2026年 8月 10日
資金繰りに苦慮している中小企業経営者です。借入金の返済負担を軽減できる方法があると聞きました。具体的な返済負担軽減の方法や気をつけること、スムーズに進めるためのポイントを教えてください。
回答
借入金の返済負担を和らげるには、まず月次資金繰り表を作成し、手元資金、返済予定、返済原資を確認することが重要です。そのうえで、金融機関に返済条件の見直し(リスケジュール)、返済期間の延長、元本据置、借換えによる一本化などを相談します。一時的な入金遅れや急な支出による資金不足であれば、追加融資も選択肢になります。ただし、赤字や過大な返済負担が原因の場合、追加融資だけでは根本的な解決になりません。経営改善計画書や資金繰り表を準備し、返済可能額や今後の収支改善策を示したうえで、早めに金融機関や支援機関へ相談しましょう。
1.まず月次資金繰り表で返済余力を確認する
金融機関に相談するためにも、自社の返済余力を把握するためにも、まずは入出金の状況を見直しましょう。ここで重要なのは、損益だけでなく、実際に使える手元資金を見ることです。
黒字倒産という言葉を聞いたことがあるでしょうか。黒字倒産とは、損益上は黒字であっても、売上代金の入金が遅れたり、仕入代金や借入金の返済などの支払いが先行したりすることで、手元資金が不足し、事業継続が困難になる状態をいいます。
損益はもちろん重要ですが、会社を継続するうえでは、実際の現金収支を把握することが欠かせません。現金収支を見直すことで、返済に回せる資金の有無や、資金繰り改善の余地を把握しやすくなります。その余地が見つかれば、返済条件を変更しなくても返済負担を吸収できる可能性があります。
2.資金繰り改善に向けた現金収支見直しのステップ
現金収支の見直しは、主に「現状把握→課題発見→改善策の検討」のステップで考えてみましょう。
(1)現状把握
まずは、現預金帳簿や入出金口座等をもとに現在の収支状況を確認します。あわせて、借入返済額や売掛・買掛金などの入出金予定を、相手先・時期・金額・名目といった観点で洗い出してみましょう。このほか、在庫や資産状況についても確認します。これらを確認できたら、月次資金繰り表を作成してみましょう。資金繰り表ができれば、現状の資金繰りに対して、妥当な返済額かどうかを判断できるとともに、資金繰り悪化の原因を把握できます。
(2)課題発見
課題は、収入面・支出面・資産面に分けて確認すると整理しやすくなります。収入面では、売上後の請求漏れがないか、入金サイト、つまり販売から入金までの期間が必要以上に長くなっていないか、回収遅延が発生していないかを確認しましょう。
支出面では、不要な支出がないかを確認するとともに、支払方法や支払時期にも目を向けてみましょう。例えば、慣習的に現金で支払っている取引や、本来の支払期日より早く支払っている取引はないでしょうか。必要以上に早いタイミングで現金が流出すると、資金繰りを圧迫する要因となります。あわせて、金利負担の重い借入がないか、現在の収支状況に見合わない借入返済額になっていないかを確認しましょう。資産面では、滞留在庫や遊休資産など、現金化できる資産がないかを見直すことも有効です。
(3)改善策の検討
資金繰り悪化の原因を洗い出したら、実行しやすさや効果の大きさを踏まえて、具体的な改善策を検討しましょう。
まずは、自社で改善できる余地がないかを確認します。例えば、利用していないサービス利用料、効果の薄い広告費、見直されていない外注費など、不要な支出を削減できないかを検討します。また、滞留在庫や遊休資産を売却し、手元資金を確保することも有効です。
自社だけでの改善が難しい場合は、取引先との条件見直しを検討します。例えば、仕入先に対して支払条件の見直しを相談する、販売先に対して入金サイトの短縮を相談する、といった方法があります。ただし、支払条件や入金条件の見直しは、取引先との信頼関係に影響する可能性があります。一方的に進めるのではなく、理由や今後の取引方針を説明したうえで、早めに相談することが大切です。
それでも返済負担が重い場合は、金融機関に返済条件の見直しを相談しましょう。
3.返済条件の見直し・借換え・追加融資の違い
借入金の返済負担を和らげる方法としては、返済条件の見直し、借換え、追加融資などが考えられます。いずれも金融機関の承諾や審査が必要となるため、月次資金繰り表や経営改善計画書を準備し、返済可能額や今後の改善策を説明できるようにしておくことが重要です。複数の金融機関から借入がある場合は、メイン金融機関を中心に、関係金融機関との調整が必要になることもあります。
