~中小企業経営者は、今の景気をどのように感じているのか~

第142回中小企業景況調査【平成27年10~12月期】

中小企業経営者の設備投資意欲とその背景

2015年10-12月期の中小企業景況調査では、製造業・非製造業・全産業の各業況DIにおいて前期の水準がほぼ維持された。売上額DIは一部業種にこそ伸び悩みが見られるものの、採算DIや資金繰りDIに改善が見られた今期。業種を問わず問題視され続けている人手不足は供給面の停滞を示唆する。この状況について、経営者から寄せられた声を手掛かりに検討する。

1.時系列で見る設備投資動向

今期の全産業の主要DI(前期比季調値)を見ると、業況判断DI▲15.1(前期DIとの差(以下、前期差)0.4ポイント増)、売上額DI▲13.5(前期差▲0.1ポイント減)、資金繰りDI▲12.1(前期差0.9ポイント増)と、大幅に改善した前期の水準を維持している。

資金繰りDIが安定して改善傾向を示す中、人手不足による供給難を補完するための方法として、設備投資が考えられる。

今期の設備投資実績(今期実施あり企業数/今期実施なし企業数)を見ると、全産業17.5%(前期差0.2%増)、製造業22.6%(前期差0.5%増)、建設業17.9%(前期差1.1%減)、卸売業17.6%(前期差1.6%減)、小売業12.2%(前期差0.4ポイント増)、サービス業17.5%(前期差0.8%増)となっている。足元の動きにはバラつきがあるものの、過去10年間の各産業の設備投資の推移はやや増加傾向にある。また、製造業における投資内容の構成比を見ると、10年間継続して50%以上の設備投資実施企業が生産設備に対する投資を行っていることがわかる。

産業別設備投資実施割合の推移
設備投資実施割合(実施企業/回答企業×100)と設備投資実施内容(実施企業/設備投資企業×100)

2.設備投資実績とその背景

今期の調査において、設備投資を実施したと回答した経営者から寄せられたコメントに基づいて、中小企業の設備投資の背景について探っていきたい。

【コメント】

  • 引合いや県外の取引先の開拓により、売上が少しずつ増えてきた。生産が追いつかないので設備投資をして折角のチャンスを活かしたいし、可能性がありそう。(清酒製造業 山口)
  • 技術者の確保はあいかわらず困難だが、設備投資をした事でその分をおぎなっていると思う。従業員の人達の技術アップをはかっていきたい。(木製家具製造業(漆塗りを除く) 沖縄)
  • 新規受注確保する為に今期は補助金での大幅な設備投資をしたが、原価率が上ったとともに、主力受注先からの受注品が海外へ移り、売上げ予定が外れた。別の受注先へ営業活動しているが、コストが非常に厳しく、採算面での課題が出て来た。(他に分類されない生産用機械・同部分品製造業 島根)
  • 最近の業況として大きな変化はないが、先を見据えた設備投資の実施により借入金が増えている状況である。手持ちの工事の契約額も小さく今後の工事受注も未定の為、来期の業況に不安があります。(土木工事業(別掲を除く) 青森)
  • 工場内に設備投資をしたので、しばらくは返済に資金がかかります。年末にむけての人出を期待しますが、年々行事などが簡素化しているのであまり見込みがもてない気もします。(菓子小売業(製造小売) 東京)
  • 経験のあるスタッフの人材確保が難しく感じると同時に賃金引き上げが今秋あったり、設備投資をしたりで予定以上に経費がかかったことが業況を悪くしている。(美容業 福岡)

3.見通し:不足する経営資源をいかに補完するか

この数年間、設備投資を積極的に実施する中小企業が多く存在している。その背景には、受注の増加といった歓迎するべき状況と併せて、人手不足という経営課題が突きつけられている。労働人口が減少するなか、人手不足は今後あらゆる企業が直面する経営課題であり、それを補完するべく、設備投資が実施されていることが確認できる。また、設備投資実施の後には借入金の返済という新たな経営課題への対応に思慮をめぐらせている経営者の姿も示された。

全産業の主要DIに前期の活況が維持される中、それに応えるべく行われる設備投資とその動向は、今、中小企業が抱えている経営上の課題を強く意識させる。

文責

ナレッジアソシエイト 平田博紀

関連記事