経営ハンドブック

経営者のリーダーシップ

リーダーシップの概念や理想像をまず定めよう

学問としての「リーダーシップ論」については、独の社会学者マックス・ヴェーバーによる「リーダー(権威)の3パターン」が起源とされる。

(1)カリスマ的権威…超自然的な能力によって人を服従させる権威
(2)家長的(伝統的)権威…血脈、伝統、しきたりなどから生まれる権威
(3)官僚的(合理的)権威…組織構造や規則・手順などに従って生まれる権威

まずは、自分がなりたいリーダー像、なれるリーダー像はどれか。まずはそれを決めるのが先決だ。すべての場面や相手に万能なリーダー像はない。同時に、自身の性格や能力との相性が悪いリーダー像も長続きしない。どんなリーダーを目指すかを考える際に、「相性の悪い人材は必ず出る」ということを理解して進めたい。

多くの日本の中小企業において、「社長の器以上に会社は成長しない」と言われる一方で、社長に魅力があれば、多少、業務負荷が大きかったり、待遇がいまいちだったりしても社員はついていく。取引先や関係先との関係も良好に進む。人間力という点で見た場合、中小企業経営者の1つの典型として、次の要素を併せ持つリーダー像が出てくる。

1つの典型として中小企業経営者が持っているべき資質

  1. 「感謝」と「社員をたてる心」を持ち、表明できる
  2. 自分自身の「心の柱」を持っている
  3. 精神的に安定している

1.「感謝」と「社員をたてる心」を持ち、表明できる

社員やパートの一人ひとりに対して心からの感謝の念を抱き、それを言葉や行動で示すリーダーは好かれやすい。顔を合わせたら自分から挨拶をする、「いつもありがとう」と社内ですれ違う際や、飲み会などの場で声に出して伝える。記念日などを覚えていて声をかけたり手紙を書いたりする、といったことが具体的な行動の例になる。

「使ってやっている」という考え方が態度に現れると、従業員と対立関係に陥りやすい。どんな場面でも、自分の部下や秘書に対して不遜な物言いや振る舞いをしない。良い成果は部下の手柄にして、悪い結果は自分の責任と捉える。

また、従業員は、経営者の普段の生活にも敏感だ。会社の利益を給与や福利厚生などで従業員に還元せず、豪邸に住んだりお金のかかる趣味を持ったりなどに経営者が会社のお金を使っているようでは、誰もついてこない。

経営者には、指揮命令の際に必要以上に叱ったり、根本的なダメ出しをして仕事を突き返したりするような行動を取ってしまうタイプがいるのも確かだ。どうしても自分を変えることができないのであれば、「私は相手を好き嫌いで選ぶ」「仕事ができる人しか雇わない」と割り切って宣言してしまう。そして、このスタイルに付いてこられる従業員だけで経営したほうがよい結果を生むだろう。

2.自分自身の「心の柱」を持っている

「自分はどう考えるか」の視点を大切にできている経営者の発言は一貫性が増すため、従業員からの信頼を得やすい。「ドラッカーは、〇〇と言っている」「よその会社では●●している」といった他者の基準を常に引き合いに出すのは、自分自身の考えとは言えない。

心の柱を築くためには読書が有効だ。毎日読書する時間を確保し、古典でも名経営者の自伝でも、最新のビジネス書でも、興味のある本を読んで自分の中に取り入れたい。ほかにも、経営者や学者など、分野を問わずに様々な人の話を聞き、自分なりに取捨選択をすることだ。それらの組み合わせでしっかりとした柱が築かれる頃には、自分自身のものになったといえる。

3.精神的に安定している

突発的に怒ったり、不安になったりする人は、部下からすると次の行動が読みづらく、心を開いて接しにくい。それが自分の上司・雇い主であればなおさらだ。

それでも、従業員のミスなどに対してまったく怒らないように制御することは難しい。そこで、ある出来事が起こった場合、頭の中にとっさに浮かんだことがあっても、すぐに言葉や行動に表わさず、納得できる考えが浮かぶまで沈黙を続ける。このトレーニングを続けることで、無駄に信頼を損なうことなく、精神の安定性が鍛えられる。