(1)返済条件の見直し(リスケジュール)
返済条件の見直し(リスケジュール)とは、金融機関と相談し、一定期間の元本据置や返済期間の延長などにより、毎月の返済負担を軽減する方法です。
元本据置
元本据置とは、一定期間、借入元本の返済を猶予してもらい、利息部分を中心に支払う方法です。短期的な資金繰り負担を軽くできる可能性があります。
返済期間延長
返済期間延長とは、金融機関の承諾を得て返済期間を延ばし、1回あたりの返済額を抑える方法です。
ただし、返済条件を変更しても借入金そのものが減るわけではありません。返済期間が延びることで、利息や保証料を含めた総返済額が増える場合もあります。あくまで資金繰りを立て直すための時間を確保する手段と考え、同時に収支改善に取り組むことが重要です。
(2)借換え(一本化)
借入金利が高い場合や、複数の借入があり返済管理が複雑になっている場合には、借換えも選択肢になります。借換えとは、新たな借入によって既存の借入を返済し、借入の条件を見直す方法です。複数の借入を一本化し、返済期間を見直すことで、1か月あたりの返済額を抑えられる可能性があります。
例えば、3つの金融機関から、返済期間2〜4年で合計3,000万円を借り入れており、毎月100万円を返済しているとします。
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借入先 |
借入残高 |
毎月返済額 |
残りの返済期間 |
|---|---|---|---|
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A銀行 |
1,200万円 |
25万円 |
4年 |
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B銀行 |
1,200万円 |
50万円 |
2年 |
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C銀行 |
600万円 |
25万円 |
2年 |
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合計 |
3,000万円 |
100万円 |
- |
返済期間が短いため、毎月の返済額が大きくなっています。これを借換えによって一本化し、返済期間を5年に見直した場合、次のように毎月の返済額を抑えられる可能性があります。
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借入先 |
借入残高 |
毎月返済額 |
残りの返済期間 |
|---|---|---|---|
|
A銀行 |
3,000万円 |
50万円 |
5年 |
|
合計 |
3,000万円 |
50万円 |
5年 |
この例では、借換えによって毎月の返済額が100万円から50万円に下がり、月々の資金繰り負担を軽減できます。ただし、これは元本返済額のみを単純化した例です。実際の返済額は、金利、返済方式、保証料、手数料などによって異なります。また、返済期間を延ばすことで、毎月返済額は下がっても、利息や保証料を含めた総返済額が増える場合があります。
借換えを検討する際は、毎月の返済額だけでなく、総返済額、手数料、保証料、担保・保証条件、既存金融機関との関係への影響も含めて確認しましょう。
(3)追加融資
短期的な資金繰りに苦慮している場合は、追加融資も選択肢になります。追加融資とは、新たに借入を行い、一時的な資金不足を補う方法です。売上代金の入金が想定より遅れた場合や、急な支出が発生した場合など、資金不足の原因が一時的なものであれば、有効な対応となることがあります。
ただし、赤字の補填や既存借入の返済資金を賄うために借入を重ねるだけでは、将来の返済負担がさらに重くなるおそれがあります。資金不足の原因が損益赤字や過大な返済負担などの構造的な問題である場合は、追加融資だけでなく、収支改善や返済条件の見直しも含めて検討する必要があります。追加融資を検討する場合は、必要な資金額、資金使途、返済原資、今後の収支見通しを整理したうえで金融機関に相談しましょう。
(4)経営改善計画書や資金繰り表の準備
