ビジネスQ&A

高年齢者雇用の制度化支援について教えてください。

当社は創業35年、従業員数67名の呉服卸・小売業です。社員が高齢化していますが、ベテラン社員には定年後も引き続き働いて欲しいと考えています。しかし、景気の低迷などがあり将来見通しが立たないため、制度化について悩んでいます。相談した友人から、高年齢者雇用専門のアドバイザーがいるので相談するようにアドバイスされましたが、どのような専門家で、どこに相談すれば良いのですか?

回答

お近くの高齢・障害者雇用支援センターへ連絡してみてください。無料でアドバイザーの派遣が受けられます。高齢者雇用問題に精通した経営・労務コンサルタント、中小企業診断士、社会保険労務士等がアドバイザーに認定されています。

【高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部改正】

平成25年度から、公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられます。これを受けて平成24年8月に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律」(以下、改正高齢法)が成立し、平成25年4月から施行されることになりました。

具体的には、公的年金支給引上げに合わせて、段階的に(平成25年4月から12年間の経過措置を設けて)65歳まで希望者全員の雇用制度の導入が事業主に義務づけられました。60歳定年であっても、従業員が希望した場合には雇用の継続を維持しなければならなくなります。

また、義務違反の企業に対しては、「高年齢者雇用確保措置義務に関する勧告に従わない企業名を公表する」という罰則が規定されています。

【小売業における高年齢者雇用】

呉服店にとって、高齢のベテラン社員が有する専門的知識、業務ノウハウ、接客・接遇スキルは競争力の源泉です。伝統や文化を扱っている呉服店にとって、そうした高齢ベテラン社員の専門能力や販売力を後輩社員へ承継していく仕組みを構築することが、事業の維持・発展には欠かせません。さらに、スキルの承継に加えて、定年を理由に重要な人材を失うことなく、意欲のあるベテラン社員を戦略的に活用することが重要です。

一方で、高年齢者雇用には、健康面や安全面のケアも考慮した職場環境作りが求められます。また、定年を理由にした賃金低下によるモチベーションの低下等の問題もみられますので、年齢ではなく目標の達成度に応じた処遇ができるような評価制度の導入等が必要になるかもしれません。企業によっては、高年齢者の職域開発が必要になることもあります。

高年齢者雇用に関して知見のある社員がいれば、社内だけで対応が可能だと思いますが、中小企業ではそのような人材がいないケースが多いのではないでしょうか。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、高齢者雇用問題に精通した経営・労務コンサルタント、中小企業診断士、社会保険労務士等を高年齢者雇用アドバイザー・70歳雇用支援アドバイザーとして認定し、全国に配置しています。

【高年齢者雇用アドバイザー・70歳雇用支援アドバイザーの活用】

高齢者が能力を発揮して働くことができる環境を実現するためには、(1)人事管理制度の見直し、(2)職業能力の開発及び向上、(3)職域開発・職場改善等、さまざまな条件整備が必要になります。

高年齢者雇用アドバイザー・70歳雇用支援アドバイザーは、高年齢者雇用に関する条件整備のため、企業のニーズや実情に即した専門的、実践的な相談・援助を行っています。

また、健康管理診断システム、雇用管理診断システム、職場改善診断システム、教育訓練診断システム、人件費・賃金分析診断システム、仕事能力把握ツール等の診断システムを用いて高齢者を活用するための課題を分析し、無料で解決策をアドバイスします。

今後、段階的に希望者全員雇用の年齢が引き上げられることにともなって、企業にはさまざまな課題が出てくることが考えられます。その時、無料で相談にのってもらえる高年齢者雇用アドバイザー・70歳雇用支援アドバイザーを活用することをお勧めします。

関連情報に示す高齢・障害者雇用支援センターの各都道府県支部に連絡すると無料でアドバイザーの派遣が受けられます。派遣までの流れは、下記の図1をご参照ください。

高年齢者雇用アドバイザー派遣の流れ 高年齢者雇用アドバイザー派遣の流れ
図1 高年齢者雇用アドバイザー派遣の流れ
回答者

中小企業診断士 石井 浩一

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