVは、7年です。
但し、より短い期間が設定されている場合は除きます。

(2)有効期限

カテゴリー1〜7及び10の電気電子機器は、2011年7月21日から5年間隔となりますが、カテゴリー8及び9の電気電子機器は次のような適用開始日となります。
医療機器(指令93/42/EEC)及び監視制御機器:2014年7月22日
体外診断機器(指令98/79/EC):2016年7月22日
産業用監視制御機器:2017年7月22日
なお、カテゴリー11の電気電子機器は2019年7月22日から5年となります。

これらを整理すると有効期限は次のとおりとなります。
カテゴリー1〜7及び10の電気電子機器:2021年7月21日
医療機器(指令93/42/EEC)及び監視制御機器:2021年7月21日
体外診断機器(指令98/79/EC):2023年7月21日
産業用監視制御機器:2024年7月21日
この有効期限が、附属書IIIに記述されています。

更新時期の早いカテゴリー1〜7及び10の電気電子機器は、最初の5年の期限が2016年7月21日、2回目の5年の期限が2021年7月21日に到来します。
すなわち、2021年7月21日に附属書IIIは、白紙になるということになります。

EU RoHS指令第5条5項で「適用除外の更新申請は、適用除外の期限が切れる18ヶ月以上前に行うものとする」としています。
2021年7月21日の18ヶ月前は、2020年1月21日になります。1月21日までに、誰かが更新申請を出し、認められれば2021年7月21日以降も除外が延長されます。

現在の見込みでは、2020年1月21日までの申請状況が2月頃に公開されます。その後、申請内容が審議され、随時状況の開示やパブコメ手続きなどがとられていきます。
“stakeholder consultation”などは、調査機関のÖko-Institut e.V.などから開示されると思います。(注1)
セットメーカーから通知のあった2020年2月は、除外申請の公開が見込まれる2月を指し、その根拠として、6(c)の延長がないと推測し、社内在庫などを考慮して、前倒し要請をしたものと推察します。

(3)代替材料

6(c)の延長があるか、無いかは、現時点(2019.12.23)では把握できていませんが、代替材の存在が審議の争点になると思います。

快削性を得るために、真鍮材に鉛を4%(重量比)程度含有させた材料があり、多用されています。
JIS H 3250 C3601~4 鉛 1.8~3.7%(重量比)

一方、鉛フリー真鍮材もあります。
JIS H 3250 C6801~4 ビスマス(Bi) 0.5~4%(重量比)、鉛 0.01%(重量比)以下、カドミウム 0.0075%(重量比)以下
JIS H 3250 C6932 シリコン(Si) 2.7~3.4%(重量比)、ビスマス(Bi) 0.5%(重量比)以下、鉛 0.01%(重量比)以下、カドミウム 0.0075%(重量比)以下

C6804などの鉛フリー真鍮材は、価格は高めですが、流通しており、C3604などの代替ができるとする情報が流れています。セットメーカーは、この情報に基づき早めに要求を出したものと思われます。
C3601~4とC6801~4あるいはC6932などは、加工性が若干異なると言われていますので、試作をしておくことが肝要です。

(4)まとめ

2020年1月21日までに除外申請された案件は、案件が集中しますので18~24カ月かかり、古い審議案件を優先するとしています。このため、2021年7月21日までに結論がでない可能性があります。
なお、結論がでるまでは、適用除外は継続します。
また、EU RoHS指令第5条6項では「適用除外の更新申請を拒否する場合、または適用除外を取り消す場合、免除は決定日後の最短12ヶ月、遅くとも18ヶ月で失効する」となっています。
つまり、適用除外の取り消しがあっても移行期間があります。

これらの動向はEU 環境総局のホームページで公開されています。(注2)

現時点(2019年12月23日)で、執筆者も適用除外に関する具体的な情報は入手できていません。
セットメーカーは附属書III 6(c)の銅合金(真鍮)中の鉛の除外項目が、延長されない可能性があると推察し、サプライチェーンに鉛の非含有(0.1%(重量比)以下)を要求したものと思われます。

引用情報等

回答者

中小企業診断士 松浦 徹也