ビジネスQ&A

月次決算の考え方と導入方法について教えてください。

地方スーパーの後継者です。経営計画の策定には注力するものの、作成後の管理が甘く、大きな成果を挙げられずにいます。会計士の先生からは、月次決算の導入を勧められました。月次決算の効果及び導入方法について、ご説明をお願いします。

回答

経営計画はPDCAサイクルのP(Plan)に位置づけられますが、経営活動を行った後のC(Check)は月次決算で行うことが鉄則です。月次決算の効果、導入方法及び業績改善への役立て方について、以下でご説明します。

図1 PDCAサイクル 図1 PDCAサイクル
図1 PDCAサイクル

【月次決算とは?】

月次決算とは、経営管理に有効な情報を提供するために、事業年度末に行う月次決算とは別に、毎月の営業成績や財政状態を明らかにするために毎月行う決算のことです。

税法や会社法などの法律に基づく決算は、年1回行えば十分ですが、決算期が終わってから業績を知っても後の祭りです。そうならないためには、年度途中で業績がどのような状況にあるかを知らなければなりません。そのための仕組みが月次決算制度です。

【月次決算の効果】

1.経営者が数字から会社の現状を把握できる

月次決算を毎月実施することにより、これまでは経験と勘で経営を行ってきた経営者が、判断材料となる生きた数字を月次決算からつかみ、どのように手を打てばよいかがわかるようになります。

2.月次予算と対比することで、経営者に気づきを与える

経営ビジョンを具体化した経営計画を作成後に月次決算を導入すると、毎月の年度予算と月次決算書を対比することで、目標を達成できているか、またその原因は何かなどが明確になり、次に打つべき手立てが見えてきます。

3.銀行と有利に交渉できるようになる

銀行に融資を申し込むと、必ず過去3期分程度の決算書と直近の月次決算書の提出を求められます。ある程度の精度を伴った月次決算書を持っていれば、融資交渉を有利に進めることができます。また逆に、月次決算書を提出できなかった場合は、信用が低下することになります。

4.決算対策が容易になる

年次決算は、正確な月次決算を12回行った結果です。正確な月次決算を毎月積み重ねることで、決算の数ヵ月前からかなりの精度で決算の着地点を予想することができます。したがって、赤字が出ていた場合は、決算を黒字にするためにどこに焦点を当てて経営を見直していくべきか、対策を立てることができます。

【月次決算の導入】

1.適時・正確な記帳体制

まずは、適時・正確に記帳する体制を築くことが求められます。販売・回収や仕入・支払、経費・生産などの動きを適時に記帳する積み重ねにより、自社の経営状態を正しく把握することができるようになります。また自社で月次決算を行うには、会計システムを導入して自らの手で経理処理を行えるようにしておくことも重要なポイントです。

2.月次決算早期化のための仕組みづくり

(1)月次決算の確定日を決め、関係者全員でこれを共有する、(2)勘定科目ごとにその発生額や残高明細の担当者を決める、(3)仕訳データを分散入力できる情報システムを導入する、といった仕組みを社内に作ります。

3.概算計上

会社全体の経営判断に使う数字ならある程度の概算で良いと割り切り、概算計上を取り入れます。大きな金額差異がなければ、請求書の到着を待たずに概算数値で経費の未払計上をする、月末在庫の金額は予定原価率を用いて計上するなどにより、スピード化を図ることができます。

4.原価償却費等の月次ベース計上

車両、機械装置、建物などの原価償却費は1年分をまとめて期末に計上しますが、その金額が多く、月次決算の精度に影響するような場合には、原価償却費の年間見積額の12分の1ずつを毎月の月次決算で計上しておきます。これと同様の理由で、賞与、引当金、租税公課、消費税、労働保険料などを月次で未払計上しておくことも推奨されます。

【月次決算を業績改善に役立てる】

1.3つのポイントから業績改善のヒントをつかむ

業績を改善するためのポイントは以下の3つです。

  • 売上高を増やす
  • 限界利益率を上げる
  • 固定費を減らす

この3つのポイントの変化を月次決算できちんと把握し、「なぜだろう?」と問いかけていれば、業績改善のヒントを見つけられるはずです。

2.月次決算をベースにした業績管理の実践

月次決算で入手した最新の経営数値を読める(業績検討)、使える(管理会計)、話せる(外部報告)、見通せる(経営計画)ようになった会社は、間違いなく金融機関から評価され、会社の信用力がアップします。

なお、「経営者保証に関するガイドライン」における経営者信用保証を不要とする要件の1つには、「経営の透明性確保=月次決算」が掲げられています。

回答者

中小企業診断士
林 隆男

同じテーマの記事