2026年 8月 5日
2025年度税制改正において、法人税に対する新たな付加税として「防衛特別法人税」が創設されました。防衛力の抜本的強化に必要な財源を確保することを目的としており、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用が始まります。
「中小企業には関係ない」と受け止めている経営者・実務担当者も少なくありませんが、申告義務への対応が求められるほか、業績によっては課税対象となるケースもあります。本稿では、制度の概要とともに、中小企業が特に留意すべき実務上のポイントを解説します。
1.防衛特別法人税とは?計算方法と適用開始時期
防衛特別法人税は、各事業年度の基準法人税額から500万円を控除した金額に対して、4%の税率を乗じて算出する付加税です。計算式は以下のとおりです。
防衛特別法人税=(基準法人税額 - 500万円)× 4%
たとえば、基準法人税額が800万円であった場合、控除後の課税対象額は300万円となり、防衛特別法人税額は12万円となります。一方、基準法人税額が500万円以下の法人については、控除後の課税対象額がゼロとなるため、実質的な税負担は生じません。
なお、本税は法人税そのものの税率を引き上げるものではなく、基準法人税額を課税標準として別途課税する「付加税方式」を採用している点が特徴です。既存の地方法人税と同様の仕組みと理解するとわかりやすいです。
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項目 |
内容 |
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適用開始 |
2026年4月1日以後に開始する事業年度 |
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税率 |
4% |
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課税方式 |
基準法人税額への付加税方式 |
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基礎控除 |
年500万円 |
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主な課税対象 |
基準法人税額が500万円を超える法人 |
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申告義務 |
税額ゼロの場合も原則として申告書の提出が必要 |
2.防衛特別法人税は中小企業にも関係するのか
基礎控除として500万円が設けられていることから、基準法人税額が500万円以下の中小企業については、防衛特別法人税額は発生しません。中小企業の多くはこの範囲に収まると考えられ、直接的な税負担増とならないケースも少なくありません。
しかし、「今期は基準法人税額が500万円以下だから関係ない」と安易に判断することは危険です。以下のような場合には、想定外に基準法人税額が500万円を超えるケースがあります。
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受注増・売上好転により当期利益が大幅に増加した場合
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不動産・株式等の売却による特別利益が発生した場合
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繰越欠損金が解消され、課税所得が急増した場合
特に業績が回復傾向にある企業や、資産売却を予定している企業については、決算前の早い段階で税額の見込み試算を行うことが重要です。顧問税理士と連携のうえ、本税の課税対象となるかどうかをあらかじめ確認しておくことをお勧めします。
3.税額ゼロでも申告が必要な点に注意
税額が発生しない場合であっても、原則として申告書の提出義務は免除されません。いわゆる「ゼロ申告」への対応が必要となる点に注意が必要です。申告対応の漏れや誤りは、加算税・延滞税の対象となる可能性もあるため、早期の準備が求められます。
実務上は、以下の点を顧問税理士と早めに確認しておくことをお勧めします。
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今期の基準法人税額見込みの試算と防衛特別法人税額の確認
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申告書様式の変更への対応
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使用している会計ソフト・税務申告システムが本税に対応しているかどうかの確認
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中間申告・予定納税スケジュールへの影響確認
4.防衛特別法人税が資金繰り・経営計画に与える影響
基準法人税額が500万円を超える企業においては、防衛特別法人税の実際の負担が生じます。税率4%は一見小さく見えますが、利益水準の高い企業では無視できない影響となります。たとえば、基準法人税額が1,000万円の企業では防衛特別法人税額は20万円、2,000万円では60万円、3,000万円では100万円と、利益水準に応じて負担額は拡大します。
納税額の増加は直接的にキャッシュフローに影響します。設備投資計画や役員・従業員賞与の設計においても、本税の影響を織り込んだ試算を決算前に行い、資金繰り計画に反映しておくことが望まれます。また、複数の法人を有する企業グループにおいては、グループ各社ごとに基準法人税額および防衛特別法人税額を個別に算定する必要がある点も留意が必要です。
5.中小企業が確認すべき実務対応
政府は2027年度以降も防衛関係費の増額方針を維持しており、防衛特別法人税は中長期的に継続される見通しです。現時点では税率4%・基礎控除500万円という設計ですが、財源確保の状況次第では、今後の改正において税率や控除額が見直される可能性も否定できません。
中小企業においても、本税を一時的な制度変更として捉えるのではなく、恒常的な税負担として中長期の経営計画に組み込んでおくことが賢明です。「当社には関係ない」と判断する前に、まず顧問税理士に今期の税額見込みを確認し、申告対応の準備を早めに進めることをお勧めします。本税を前提とした税負担管理が、今後の企業経営における重要な視点となるでしょう。
税制改正の内容・申告手続きに関する一般的な問い合わせは、最寄りの税務署または国税庁「税についての相談窓口」を利用するとよいでしょう。
※本稿の記載内容は、2025年度税制改正大綱および関連法令に基づいたものです。施行後の政令・通達等により詳細が変更される場合があるため、最新情報は国税庁の公表資料をご確認ください。
監修
青葉総合税理士法人
代表・税理士 丸山 真司




