コロナ禍が「都道府県×産業」の景況感に与えた変化を見てみよう
製造業の中小企業景況感の都道府県分布
図2では、コロナ前の2019年II期(赤色)、DI値が底になった2020年のII期(黄緑色)、直近の2021年のII期(紫色)を観察する。同四半期を比較することでDI値の季節性の除去ができる。これらに2020年IV期(水色)を加えることでGo To キャンペーン時期の産業と地域への影響も見ることができる。
時計の12時の位置には全国集計値、時計回りに北海道から沖縄の景況水準DI値を示している。破線は各時期の全国のDI値である。各時点の破線と実線を比較することで、各都道府県が全国値よりも高いか低いかを比較できる。中心が-100で、輪が外側に向かう程、DI値は高くなる。図5のサービス業の沖縄県のDI値が24.7で最大値なので、縦軸は-100から25の範囲に揃え、産業間でのDI値の高低を比較できるようにしている。
出所:中小企業基盤整備機構の「中小企業景況調査」より著者作成
まず全国値(破線)を比較してみよう。コロナ禍では、一度目の緊急事態宣言期間中の2020年II期(黄緑色)が中央に位置し、最も景況感が悪化している。半年後の2020年IV期、1年後の2021年II期と、円が外側に位置し時間の経過とともにDI値が高くなり景況感が改善していることが分かる。しかしコロナ前の2019年II期(赤色)の景況感には届いていない。
次に都道府県別の景況感(実線)を見てみよう。2020年II期(黄緑色)は中心に位置し、半年後の2020年IV期(水色)と交わっているのは長野のみで、その他は2020年II期の景況感が最も低い。
2020年IV期(水色)と2021年II期(紫色)を比較すると、広島、香川、高知、長崎、宮崎、沖縄は、2020年IV期が2021年II期よりDI値が高くなっている。その他の都道府県では、全国集計値と同じく時間とともにDI値が改善している。
2021年II期とコロナ前の2019年II期を比較すると、青森、秋田、福島、新潟、山梨、長野はDI値がコロナ前を超えている。しかしその他の都道府県は、コロナ前の景況感の水準に戻っていない。
建設業の中小企業景況感の都道府県分布
図3の建設業は各時点の輪が他の産業と比較して明らかに外側に分布しているのが分かる。破線の全国値を比較すると、2020年IV期のDIが-20.1、2021年II期のDIが-19.3と僅差になっている点が、製造業と異なる。
2019年II期の全国のDI値は-0.8だった。都道府県別では、最小値は青森の-25.7、最大値は東京の21.7で、22都道府県のDI値が正値で景況感がポジティブであった。一転して、2020年II期は全ての都道府県でDI 値が負となり、2020年IV期は46都道府県で景況感はネガティブで、長崎県だけDI値が2.6で正値であった。直近の2021年II期で景況感がコロナ前の平時を上回っているのは、青森、福島、茨城、島根、高知、佐賀で、その中でも福島(4.0)と島根(4.8)は景況感がポジティブだった。また、建設業の特徴として、和歌山、高知、沖縄は2020年II期が底でなかった。
2019年はインバウンドブーム、東京オリンピック開催直前で、コロナ前の東京のDI値は最も高く21.7、次いで宮崎が21.2、沖縄が21.1であった。一方、直近の2021年II期のDI値は、沖縄が最も低く-39.5ポイント、 東京は-35.2ポイントであった。コロナ前に活況だった東京と沖縄は、この2年で厳しい業況になっている。
出所:中小企業基盤整備機構の「中小企業景況調査」より著者作成
小売業の中小企業景況感の都道府県分布
図1より、小売業は他産業と比較してDI値が低い期間が長く、コロナ前から厳しい業況が続いていることが分かった。図4を見て最初に気付くのか、他産業と比較して全ての輪が中心に集まり、DI値が低いことである。全国集計のDI値は2020年II期が最も低く、各都道府県でも、2020年II期が最も低かった。最もDI値が高かったのは2019年II期の沖縄(-3.2)であった。
全国値の2020年IV期のDIが-48.3で2021年II期の-51.0より高くなっているのが、製造業、建設業と異なる点である。31都道府県でGo Toキャンペーン時の2020年IV期が2021年II期DI値より高くなっている。2020年IV期と2021年II期の差を比較すると宮崎が19.6ポイントと最も高く、次いで青森が18.5ポイントであった。コロナ禍の期間にコロナ前の水準よりも景況感が改善したのは、山形、山梨、滋賀、宮崎である。製造業と同じく、4時点でDI値が正値となった都道府県はなかった。
出所:中小企業基盤整備機構の「中小企業景況調査」より著者作成
サービス業の中小企業景況感の都道府県分布
サービス業は5産業の中で2020年II期の全国のDI値が-74.4で最も低かった。全ての都道府県で2020年II期のDI値が最も低い。2020年IV期は-46.1、2021年II期は-47.7で僅差だが、小売業と同じく2020年IV期のDI値が高かった。28都道府県でGo Toキャンペーン時の2020年IV期が2021年II期DI値より高くなっている。2時点を比較すると、石川が22.1ポイントと最も高く、次いで熊本が20.3ポイント、宮崎が18.9ポイントの差があった。
特徴的なのは、コロナ前の沖縄のDI値は24.7で他の産業と比較しても最も高い。前回のコラムでサービス業の飲食業と宿泊業について9地域で同様のレーダーチャートを示した(注2)。沖縄県の2019年II期の飲食業のDI値は42.9、宿泊業は0で9地域の中で最も高かった。第156回調査結果(注4)では、サービス業に占める飲食・宿泊業を営む企業の割合は30.8%である。沖縄県のサービス業の景況感の高さは飲食・宿泊業の影響が大きい。
サービス業は、直近の2021年II期時点で、コロナ前の水準を超える都道府県はなく、その差も大きいのが特徴である。また、他産業と比較して、コロナ前の沖縄を除いて、各時点の輪の凹凸がなだらかであり地域差が少ない。
出所:中小企業基盤整備機構の「中小企業景況調査」より著者作成