2.カーボンニュートラルにする方法
(1) エネルギー起源のCO2削減が必要
2018年度の我が国の温室効果ガス総排出量は、約12.4億トンCO2 でした。「エネルギー起源のCO2 排出量」は10.6億トンと温室効果ガス総排出量の85%を占めていました。(図1) 「エネルギー起源のCO2」とは、発電、運輸、および産業、家庭での加熱など、化石燃料をエネルギー源として使用する際に発生する二酸化炭素です。
(注1)エネルギー起源でないCO2には、セメント製造の際に原料の石灰石から発生するCO2などがあります。
したがって、温室効果ガス排出量を減らすには、エネルギー起源のCO2を減らす必要があります。
CO2発生源を非電力分野と電力分野に分け、CO2削減の方策を整理すると図2のようになります。
電力分野は電力会社等による発電に関することですので、ここでは民生、産業、運輸を含む非電力分野について考えます。
(2) さらなる省エネルギー
省エネルギーは、いわゆる「節約」だけではありません。代表的な省エネルギー対策である、蛍光灯等からLED照明への変更、流量調整方法としてのバルブからインバーターへの変更、およびヒートポンプを使用した廃熱回収などは数十%のエネルギー削減効果があります。
そのような省エネルギー効果の大きい手法は、公的機関(省エネルギーセンター、一部の自治体)による省エネ診断を受診することで的確に抽出できます。
カーボンニュートラルのための設備投資に関しては、経済産業省や環境省の補助金交付事業があります。経済産業省の事業は令和3年度に構成が大きく変わっている(「オーダーメイド事業」の創設など)ので内容を確認されるとよいでしょう。⇒参考(1)
電気や燃料の現在の使用量、また、省エネルギーによる削減効果をCO2の量に換算するには、環境省が公表している「温室効果ガス排出量の算定方法」を参考にしてください。省エネ診断では、ほとんどの場合、報告書にCO2の量も記載しています。
(3) 再生可能エネルギーの利用
再生可能エネルギーには、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどがあります。
太陽光、風力などのように、再生可能エネルギーは電気に変換して使用するのが使いやすく現実的となります。そのような脱炭素化された電力を使用するのが一つの方法です。
最も着手しやすい太陽光発電については、太陽光発電協会のサイトを参考にしてください。太陽光発電による電気は、まずは自家消費が第一の選択肢でしょうが、電気を売る場合には、2022年度から従来の固定価格買取制度に加え市場連動型の制度が加わるのでご注意ください。⇒参考(2)
自社の事業所で発電し、消費する以外に次の方法があります。
①再生可能エネルギーで発電した電気を小売電気事業者から購入する。⇒参考(3)
②グリーン電力証書やJ-クレジットなど、再生可能エネルギーの環境価値を購入する。
以上は電気に関することですが、工場や大型ビルでは化石燃料を熱の用途で大量に使用しているところがあります。そうしたところでは中期的に「合成メタン」への置き換えなどが考えられます。合成メタンは、CO2と水素を反応させて製造します。合成の段階でCO2を取り込んでいるため、合成メタンを燃焼して出るCO2と相殺され、CO2排出ゼロとみなされます。
(4) 吸収、除去
減らしきれないCO2に対して、図2で植林、DACCS,BECCSを挙げています。
このうち、植林については、林業に関係しない事業者にとっては、植林をする森林所有者等が創出するJ-クレジットを購入することが現実的です。
DACCSは、大気中にすでに存在するCO2 を直接回収して貯留する技術、BECCSはバイオマス燃料の使用時に排出されたCO2を回収して地中に貯留する技術です。いずれも実用化後であっても、個々の事業者が実施するのではなく、大規模な事業体が実施し、国全体の正味排出量ゼロに寄与することになると思われます。
(5) グリーン成長戦略の14分野
再生可能エネルギーの利用には様々な障害があります。太陽光、風力など自然エネルギーによる発電は電力の変動が大きく、系統電力に接続された一部地域では、電力需要の減ったときに自然エネルギーの発電を中止する事態も生じています。そこで注目されるのが水素です。水素は貯蔵、運搬ができるため、再生可能エネルギーで発電した電気で水を電気分解し、水素を発生させ、貯蔵、運搬すれば、都合の良い時間と場所で水素を使用できます。⇒参考(4)
水素のほかにカーボンニュートラル実現のために取組が不可欠な分野があります。政府はそれらを「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」として図3に示す14分野を挙げ、各分野を選定した理由や開発すべき課題や目標とする市場規模、コストなどを示しています。(3) で述べた合成メタンも11番の分野に含まれています。
図3からわかるように、この14分野は幅広い業種を含んでいます。いずれかの分野にかかわることにより新たなビジネスチャンスを見出す可能性もありますので、その進展を今後も注視するのがよいでしょう。⇒参考(5)