ビジネスQ&A

会社法上の子会社・親会社について教えてください。

会社法では、50%超の議決権を1つの会社に握られている会社を子会社、反対に50%超の議決権を握っている会社を親会社という以外にも子会社、親会社となる場合があるようです。どのような場合があるか、教えてください。

回答

形式的に50%超の議決権を有している場合以外にも、実質的に財務および事業の方針の決定を支配しているさまざまな場合に、支配している側の会社が親会社、支配されている側の会社が子会社となります。

会社法では子会社を、「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」と定義しています(第2条第3号)。
また、親会社を「株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」と定義しています(第2条第4号)。

平成26年改正会社法では、「子会社」、「親会社」に加え、「子会社等」、「親会社等」という新たな定義が規定されました(第2条3号の2、第2条4号の2)。「等」の概念には、会社以外の一般社団法人や個人などが含まれます。

以上の定義から分かるとおり、議決権を50%もたれる・もつという関係以外にも、子会社・親会社の関係になる場合というのは、法務省令に定められているということです。

その法務省令とは会社法施行規則で、会社法施行規則では、子会社についての前述の定義のうち、その経営を支配している法人として法務省令で定めるものを、「会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等とする」と規定しています(会社法施行規則第3条第1項)。
ここで言う会社等とは、「会社(外国会社を含む。)、組合(外国における組合に相当するものを含む。)その他これらに準ずる事業体」(会社法施行規則第2条第3項第2号)とされています。
そして、「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」として、ほかの会社などの議決権総数の50%超を有している場合のほか、次の1.または2.の場合を規定しています(会社法施行規則第3条第3項)。

  1. ほかの会社などの議決権の総数の40%以上を有している場合で、次の1)~5)のいずれかの要件を満たす場合
    1. ほかの会社などの議決権総数に対する自己所有等議決権(次の(1)~(3)の議決権の合計数を言います。以下同じ)の割合が50%超である場合
      1. 自己の議決権
      2. 自己と出資、人事、資金、技術、取引などにおいて緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権
      3. 自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権
    2. ほかの会社などの取締役会などの構成員総数に対して自己の役員、執行役員、使用人またはこれらの者であったものの数の占める割合が50%超である場合。
    3. 自己がほかの会社などの重要な財務および事業の方針の決定を支配する契約などが存在する場合。
    4. ほかの会社などの資金調達額の総額に対して自己が行う融資(債務の保証および担保の提供を含みます。以下同じ。)の額の割合が50%超である場合。
      ※この場合の自己が行う融資には、自己と出資、人事、資金、技術、取引などにおいて緊密な関係のある者が行う融資の額を含みます。
    5. そのほか自己がほかの会社などの財務および事業の方針の決定を支配していることが推測される事実が存在する場合。
  2. ほかの会社などの議決権総数に対する自己所有等議決権の割合が50%超である場合に、1.の2)~5)のいずれかの要件に該当する場合。
    2.は重複規定のように思えますが、自己所有「等」議決権の割合といっているところがポイントです。極端な話、自己所有議決権がゼロであっても、前記1)の(2)と(3)の議決権の合計が50%超であれば、「財務および事業の方針の決定を支配している場合」に該当することとなるのです。

以上のように、形式的に議決権の過半数を有している場合以外にも、実質的に支配力が及んでいる会社を幅広く子会社とすることとなっています。
無論、「財務および事業の方針の決定を支配している」側の会社が親会社ということになります(会社法施行規則第3条第2項)。

回答者

税理士・中小企業診断士
野村 幸広