ビジネスQ&A

改正民法における中小企業への影響はありますか?

創業10年のプレス金型業です。民法が改正されたと聞きましたが、改正されたことによる中小企業への影響はどのようなことが考えられますか?

回答

120年ぶりに改正されたのは、民法の財産法における債権に関する部分です。
中小企業に影響が出る部分は消滅時効、保証、法定利率と考えられます。ビジネス慣習が変わるため、基本的な改正内容を把握し必要な対応を行う必要があります。

2017年5月に改正債権法が成立しました。改正のポイントは(1)判例の明文化、(2)用語の平易化、(3)現実の社会・経済変化への対応、(4)国際的取引ルールとの整合、です。ビジネス上においては、以下の3点が重要な項目と考えられます。

【消滅時効の変更点】

消滅時効とは、一定期間の経過により債権などが消滅する制度で、改正前は一般的債権の時効は10年ですが、職業別に期間が違っていました。それが改正によって原則は「権利を行使できることを知ったとき(主観的起算点)から5年」、「権利を行使できるとき(客観的起算点)から10年」(ただし、人の生命・身体に対する損害賠償は20年)となります。しかし企業の債権請求においては主観的起算点と客観的起算点が一致するため、実質的に債務履行時期から5年となります。

【法定利率の変更点】

改正前は、利息を生ずべき債権については別段の意思表示がないときは年率5%とされています。しかしながら現在の市中金利はそこまで高くなく、乖離が生じています。そのため、改正後は年3%、以後3年ごとに利率の見直しを行うこととなりました。ただし、法定利率が変更されても契約した利率が変更されるわけではないので、注意が必要です。

【連帯保証に関する契約条項】

ビジネス上の契約において、契約相手の社長など個人を連帯保証人にする場合は、(1)契約書において責任限度額を定めること(限度額を定めていない連帯保証条項は無効となる)こと、(2)継続取引などの根保証契約においては、主債務者から連帯保証人への情報提供(財産及び収支、主債務以外に負担している債務について、担保提供状況に過失があった場合、連帯保証人は連帯保証契約を取り消すことが可能)、(3)債権者から連帯保証人への情報提供(連帯保証人から債権者への問い合わせに対する回答、期限の利益を喪失した場合の債権者から連帯保証人への通知)、が義務化されました。そのため、連帯保証に関する契約事項が無効になる、連帯保証人に請求ができず債権回収が困難になる、など大きなリスクが考えられます。

上記を含めた改正債券法は、3年以内の政令で定める日(平成32年4月以前)に施行されます。今回の改正により、知識がなければ自社に不利益な契約を締結してしまう危険性もあるため、施行までに社内で勉強会を開く、契約書のひな型などを変更しておく、与信管理の運用ルールを変更する、など対応していく必要があります。

回答者

中小企業診断士
小野寺 義明

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