返済条件の見直しや借換えを相談する際には、金融機関から経営改善計画書や資金繰り表の提出を求められる場合があります。経営改善計画書には、会社概要、借入先一覧、ビジネスモデル、収支改善策、事業収益計画などを記載します。特に、足元の資金繰りを説明する資料としては、月次資金繰り表が重要です。月次資金繰り表では、営業収支、設備投資、税金支払い、借入返済などを月ごとに整理し、資金残高の推移を確認します。
金融機関に説明する際のポイントは、「現在どのような資金繰り状況にあるのか」「今後どのように返済していく見込みがあるのか」を具体的に示すことです。必要に応じて、売上見込みの根拠資料、主要取引先との契約状況、改善施策の進捗資料なども準備しておくと、説明の説得力が高まります。
4.経営改善計画書の作成で相談できる支援機関
返済条件の見直しや借換えを行ううえで、経営改善計画書作成や資金繰り表の作成に難航する場合は、専門家の協力のもと進めていくことも検討しましょう。
中小企業庁の「経営改善計画策定支援事業」では、金融支援を伴う本格的な経営改善が必要な中小企業・小規模事業者を対象に、認定経営革新等支援機関による計画策定支援費用等の一部を、中小企業活性化協議会が負担する仕組みがあります。補助率や上限額、対象費用は支援内容によって異なるため、利用前に最新情報を確認しましょう。制度の詳細を確認したい場合は、中小企業庁や中小機構の以下のページも参考にしてください。
5.金融機関に相談する際の注意点
返済条件の見直し、借換え、追加融資はいずれも資金繰り改善に役立つ場合がありますが、毎月の返済額だけで判断しないことが重要です。返済期間の延長や借換えによって月々の負担が軽くなっても、利息や保証料、手数料を含めた総返済額が増える場合があります。また、返済条件の変更は、将来の新規融資や金融機関からの信用評価に影響する可能性もあります。
そのため、金融機関に相談する際は、現在の資金繰り表、今後の収支見通し、返済可能額、経営改善の方針を整理しておきましょう。追加融資を希望する場合も、必要な資金額、資金使途、返済原資を明確にし、単に不足資金を補うだけでなく、どのように資金繰りを立て直すのかを説明することが大切です。
(1)返済条件の見直しを行う場合
元本据置や返済期間延長を行う場合、短期的には毎月の返済額を抑えられる可能性があります。一方で、返済期間が長くなれば、利息や保証料を含めた総返済額が増える場合があります。条件変更の内容によっては、追加の保証料が発生したり、金利が見直されたりすることもあります。
また、返済条件の見直しは、金融機関にとっても融資条件の変更にあたります。資金繰りが苦しくなってから慌てて相談するのではなく、月次資金繰り表で数か月先の資金不足が見込まれた段階で、早めに相談することが重要です。
(2)借換えを行う場合
借換えによって毎月の返済額や金利負担を抑えられる可能性がありますが、保証料や手数料が発生する場合があります。また、返済期間が延びることで、月々の返済額は下がっても、総返済額が増えることがあります。
複数の金融機関から借入がある場合は、どの借入を借換え対象にするのか、既存金融機関との関係にどのような影響があるのかも確認が必要です。借換え後の資金繰り表を作成し、毎月の返済額だけでなく、総返済額や手元資金への影響も含めて判断しましょう。
(3)追加融資を行う場合
入金サイトの長期化や急な支出などによる一時的な資金不足であれば、追加融資が有効な場合があります。一方で、資金不足の原因が損益赤字や過大な返済負担などの構造的な問題である場合、追加融資だけでは根本的な解決にはなりません。
追加融資を検討する際は、必要な資金額、資金使途、返済原資、今後の収支見通しを整理しておきましょう。金融機関には、借入によって一時的な資金不足を補うだけでなく、その後どのように収支を改善し、返済を続けていくのかを説明することが重要です。
まとめ:資金繰り表と改善計画を準備して早めに相談する
返済条件の見直しや借換えを実行するうえで、将来の新規融資や金融機関からの信用評価に影響する可能性もあります。相談する際は、現在の資金繰り表、今後の収支見通し、返済可能額、経営改善の方針を整理しておくことが重要です。
これらを自社だけで整理することが難しい場合は、取引金融機関、認定経営革新等支援機関、中小企業活性化協議会、商工会・商工会議所などに早めに相談するとよいでしょう。
- 回答者
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中小企業診断士 鳥井 亮

