ビジネスQ&A

新卒採用のために中小企業はインターンシップをどのように活用すればよいでしょうか?

2022年 1月 5日

従業員10人の靴下の製造販売を業とする会社を経営しています。長期間新規の採用を控えていたため、従業員の高齢化が進んでいます。将来会社を担う従業員を育成するため、新卒の採用を考えているのですが、学生の応募自体少なく、面接を経て内定を出しても、大企業の内定が出たからといって辞退されてしまいます。どうすれば新卒人材を確保できるでしょうか。

回答

実践的なインターンシップを積極的に活用し、学生に「この会社で働きたい」という気持ちを持ってもらうことが考えられます。

少子高齢化が進み、新卒人口が減少していることなどから新卒の採用に苦戦している中小企業は少なくありません。また、学生が大企業を志向する傾向があることから、大企業の内定を得た学生が中小企業の内定を辞退することもしばしば起こりえます。

とはいえ、近年学生が就職する企業を決める際に重視する要素のなかには、「自らが成長できる」・「働きやすい人間関係がある」など、中小企業が学生に積極的にアピールできるものもあります。これらの要素を学生に伝える方法の一つとしてインターンシップがあります。

【大企業のインターンシップとの差別化】

インターンシップ自体は大企業でも行われています。ところが、大企業で行われているインターンシップは実質的には大人数の学生を相手に1日で行う企業説明会の延長のようなものが少なくありません。このような形式でインターンシップが行われるのは、大企業を希望する学生が多数にわたることなどによるものですが、これでは学生が企業の具体的な活動について、具体的なイメージを持ったり、企業の従業員と一定の関係性を構築したりするのは容易ではありません。

これに対し、中小企業が行うインターンシップでは、より具体的・実践的な内容を提供することで差別化を図ることが可能です。

【差別化を図ることのできるインターンシップの例】

例えば、現在企業が抱える課題のうちのいくつかについて、ある程度の期間(1週間から1か月程度)を設けて学生に解決策を検討し、提案してもらうという内容のインターンシップを行うことが考えられます。そして、課題の解決策の検討を行う際は、学生と従業員でグループを作って議論してもらうのです。

企業の課題の解決策を提案するためには、当該企業の事業内容等を十分に理解しなければなりません。しかし、当然のことながら学生は企業の現状等は全くわかりません。そこで、グループのなかに入った従業員は、学生に対し、学生の疑問に答える形で丁寧に企業の現状などを説明したり、議論の整理を行ったりするのです。

このような過程を経て、学生は企業の活動を深く理解していき、そして課題の解決策の提案という『結果』を作り出すことができれば、学生は「自分がこの企業で働くことで成長できるのではないか。」と実感することができるのです。また、グループ内で解決策を検討するという『共同作業』を通じて学生と従業員との関係性も構築していくことができ、学生も「よい人間関係の下で働けるのではないか。」と実感することもできるのではないでしょうか。

そして、企業の側もこの検討の過程を通じて学生の適性や協調性などを見ることができるうえ、このインターンシップで学生によって提案された企業の課題の解決策は、新たな視点が含まれており今後の企業の運営の際に参考になることも十分にありえます。

また、上記のようなインターンシップであれば、ある程度の手間や時間はかかるかもしれませんが、費用はそれほどかからないのではないでしょうか。

中小企業だからこそできる策を講じることによって、大企業に負けない採用戦略を展開していきたいものです。

回答者

中小企業診断士 武田 宗久

同じテーマの記事