経営ハンドブック

シニア採用

シニアが気持ちよく働ける環境の整備が定着につながる

少子高齢化が進み、人口が減少するなかでいかに労働力を確保し続けるか、これは日本社会の大きな課題であり、人手不足に悩む企業にとっては死活問題だ。これまで定年とされてきた60歳以上の人口が増え、60歳以下の人口が減る傾向が将来にわたって続くとの予想から、2013年4月施行の改正高年齢者雇用安定法により、(1)定年を65歳まで延長、(2)65歳までの継続雇用制度導入、(3)定年制の廃止、のいずれかを選択することがすべての企業に義務付けられた。

中小企業庁が2016年12月にまとめた「中小企業・小規模事業者の人材確保・定着等に関する調査」によると、60歳以上の就業者が働きやすいと回答した就業先の取り組みとして、(1)時間外労働の削減・休暇制度の利用促進、(2)成果や業務内容に応じた人事評価、(3)作業負担の軽減や業務上の安全確保の徹底、が上位に挙がっている。つまりこの3点は、シニアが気持ちよく働くためのポイントといえよう。そのためには、次のような具体的配慮が必要となる。

シニア活用における具体的な配慮

  1. プロ人材のモチベーションに配慮する
  2. 「労働時間の調整を重視するシニアワーカー」には労働時間と業務量に配慮する
  3. シニア内でのスムーズな世代交代に配慮する

コストを掛けるか掛けないか、マッチングを重視するかしないか

1.プロ人材のモチベーションに配慮する

「働くシニア」の実態は様々だが、大きく見て、2つのタイプに分けられる。1つは、現役時代に培った技術やノウハウにプライドを持っており、それを生かしたいと考える「プロ人材」タイプ。彼らをプロとして扱い、任せる仕事や評価をコントロールしてモチベーションを保つような対応が重要だ。大企業の例ではあるが、JFEスチールでは「テクニカルエキスパート」、ある企業では「コーポレートフェロー」という認証制度を取り入れて、部署や若手の指導に当たらせている。

制度や職制の新設に際しては、定期的に評価を行って賃金に反映させるか、もしくは一時金として支払うようにすると、モチベーションの維持・向上につながる。評価制度や肩書、実際に任せる仕事内容を工夫して、やりがいを感じてもらったり、他人から必要とされていると実感したりできるようにと、本人のプライドを考慮した対応が必要だ。

2.「労働時間の調整を重視するシニアワーカー」には労働時間と業務量に配慮する

「働くシニア」のもう1つのタイプは「労働時間の調整を重視するシニアワーカー」といえる。60代のシニアならまだ両親が健在であることも多く、親の介護のための時間が必要となる。ほかにも、共働き子供夫婦に生まれた孫の面倒を見たり、ボランティアや地域活動を引き受けたりする人もいる。あるいは、職場の仕事はある種の社会参加であったり、健康増進のためだったりと割り切っている人もいる。そんな彼らには、労働時間や業務量に対する配慮が欠かせない。

大企業の対応例では週に1日休みを増やし、仕事とは別のことに打ち込める制度を導入したケースがある。別の小売業では、定年後の再雇用に、フルタイムと短時間勤務など複数のコースを用意した。

注意点としては、業務量に対して多めの人員を確保すること。1日の勤務時間が短くなったり休日が多くなったりすることへの対応であることが第一。同時に、元気なシニアでも、年を重ねていく中で、急に体力が衰えて働けなくなる場合への備えでもある。

3.シニア内でのスムーズな世代交代に配慮する

前述の改正高年齢者雇用安定法は、年金受給開始年齢が65歳に引き上げられることに対応する措置でもあった。しかしこの先、年金受給開始年齢が70歳、あるいは75歳になるとも囁かれている。すなわち、企業のシニア活用が65歳までを想定したものであれば、すぐに行き詰まってしまう。

そこで大切なのがシニア内での世代交代。2.で述べたように急に体力が衰えたといった場合に備えて、60歳後半になったら、60歳の人に仕事を教えるといったスムーズな引き継ぎを行える体制が望ましい。

また、シニア世代の労働者が増えることへの注意点として、労災に注意し自己申告だけに頼らないこと、トイレ時間に配慮し休憩時間を長めにとること、社内文書や掲示に小さい文字を控えることなどの配慮が大切だ。