経営ハンドブック

コスト削減の仕方

「細分化」「単位化」でムダ・ムラ・ムリをあぶり出す

企業経営では、売り上げを伸ばす一方で、原価や経費などのコスト削減もしていかなければならない。材料費や人件費の値上がりをそのまま価格に転嫁することは難しいし、不況期に入っても生き残れるように財務体質を改善しておく必要がある。ここでは、中小企業のコスト削減のポイントを解説する。

財務体質を改善するコスト削減3つのポイント

  1. ABC(活動基準原価計算)でコストを把握する
  2. 「ダラリの法則」でコスト削減対象を見つけ出す
  3. コスト削減に伴う士気低下に注意する

1.ABC(活動基準原価計算)でコストを把握する

企業がコスト削減を考えるとき、その前提条件は、「どの業務に、どの程度のコストがかかっているのか」「そのコストは適正であるか」を明らかにすることだ。コストの把握と管理を行うための手法の1つに「ABC」がある。これは「Activity-Based Costing」の頭文字を取ったもので、日本語では「活動基準原価計算」という。

基本的な考え方は、個々の業務内容を細かく分類して、それぞれを遂行するために必要な人材や時間、コストを導き出す。これによって、不透明だった業務単位のコストが数値として表れ、それを基に効率的なコスト管理ができるというわけだ。

コールセンター業務を例に取ると、業務は「電話待ち」「電話応対」「受注表作成」「在庫確認」「クレーム処理」と分類できる。このうち、「受注表作成」についてABCで調べると年間15万円かかっており、業務の詳細を見ると1分当たりの人件費が100円、作業にかかる時間が30分、年間の作成枚数が50枚だった。そこで、ウェブサイトのFAQ(よくある質問)を充実させて通話時間が少なくなるようにしたり、受注表のフォーマットを見直して作業時間や作成枚数を減らしたりするといった工夫によってコストを抑えられることが分かる。

実際の企業活動は営業、製造、販売など広範にわたる。すべての活動にABCを導入すると、頓挫してしまうことがある。業務を細分化してコストを算出するのは手間がかかるためだ。

従って、目標達成のために必要な分野から着手することが大切になる。ABC導入の推進に当たっては、現場に加えて総務部・経理部・人事部などから人選し、プロジェクトチーム(メンバーはリーダー、分析担当者など)を編成して臨むことも重要になる。

2.「ダラリの法則」でコスト削減対象を見つけ出す。

現場でコストダウンを実践するには、「ムダ」「ムラ」「ムリ」を見つけ出して改善していくことがポイントとなる。ここでいう「ムダ」「ムラ」「ムリ」は次のように定義できる。

ムダ

時間や労力、経費などを本来必要のないものに利用している状態

ムラ

ムダとムリがばらつきながら発生している状態

ムリ

目標達成に必要な時間や労力、経費などが不足している状態

この3つの語尾を取って、「ダラリの法則」と覚えておくといいだろう。この視点を意識して、現場を見直すと、改善ポイントが見えてくるはずだ。

顕在化した「ムダ」「ムラ」「ムリ」を解消するには、「止める」「減らす」「変える」の3つで考える。販売管理費のコストダウンを例に説明しよう。

「止める」とは、対象となる業務活動などの費用の発生要因となる活動自体を止めること。例えば、新聞図書費であれば「雑誌の購入を止める」などを検討する。「減らす」とは「止める」ことのできない業務活動などについて、その回数などを「減らす」こと。例えば、会議は重要な経営活動であり、ゼロにはできない。しかし、毎週の会議を隔週に「減らす」ことで会議開催に伴う支出費用は削減できる。そして、「変える」は、よりコストのかからない方法などに「変える」こと。例えば、地代家賃の場合は「より安い物件に借り換えを行う」ことが考えられる。

3.コスト削減に伴う士気低下に注意する

運転資金の負担を軽減するためには、売掛債権(売掛金)と同様、仕入債務(買掛金)についても管理し、支払期間を適正化する必要がある。

現状を改善するためのコスト削減には、多少なりとも痛みが伴うものだ。そのため、現場レベルで不平不満が生じることは容易に想像できるし、モチベーションが下がってしまうことも起こり得る。

従って、強権的に一律のコスト削減を行うことは得策でなく、また各部門におけるコスト削減で生じる負荷の均一化にも目を配る必要がある。「自部門だけが無理を強いられている」といった不満を生じさせないためだ。

コスト削減に当たって、財務諸表(特に損益計算書)や事業計画の数値を「細分化」「事業部単位化」「月次単位化」し、実績数値を出して従業員にも実態を把握してもらうのも有効な手だ。こうした数値の裏付けを踏まえて、コスト削減を一緒に進めていくことが可能になる。

経営者は従業員に対して、設定目標は公平であり、その目標には根拠があることを数値で示して納得するまで説明することが求められる。