製品不具合によるクレームへの対応
発生した機械トラブルへの対応
「業務繁忙の時」や「業務上の必要がある時」といった単純な理由では、延長が認められないことに注意してください。
2.割増賃金率適用猶予の終了
2010年に施行された改正労働基準法により、時間外労働に対する割増率が変更されました。しかし、資金力に乏しく、対応の難しい中小企業には猶予期間が設けられ、変更された割増率の適用を受けていたのは大企業のみでした。猶予期間である2023年3月31日までの時間外労働や深夜労働、休日労働に対する割増賃金は、以下の表の通りです。
上記表の「中小企業を除く」とされている部分は、2023年3月31日まで中小企業に対して適用猶予となっていました。しかし、猶予期間の過ぎた現在は、企業規模を問わず、月60時間超の法定時間外労働に対する割増率が適用されています。
(1)なぜ猶予されていた?
猶予されていた中小企業は、次の表に該当する企業です。
上記表に該当するような中小企業では、5割の割増率を改正法施行後直後に適用したとしても、対応は難しく、最悪人件費の高騰による倒産という事態にも発展しかねません。そのため、中小企業は適用を猶予され、当面の間は大企業のみ5割の割増率の適用を受けることになりました。猶予期間の間に人件費の削減等の対策を講じ、支払い体制を整えるための時間が与えられたことになります。しかし、その猶予期間も既に終了してしまったため、中小企業といえども対応しなければなりません。
3.割増賃金の目的
そもそも割増賃金が何のために設けられている制度なのか、疑問に思っている方もいるかも知れません。割増賃金は、時間外労働に対して通常の賃金に上乗せされた割増賃金の支払いを使用者に義務付けています。これは、割増賃金による経済的負担を課すことによる時間外労働の抑制が目的です。
つまり、「割増賃金を支払いたくなければ、労働時間を削減しろ」が制度趣旨となります。「割増賃金を支払えば長時間労働させても良い」などと安易に考えずに、非効率な作業の洗い出しなどを行い、労働時間の削減を目指しましょう。
4.割増賃金未払いによるトラブル
従業員が退職後に未払い残業代の支払いを求め、内容証明郵便を送ってくることも珍しくありません。また、企業が支払いに応じなければ、訴訟を提起する場合もあるでしょう。残業代の未払いで訴訟を提起されたとあっては、企業の信用低下にも繋がりかねません。良好な労使関係を築くためにも、正確な賃金支払いを心掛けましょう。
また、従業員が残業代の未払いについて労働基準監督署に相談や通報を行うこともあるでしょう。通報に基づいて、企業に対して調査が行われる場合もあり、事実が認められれば是正指導も行われます。2022年度における労働基準監督署による未払い残業代の是正指導は、約65億円の規模にもなり、対象となった企業は1,069社にも上ります。労働基準監督署による是正指導は、決して他人事というわけではありません。
(1)割増賃金未払いには罰則も
割増賃金の未払いには、労働基準法第119条1項により、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される恐れがあります。未払いがあったからといって、直ちに罰則が科されるわけではありませんが、注意する必要があるでしょう。
また、従業員が労働基準監督署に対し、割増賃金の未払いについて、通報したことを理由として減給や降格など不利益な取扱いをすることは禁止されています。当然解雇などは許されず、もし通報を理由として解雇すれば、不当解雇として訴訟を提起される恐れもあります。
5.対応は急務
猶予期間が終了したことにより、中小企業でも新たな割増率への対応が必要となりました。賃金は従業員の生活に直結する労働条件であり、その未払いや支払いの遅延は、労使紛争の火種となりやすくなっています。
また、労働に対して適正な賃金の支払いを受けられないのであれば、従業員の企業に対するエンゲージメントも低下し、離職にも繋がってしまいます。少子高齢化の進む我が国において、労働力の確保は喫緊の課題であり、企業自らが労働力を失う原因を作ることがあってはなりません。
当記事では、中小企業にも適用となった月60時間超の割増賃金率について解説を行ってきました。当記事を参考として、割増賃金に関する正確な知識を身に着け、未払いなどの起きない良好な労使関係を築きましょう。