経営ハンドブック

従業員のロイヤルティを高めるには

社員自ら会社に愛着をもてるような仕組みと工夫を取り入れる

ロイヤルティ(loyalty)とは忠誠や忠義の意味。企業と従業員の関係でいえば、愛社精神や忠誠心に当たる。従業員のロイヤルティが高まれば、仕事に積極的になり、作業効率が上がり、離職率も低くなるなど、多方面で好影響が出てくる。大げさに考える必要はなく「会社を好きになってもらう」「愛着を持ってもらう」ことだと捉えれば施策もイメージしやすいだろう。

では、具体的にどうすれば従業員のロイヤルティを高められるのか。当然ながら、上からのお仕着せの施策では、従業員のロイヤルティは高まらない。従業員たちが自然に会社に愛着を持てるような仕組みや工夫を取り入れていく姿勢が大切である。主なポイントは次の通りだ。

従業員のロイヤルティを高めるポイント

  1. 企業の理念や沿革、強みを共有する
  2. 経営陣・幹部と従業員との絆を強くする
  3. 人事評価は結果だけでなくプロセスも重視する

人の魅力や絆を強調する

1.企業の理念や沿革、強みを共有する

創業間もない企業の場合、企業理念や事業に込めた創業者の熱意などが従業員全員に伝わっており、社業が順調でありさえすればロイヤルティは高まりやすい。しかし、長い期間を経て経営者も代替わりすれば、企業の歴史が風化する。理念から生まれた社内制度やルールも形骸化しがちだ。

そこで、改めて全社員に理念の浸透を図ることが重要になる。「理念」として掲げられた文言だけを表面的に伝えるのではなく、理念に込められた意味やエピソード、創業当時の苦労話・成功話などと共に伝えられる機会をつくるとよい。理念研修だけでなく、幹部社員・ベテラン社員と若手社員をつなぐような懇親会なども有効だ。社内報などを通じて、自社の技術・サービスにかけた想い、社会に対する貢献、過去の従業員の功績などを紹介したりするのもよい。

会社の目指すべき方向性を「中期経営計画」などのかたちでまとめるプロジェクトチームを立ち上げて、経営陣ではなく、従業員主導で進めさせる方法もある。会社について真剣に考え、愛着を生むきっかけになるからだ。同様に「知的資産経営報告書」の作成も有効だ。知的資産とは、目に見えない自社の強みの源泉である。その知的資産を棚卸しし、未来に向かって活用する方針をまとめる知的資産経営報告書を作成することで、社員が自社の強みを理解するきっかけにもなる。これも経営幹部や一部の部署だけで作成するのではなく、複数部門の従業員を巻き込むことが有効である。

2.経営陣・幹部と従業員との絆を強くする

ロイヤルティを大きく左右する要素として、経営陣・幹部社員と従業員の関係性がある。「自分を認めてくれない」「正しく評価してくれない」「相談しにくい」「そもそも話す機会が少ない」といった日常的な不満が関係性の悪化につながり、ロイヤルティが低下してしまうケースは少なくない。面談の機会を増やすだけでなく、社内行事やレクリエーションなどを通じてややプライベートなコミュニケーションの機会を持つことが有効である。

東京都中央区に本社を置く建設資材卸売企業では、全女性社員をホテルのパーティ会場に招待し、社長と全役員が正装でもてなすという催しを、年1回開いている。普段は命令系統のトップにいる社長がホストに徹し、社内では出てこない一面を見せることで、女性社員の会社に対する好感度が上がるという。

名古屋で350年の歴史を持つ鉄鋼・機械商社では、年2回、社長と役員がお寺に行き、物故社員の法要を行っている。それも、遺族を招待し、一般家庭ではほとんど行われない五十回忌まで続けるという徹底ぶり。ロイヤルティ対策で始めたわけではないが、高齢社員を中心に、自然と会社への忠誠心が強くなるという。

3.人事評価は結果だけでなくプロセスも重視する

人事評価では、目標達成度などの結果だけでなく、そこまでのプロセスを見ることが重要だ。結果を評価するだけでは、なぜその結果に至ったのか(どんな行動がよかったのか、あるいは悪かったのか)がわからない。結果に至るまでのプロセスでどんな行動が求められるのか、という評価軸を取り入れることで、その社員の育成に役立てることができる。

プロセス評価を取り入れること自体が、上司と部下のコミュニケーション向上にもつながる。そもそもプロセスを評価するには、上司が個々の従業員の仕事ぶりを日常的にチェックしたり、こまめな対話とフィードバックの機会を持つことが必要になるからだ。努力や取り組み姿勢を評価し、働きぶりをきちんと見ていると伝えることも重要だ。これによって、評価の納得性が高まり、会社に対するロイヤルティ向上につながる。