トピックス・コラム

中小スーパーの現在 ~Face to Faceで顧客を確保~

2020年 4月 17日

皆さんは小売店の「ショールーミング」化という言葉を聞いたことはありますか。消費者が商品を手にとって品定めして購入する、という小売店本来の姿が、消費者がモノを手にとって品定めするところまででお店から出て行き、実際にはより価格の安い他店——現実問題としてはネットショップで購入する、という現象のことです。街の小売店が商品のショールームと化してしまっているのです。

20年にも及ぶ不況が一段落し、一安心できると思われるこんにちですが、こうした「ショールーミング」化といった消費者の購買動向の変化は、消費嗜好の多様化や少子高齢化・人口減少に伴う購買力の減少に加え、百貨店、家電量販店、書店、洋品店など多くの小売業にとっての厳しい逆風の一つとなっているようです。

そうしたなか、本稿では私たちにとって身近な小売業の業態の一つである「スーパーマーケット」がどのような状況にあるのか、統計類をもとにその現況を確認してみたいと思います。

まず経済産業省の統計(※1)からここ3か年のスーパーマーケットの事業所数の推移を見ていきます。

<図1>

景気の回復期にあったこの3か年の推移を見ると、事業所数、販売額とも順調な動きを見せているといえるでしょう。Eコマース大手と競合することの多い商品群を展開するスーパーマーケットとしては意外と健闘している、と思われるのではないでしょうか。

参考までに、同じ統計から、スーパーマーケットと比較するために、高額商品の取扱いが多く客単価も高い「百貨店」の販売額等の推移を確認しておきます。

<図2>

百貨店では、事業所数は減少し販売額も下降の一途を辿っていることが分かります。このことはある意味で、私たちが購入する日用品や食品雑貨類でお世話になることの多いスーパーマーケットは販売面で安定していることを証明してはいないでしょうか。

ただし、この統計はすべての事業規模(売場面積、従業者数)のスーパーマーケットを対象としています。ここからはさらに掘り下げて、中小規模のスーパーマーケットの現状はどのようになっているのかを見てみましょう。

我が国のスーパーマーケットの業界団体である(一社)全国スーパーマーケット協会、(一社)日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会では、食品を中心に取り扱うスーパーマーケットの売上高や売場面積などについて毎月パネル調査(同一の270社を対象としています)を合同して実施し、速報値と確報値を公表しています。この「スーパーマーケット販売統計調査資料」では地方分類別集計とともに保有店舗数別集計も行っていますので、事業規模別の売上高を掴むのにはより適しているといえます。

そこで本稿では例として、2017年7月、2018年7月、2019年7月の、保有店舗数1店舗以上10店舗以下という、比較的小規模のスーパーマーケットの売上高を抽出してみました。

<図3>

ご覧のとおり、売上高は企業数ともに漸増していることがわかります。小規模(保有店舗数10店舗以下)のスーパーマーケットは、冒頭に記した小売業への逆風が強いとされる中では善戦しているといえるのではないでしょうか。

さて、こうした中小スーパーマーケットの売上高の伸びを維持するには並々ならない経営努力や工夫があるはずです。大規模な設備投資や巨額な広告宣伝費をかけるなどということは中小スーパーマーケットにはけして容易なことではないと思われます。

そこで、株式会社日本政策金融公庫総合研究所の研究(※3)から、スーパーと地域コミュニティに言及したくだりを見てみることにします。

「中小地場スーパーが得意とする販促活動は何か、ということを考えると、結局は地道な『人と人とのコミュニケーション』に尽きるのではないかと思われる。つまり、中小地場スーパーには長年同じ店で勤め続ける店舗スタッフが多く、顧客の一人一人と顔見知りになっている場合が多い。これらのベテランスタッフが、店のこだわりや商品の魅力を自分の言葉で説明でき、適切な品を勧めることができれば、大手が真似できない一番の販促活動になると考えられる。」

つまり成功している中小スーパーマーケットの経営戦略には、必ずしも大規模な設備投資などの資本投下を必要としない、身近で創意に富んだ工夫で、商圏である地域住民を取り込もうという方向性もあるといえるでしょう。一言で「地域密着」といいますが、モノの売買に留まらず、Face to Faceの取組を地道に実践して地域住民に頼られる存在になることは、「ショールーミング」化を避ける一つの方策といえるのではないでしょうか。

本レポートは、情報提供を目的としており、作成日時点で信頼できると思われる情報に基づいて作成しているため、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。