ビジネスQ&A

なぜ今Pマークの取得が求められているのでしょうか?

2023年 6月 7日

近年、プライバシーマークの取得を条件とする入札案件が増えた気がします。なぜ今Pマークの取得が求められているのでしょうか? 取得を検討する上でのポイントや注意事項についても教えてください。

回答

Pマーク制度は、個人情報を適切に扱っている事業者を認定する制度です。情報漏洩の事故が後を立たない中、2022年には改正個人情報保護法が施行されるなど、今改めて個人情報保護への意識が高まっています。中小企業においても必要に応じて取得しておけば、ビジネスの拡大に役立つ可能性もありそうです。

個人情報保護意識が高まる中、Pマーク取得で信用の拡大も

2022年4月より改正個人情報保護法が施行されました。この改正は、社会・経済情勢の変化を踏まえて3年ごとに見直しを図るとした同法に基づくものですが、改正内容は個人の権利保護の強化などを目的に、事業者側の責務が追加され、違反に対する罰則も厳罰化されています。取り扱う個人情報が5000件を超えない事業者は適用外といういわゆる「5000件要件」は、ご存知のとおり2015年の改正時に撤廃されていますから、今や規模を問わず、あらゆる事業者は個人情報を適正に取り扱う必要があるといえます。

このように個人情報への意識が高まる中、改めて注目されているのがプライバシーマーク(Pマーク)制度です。Pマークは、日本産業規格(JIS)の一つである「JIS Q 15001:個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に従い、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)を確立して個人情報を適切に扱っていることを、第三者機関に認定された事業者だけが使用できます。Pマークを取得すれば、個人情報の適正取り扱い事業者であるということを対外的に示すことができるわけです。

Pマークの取得によるメリットは、取引先の信用拡大、顧客の信用拡大、社員の意識向上などが挙げられます。また、昨今ではPマークの保持を条件とした案件も少なくないため、ビジネスチャンスの拡大あるいは損失抑止といった効果も期待できるでしょう。一方で、取得時および2年ごとの更新時にも事業規模に応じた費用(下図参照)がかかり、取得の準備と社員教育などにもそれなりの時間とリソースが必要になります。取得ありきで考えるのではなく、各社の業態や業務などに応じた適切な判断が求められるでしょう。ただし、Pマークの取得には一般的に半年程度の時間がかかります。取得したいと思った時にすぐ取得できるわけではないということを踏まえた上での検討が必要といえそうです。

Pマークの事業規模別取得・更新費用(税込み)

Pマークの取得事業者が多いのは「情報」を取り扱う業種

Pマークの取得を検討するにあたっては、現在の日本企業のPマーク取得状況が一つの目安になると思います。付与事業者である日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の「プライバシーマーク付与事業者情報」によれば、1998年の制度スタート以降、付与事業者数は毎年増加。2022年9月末時点での総数は1万7222社に上り、直近10年間でも4147社増加していることが分かります。

業種別(大分類)付与事業者数

注目すべきは「業種別(大分類)の付与事業者数」で、全体の実に4分の3以上を「サービス業」(1万3158件)が占めている点。「業種(中分類)」を見ると、サービス業の中でも「情報サービス・調査業」が半数以上の7076件となっています。また、「業種別(大分類)の付与事業者数」において「サービス業」に次いで多い「製造業」(1436件)では、そのうちの1215件という圧倒的多数を「出版・印刷・同関連産業」が占めています。こうしたことから「情報」を扱う事業者には、その必要性や価値を認識されている認証制度であると考えられそうです。

実際、Pマークの取得をビジネスの拡大につなげたという企業も少なくありません。JIPDECのウェブサイトにPマーク取得事業者のインタビュー記事が多数掲載されていますから、そちらも参考にされるといいでしょう。ただし、Pマークはあくまで個人情報の保護や管理に関する部分的な認証システムです。組織の各種活動を管理するISOのマネジメントシステム規格などと比べると、経営に与える影響は限定的になるケースが多いので、その点をきちんと理解した上でご検討ください。

自力取得のハードルは高いが、外注の場合は力量の差にも注意

Pマークの取得手段に関しては、大きく分けると自力での取得と外部コンサルタントへの依頼という2つの方法が考えられます。自力で取得する方が初期投資費用は抑えられますが、仮にPMSの知識をほとんど持ち合わせていない場合、ゼロから勉強して取得するにはそれなりの時間を要すると思います。その間の人件費などを考えれば、自力取得が必ずしも低負担な選択とは限りません。また、結果的に取得できないというリスクについても考慮する必要があるでしょう。

一方の外部コンサルタントに依頼する場合、ある程度のまとまった初期投資は必要になりますが、全く知識がなくても取得に必要な業務を全てフォローしてくれるコンサルタントも多いです。ただ、コンサルタントにも力量の差があり、この差によって会社側の負担も変わってきます。多くの選択肢の中から業種別の実績などもよく調べた上で、自社の業界への知識や理解のある適任者を選べるかがポイントです。

昨今、個人情報への意識が高まっているのは事実で、Pマークの取得をビジネスの拡大につなげている企業もいます。ただ、日本にはPマークの他にも多くの認証制度があり、その中から自社のビジネスに必要なものを的確に選び取る力が経営者には求められているといえそうです。そして、認証の取得を決めた後は、その導入過程において従業員の意識改革などをリードすること。取得後は、かけたコスト分の改善効果を得るための取り組みに力を入れることで、その効果はより大きなものになると思います。

同じテーマの記事