ビジネスQ&A

事業再構築にあたり、マーケティング上の注意点は何でしょうか。

2022年 2月 4日

飲食店向けの厨房機器の部品製造を手掛けてきましたが、コロナ禍もあり、主力の大型厨房機器向け部品の注文は減少傾向です。今後に向け、新しい分野への進出を図りたく、事業再構築補助金の利用も考えています。事業の構想を考えるうえで気をつけるべきことがあれば教えてください。

回答

事業を軌道に乗せるためには、補助金採択ありきではなくマーケティングの基本をしっかり押さえて新事業を考える必要があります。外部環境の変化を踏まえた中長期的な視点で市場を捉えるとともに、自社の強みを活かしつつ新しい取組に挑戦することが求められます。

補助金を取ることばかりに意識が向くと、新事業を構想するプロセスが手薄になりがちです。目先の具体的な引き合いにばかり目が向いたり、新しさはあっても自社の強みとの関連性が薄い飛び地の市場を目指してしまったり、実現性は高くても新規性があまりない既存事業の延長になってしまったりすると事業の成功確率を下げる結果になります。「再構築」と呼べる内容の事業を考える上では以下のようなことに気を付ける必要があります。

①自社の把握

1. 自社の経営理念・ビジョンを明確に

新事業を構想し実現するためは、それが自社にとって本当にやりたい事業であることが必要です。経営理念・ビジョンに照らして、取り組む意義が見出せる事業になっているか確認しましょう。単に儲かりそうだから、というだけでは困難を乗り越えて事業を推進する力に欠け、結果を出すまでに至らないことが多々あります。

2. 既存事業の現状把握をしっかりと

既存事業に投入されている経営資源(人・物・金)の状況を確認し、配分が適切かチェックしましょう。環境変化を受けて余剰や不足が発生しているはずなので、新事業の立ち上げを通じて調整していく視点が重要です。適切な現状把握により既存事業から新事業への重心移動を円滑に進めることができます。

3. 自社の強みの源泉を見つける

既存事業を継続するなかで培われた自社の強みの根幹を明確にしましょう。他社と違うところは何か、他社にはできないことは何かを考察し、その優位性が発揮できている原因をつかむことが大切です。新事業の構想にあたっては、強みが生かせる市場・製品分野へ進出を図ることが基本となります。

②市場の把握

4. どのような環境変化に対応するために新事業をするのか明確に

中長期的な安定成長を実現するためには、既存事業の注文の減少や新しい引き合い増加の背後でどのような市場の変化が起きているのかつかむことが重要です。直近の需要変動だけに目を奪われることなく、3年~5年先を見越した大きな市場の変化を踏まえた事業構想になっているか確認しましょう。

5. 市場ニーズにつき情報を集め、ターゲットを絞る

コロナ禍を経て発生している多種多様な「困りごと」はニーズを捉えるヒントになります。ニーズの存在を裏付ける情報(ニュースや統計、調査発表など)を収集し、想定市場の成長性や規模の根拠を明確にしておくことが望ましいです。さらに自社が対象とする範囲はどこなのか絞り込みを行いましょう。定量的に市場規模が想定できると新事業の計画も立てやすくなります。

6. 新しい競合先となり得る相手をよく調べる

新領域に進出することになるので、競合先の想定と、競合に勝てる理由の想定は入念に行いましょう。自社が先駆けて進出する市場であっても、後から他社が参入してくる可能性もあります。また、自社が参入しやすい市場ほど他社の参入障壁も低い傾向があるため、異業種からの思わぬ参入の可能性と対応策も検討しておく必要があります。

③課題解決への挑戦

7. 新しいこと難しいことに挑戦する

既存市場での拡販に比べると新市場への進出は難易度が高いと言われます。しかし、事業再構築を目指すからには、ある程度の困難は覚悟して臨むべきでしょう。既存領域に思い切った改革のメスを入れたり、未知の領域で経験のない取組が必要になったり、事業再構築にはスクラップ&ビルドの痛みが伴うこともあります。時にはM&Aを含めた事業再編など、思い切った手法が必要になる場合もあります。いずれにしても、容易には解決できない課題に挑戦する姿勢が求められると言えるでしょう。

回答者

中小企業診断士 橋本 良一