境界標の調査又は境界に関する測量
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときの枝の切取り
(改正後民法209条より抜粋)
「隣地を使用することができる」とあるとおり、隣地使用権が明確に規定され、さらに、隣人の承諾も得なくてよいことが明確になりました。ただし、無断で隣地を使用していいわけではなく、「あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない」と規定されています。
つまり、通知さえすれば、これに対する隣人の承諾は必要ではありません。あらかじめ通知することが困難なときも、「使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる」と規定されています。
4.ライフラインを自社の敷地に引き込むため、隣地を使用するしかない場合
公道に接しない袋地(他の土地に囲まれていて、直接、公道に出られない土地のこと)等に社屋を構えている会社もあると思います。その様な会社が、電気、ガス、水道と言ったライフラインを敷地内に引き込むためには、囲繞地(いにょうち。袋地を取り囲む土地のこと)のいずれかの土地を使わせてもらうしかありません。従来は、いずれかの土地の所有者と契約を締結したうえで、使用料などを支払う形を取っていました。
ところが、囲繞地の所有者に拒絶されたり、理不尽な要求を突き付けられたりして、ライフラインの引き込みができなかったり、大きく迂回しなければならないと言った不便な事態も生じていました。驚いたことに、令和の今日に至るまで、民法には、このような場合のライフラインの引き込みに関する規定が置かれていませんでした。
そこで、改正法では、袋地等の土地にライフラインを引き込むために、他の土地に導管を埋設したり、空中に電線などを引き込むことができる旨が明確に規定されました。新設された条文では、電気、ガス、水道などの「継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。」と規定されています(改正後民法213条の2)。
では、この場合に、他の土地の所有者等の承諾は必要なのでしょうか? この点についても、「あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない」とあるだけです。つまり、通知さえしておけばよく、これに対する他の土地の所有者等の承諾は必要ないことになっています。
もっとも、無制限に他の土地を使用できるわけではありません。設備の設置又は使用の場所及び方法は、「他の土地等のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。」とされています。例えば、その土地の真ん中を横断するような形で、導管を埋設するようなことは認められないでしょう。一般的には土地の片隅を使用させてもらうことになります。
また、「その土地の損害に対して償金を支払わなければならない。」と定められています。ややこしい表現ですが、償金とは、従来の使用料などのことです。つまり、土地を使用させてもらうことに対する使用料を支払わなければならない。という意味です。なお、償金の支払いは、1年ごとでよいとされています。
もちろん、この規定ができたからと言って、一方的に隣地を使用していいわけではありません。償金の支払いについては、隣地所有者と交渉が必要ですから、改正前と大きく変わるわけではありません。ただ、ライフライン設備設置のために隣地を使用できる権利が明確になったことで、交渉がしやすくなったとは言えるでしょう。
5.ライフライン引き込みのために使用できる土地が限定される場合
公道に接しない袋地等の所有者は、上記のように、他の土地にライフライン設備を設置する権利を有していますが、そのような袋地等が生じた原因によっては、ライフライン設置権を行使できる土地が限定されることがあります。例えば、次の様な事例で考えてみましょう。
D土地、A土地、E土地が並んでおり、それぞれの土地は、直接、公道からライフライン設備を引き込むことができる状態にありました。ところが、A土地が、B土地とC土地に分筆されたうえで、それぞれ別の所有者に売られました(登記簿上の土地は、一筆、二筆と数えます。分筆とは、一つの土地を二つ以上に分けることです)。
その結果、C土地の所有者が、ライフライン設備を引き込むには、他の土地を使用しなければならない状態になったとしましょう。このような場合は、C土地の所有者が、ライフライン設備引き込みのために使用できる土地は、B土地に限られることになります(改正後民法213条の3)。
最初からこのような状態であれば、D土地、B土地、E土地のいずれを使用してもよいことになりますが、この事例では、A土地の分筆が原因でC土地が生じたわけですから、隣のD土地やE土地の所有者に迷惑をかけてはならないということになります。また、C土地の所有者は、ライフライン設備引き込みのために、B土地を使用しても、B土地の所有者に対して、償金(使用料)を支払う必要がありません。B土地を購入する人は、そのような負担があることを承知のうえで購入する必要があるということです。
ライフライン設置権は、改正民法によって新設された権利です。もし、あなたの会社が公道に接しない袋地等の敷地に社屋を有しているなら、隣地の権利関係を確認したうえで、ライフライン設置権を行使するようにしてください。