経営ハンドブック

新卒採用

新卒採用のコツは、学生からの「共感力」

労働人口が年々減少する中、人手不足が深刻化している。大企業に比べて採用活動に割ける人的・資金的資源が乏しい中小企業は新卒採用で苦戦しがちだ。一方で、就職倍率が数十倍~数百倍に達するほど学生が殺到する中小企業もある。その明暗を分ける大きなポイントの1つは、自社の強みや理念、特色を、「学生目線」で情報発信し、学生の共感を引きだすことだ。採用段階で学生の理解を得られれば、応募者を増やすだけでなく、採用後にギャップを感じて離職する社員を減らす効果も期待できる。

新卒採用の3つのコツ

  1. 自社の企業理念や強み、特色を見極める
  2. 共感を呼ぶ「学生目線」での情報発信
  3. 採用チャンネルの多様化

1.自社の企業理念や強み、特色を見極める

採用が不得意な中小企業に共通する課題は、自社を差別化できないことだ。ある私立大学の担当者が「自社の長所を聞かれると、判で押したように『アットホームな雰囲気』と答える中小企業が多い」と語るように、情報発信する側が、他社と差別化できるような自社の強みや特色、企業理念をきちんと整理できていないことが多い。

「学生は、企業側が考えるほど社名だけで就職先を選んでいない。入社後にどんな仕事をし、何ができるようになるかを重視している」(電子系の専門学校)という意見もある。やる気のある学生ほど、将来のために自分がそこで何を習得できるのかを真剣に考えている。例えば、老舗企業の伝統の味や技術、地域経済を支える基盤産業やニッチでも競争力のある工業技術など、社員として将来自分が何を学び、担っていくのか、その企業の持つ魅力を明確に伝える必要がある。

2.共感を呼ぶ「学生目線」での情報発信

経営者が考える強みが、必ずしも学生の共感を得るとは限らない。何が会社の魅力となり、どう伝えたら学生に響くのか。それを一番よく理解しているのは社員だ。自社のどこに魅力を感じて入社したのか、若手社員であれば「今の学生がどういった情報を求めているのか」というのもよくわかる。彼らが感じる会社の魅力を飾らずに伝えられれば、情報の信頼性が増し、学生への説得力も高まる。

いいところだけでなく、会社の中にあるマイナス面も誠実に伝えていく必要がある。学生が重視する給与や休暇、各種手当などの情報も積極的に開示し、透明性を高めることが重要だ。もちろん大企業と同様とはいかなくとも、制度として改善できる点は取り組み、学生にアピールできる点をつくっていく努力は欠かせない。

絶対にやってはいけないのは、嘘や誇張を盛り込むことだ。実態と異なる情報発信で関心を集めても、事実が分かったときに信頼を失うばかりか、厳しい批判にさらされる。インターネットでの情報交換が当たり前の時代で、ささいな誇張が招くリスクは想像以上に大きい。また、せっかく入社しても「話が違う」と離職の要因になりかねず、結局は良い人材の採用には結びつかないことを肝に銘じておきたい。

3.採用チャンネルの多様化

就活支援サイトや中小企業に特化した就職説明会やセミナーなどの活用に加え、先述したように自社のホームページやSNSなどを使って学生の共感を呼ぶような、効果的な情報発信に積極的に取り組みたい。また、地元の学校や自治体などと連携して、地域の産業や企業への理解や関わりを深めるような教育プログラムやインターンシップを設けるなどして、早期から学生への接点を増やし、理解や関心を高める努力も欠かせない。

【事例】若手社員の継続的なブログ更新で応募者が激増

東京、江東区にある老舗菓子店の船橋屋は、若手社員に任せて地道な情報発信を続けた結果、2015年に5人の新卒採用枠に1万6625人の学生が応募した。

船橋屋は入社4年目の若手社員を抜擢してブログやFacebookを任せ、3年間休まず継続的に情報を発信し、応募者数を飛躍的に伸ばした。社内で担当者が必死にネタを集め、社員紹介、地域や会社のイベントなどのコンテンツを投稿していった。様々なコンテンツを投稿する中で、学生が注目するのは会社や商品の説明ではなく、「若手社員の入社の動機」「日々の仕事」「休日の過ごし方な」などと分かり、それに合わせた投稿や企画を増やしていったという。渡辺雅司社長は一切、内容に関する指示や事前チェックせず、担当者の目線での発信を徹底したことが学生の共感を呼んだことは間違いない。