よくわかる食品衛生管理の基本とポイント

第2回 最低限ふまえておきたい衛生管理のルール

おいしさを語る前に食品は「安全」でなければなりません。安全とは食品をつくるための土台です。安全な食品を日々製造することで消費者から信頼を得られ、その信頼によって消費者にも安心感が生まれます。

「特別企画 食品衛生管理の基本とポイント」では、安全な食品製造に不可欠な衛生管理の基本とそのポイントをわかりやすく説明します。

食品工場において「安全」という土台をしっかりさせるためには、食品危害を防ぐルールを設定し、それを従業員に徹底する必要があります。以下ではそのルールについて最低限必要なものを説明します。

1.服装規定

服装規定で一番重要となるのは個人の衛生です。毎日洗髪するという簡単なルールを決めるだけでも毛髪混入のリスクは低減されます。

毎日洗髪する、毎日ブラッシングする、作業着はファスナー、ポケットのないもの、ピアス、ネックレス、指輪などは身につけない等のルールを決めます。このルールは従業員のみならず仕入れ業者、見学者も同様とします。

2.手洗い

手洗いは衛生管理の基本中の基本です。手洗いを完璧にするためには、従業員の意識はもちろんのこと手洗い設備を十分に整備することも必要です。

手洗い設備は手洗い専用のものが必要です。手洗いしたとき、その洗い水が食品や資材にかからないことが必要となります。また、できれば手を触れることがなく水を出して手洗いできる設備が望まれます。洗剤を手に取ってから水で洗い流すまでの間に殺菌効果を出すためには30秒以上必要とします(手洗い30秒ルール)。手洗いの手順を手洗い場に貼っておきましょう。手を洗わない従業員には繰り返して指導を行います。

3.工場入室

作業着は毎日洗濯したものに着替えることが基本です。作業着の下に着けるものについて、毛糸などを使ったものは厳禁です。マスカラやつけまつ毛など、食品に混入する恐れのあるものも禁止します。

工場内に入る前には、毛髪や異物の混入を防止するために粘着ローラーを使用します。背中は自身でローラー掛けするのは難しいので、作業者同士がペアとなって互いの背中を掛けるとよいでしょう。その後、体調、手指のけが、爪の伸び具合などをチェック・記録して入室します。私物の持ち込みなども禁止します。

4.工場内

従業員に対して工場内でやってはいけないことを教育します。作業台に腰かけたり、腰かけて物を食べないなどの注意事項を列挙して厳守させます。また、製品・資材などを床に直置きしない、床に落ちているものを拾ったときなどは手袋を交換する、手を洗うなどの基本を指導します。

作業所のドアノブ、冷蔵庫の取手、機械のスイッチなどが汚れていると、工場の広い範囲で汚染が広がるため常に清潔にしておく必要があります。

5.物理的危害防止

異物混入のクレームで一番多いのが物理的危害によるものです。物理的危害の中でも特に人的危害の高いのがガラス、金属、石・砂などです。

【ガラス】

ガラス製の備品は、工場内への持ち込みを禁止します。また、検査機器などでもガラス製のものは持ち込み禁止です。

【金属】

従業員の身につけている装飾品(ネックレス、指輪、時計など)は持ち込み禁止です。金属異物となる事務用品(カッターの刃、ゼムクリップ、ホチキスなど)の持ち込みも禁止です。

【石・砂等】

石や砂は外部から入る可能性があります。従業員の靴や段ボールなどに付着して入ってきます。段ボールに入った原材料は予備室などではずしてバットに入れ替えてから工場内へ搬入しましょう。

6.化学的危害防止

化学的危害は一度発生すると事故の範囲が広がる恐れがあります。よって厳重な管理が必要となってきます。工場内で使用する化学的薬品は置き場所を明確に区分する必要があります。工場内に殺虫剤は置かないようにします。

また、化学薬品は毎日の受払を記しておくことが必要です。

7.ペスト(有害生物)

工場内の隅にクモの巣が張ってあったり、ハエが飛んでいるのを見かけることがあります。このような状況では作業を続けないという教育が必要です。工場内にペスト(有害生物)が侵入する隙間があれば必ず修理する必要があります。また、ペストの餌となる食品残さは作業終了後一切残さないことが重要です。

<食品工場で最低限必要な衛生管理ルール>

(高橋順一 コンサルティング・オフィス高橋 代表/中小企業診断士)