この指令は、使用される材料に関係なく、またそれが産業、商業、オフィス、店舗、サービス、家庭、またはその他のレベルで使用または放出されるかどうかにかかわらず、EUで上市されるすべての包装材およびすべての包装廃棄物を対象とする。
この指令は、安全性、健康保護および梱包された製品の衛生に関するものなど、包装に関する既存の品質要件、または既存の輸送要件、または有害廃棄物に関する1991年12月12日の理事会指令91/689 / EECの規定を害することなく適用されるものとする。
規制濃度は、第11条で、「包装材中または包装材構成部材(packaging components)に、鉛、カドミウム、水銀、六価クロムの濃度レベルの合計が100ppm(重量比)を超えないことを確実にする。」としています。
分母は、包装材全体ではなく、構成部材毎に基準が適用されます。例えば、段ボール箱、留め具、クッション材などが分母になります。
この指令は、もともとは、家庭からの包装材廃棄物の削減が目的で、ドイツの循環経済・廃棄物法の影響で制定されたものです。ドイツ法は包装廃棄物を廃棄物にしないことが目的です。
包装材、緩衝材はREACH規則の成形品(Article)となり、有害化学物質管理が要求されます。REACHEUの規則により、輸入者は包装材中に0.1%以上でCLS(高懸念物質)を含有していれば、顧客への情報伝達義務や、WFD(廃棄物指令)(*2)によるECHA(欧州化学品庁)に届出する義務(SCIP登録)(*3)が生じます。
CLS(*4)は、半年毎に追加されますが、2021年7月末時点で219物質が特定されています。
このため、輸入者がSCIP登録の義務が生じないようにCLSフリーの包装材、緩衝材を使用するのが基本で、0.1%(重量比)以上含有している場合は、その情報を輸入者に伝えなくてはなりません。
2.アメリカの規制
アメリカは連邦法と州法があり、多くは州法で規制されます。アメリカの規制は判例主義ですので、規制の詳細は分かり難い部分があります。
一方、各州で州法を制定しますが、ビジネス活動は州を越えますので、基準などの統一が望まれます。このような背景から、包装材規制のひな形法として「Model Toxics in Packaging Legislation」(*5)が作成され、各州がひな形法から州法を制定しています。
東海岸周辺の州が多く採用していますが、西海岸のカリフォルニア州も採用しています。
ひな形法 Sec.4で「製造業者、供給業者、または販売業者は、製造または流通中に非意図的に存在を超える量の鉛、カドミウム、水銀、または六価クロムが意図的に含有した包装材または包装材構成部材を販売または販売促進の目的で提供することはできない。 包装材中または包装材構成部材に非意図的に存在する鉛、カドミウム、水銀、または六価クロムの濃度レベルの合計は、100 ppm(0.01%)を超えてはならない。」としています。
この部分は、EUと同じ内容です。
2021年2月改正版では、重金属規制に加えて、フタル酸エステル類(Phthalates)ならびにパーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(Perfluoroalkyl and polyfluoroalkyl substances; PFAS)を含む包装材および包装構成材の販売または流通を禁止しています。
意図的含有は禁止され、非意図的な含有の場合には、フタル酸エステル類はその合計値で100 ppmを超えてはならず、PFASについては、すべての条件で含有を認めていません。
さらに、Sec.6でPBTなどが懸念物質の信頼できる科学的証拠に基づいて権威ある政府機関によって特定された物質が追加されることになりました。
Sec 6(包装剤の高懸念化学物質の同定と禁止)
1.化学物質は、このセクションのリストに含まれるのは、次の場合のみである。
A. [国家行政機関]によって公開された懸念化学物質のリストに含まれている、または、信頼できる科学的証拠に基づいて権威ある政府機関によって特定されている化学物質
(1) 発がん性物質、生殖発生毒性物質、または内分泌かく乱物質
(2) 難分解性、生体内蓄積性および毒性を有する物質(PBT)
(3) 非常に持続的で非常に 生物的な蓄積 (vPvB)
(4) 残留性、移動性および毒性を有する物質 (PMT)
(5) 非常に残留性が高く、非常に移動性の高い物質(vPvM) または
B. 化学物質が生殖発生毒性物質、内分泌かく乱物質、またはヒト発がん性物質であるという強力で信頼できる科学的証拠があると州の行政機関が判断し、そして
C. [州行政機関]は、化学物質が次の追加基準の1つ以上を満たしているという強力な信頼できる科学的証拠があると判断する。
(1) この化学物質は、生体モニタリング研究を通じて、ヒトの血液、ヒトの母乳、ヒトの尿または他のヒトの身体組織または体液に存在することが判明した。または
(2) 化学物質は、サンプルと分析によって、包装中に存在することが判明した。または
(3) 化学物質がパッケージに添加されているか、パッケージ内に存在する。
補足 PFASについて
パーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物は、約4,500種が存在し、これらの総称としてPFAS( poly- and perfluoroalkyl substances )といわれます。
PFASの代表的な物質がPFOAとPFOSで、POPs条約や化審法で規制されています。
アメリカでは、PFASはTSCA(The Toxic Substances Control Act 有害物質規制法)のSNURに指定されています。
SNURは、
「人や環境に不当なリスクをもたらすおそれがある」または、
「相当な量の環境への放出若しくはばく露のおそれがある」
と判断した化学物質の製造、輸入又は利用に対して制限又は禁止するものです。
721.9582(*6)でカーペットの撥水剤などの利用は認めていますが、包装材、緩衝材での使用は制限しています。
アメリカのメイン州は、2021年7月2日に「パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質汚染阻止法」を議会が採択しました。
対象となる「パーフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質」または「PFAS」は、少なくとも1つの完全にフッ素化された炭素原子を含むフッ素化有機化学物質のクラスの任意のメンバーを含む物質を意味する。」として、PFOA、PFOSだけでなく幅広く規制しています。
モデル州法は2年以内に発効することを推奨しています。
EUもアメリカはともにアプローチは異なりますが、人と環境に影響を与える化学物質の使用を包装材、緩衝材にも適用してきています。
輸出する製品については法規制対応に注力しますが、製品と一体となる包装材、緩衝材にも留意する必要があります。