女性に特徴的な悩み(開業後に苦労していること)に「家事や育児、介護との両立」(16.2%)があり、男性(7.2%)に比べて9ポイント高くなっています。なお、女性起業家が家事(育児・介護を含む)に充てる時間は「2~4時間未満」(31.5%)が最も多く、次いで「1~2時間未満」(23.9%)です。一方、男性起業家では「1時間未満」(39.8%)、「1~2時間未満」(26.3%)に続き「携わっていない」も女性の8.5%より12ポイント近く高い20.2%となっています。
開業前に管理職や経営の経験がある女性は男性に比べて少なく、開業後に苦労したこととして「財務・税務・法務に関する知識の不足」(27.7%)を挙げる人の割合が男性の22.7%に比べてやや高くなっています。
これらの統計資料と、筆者が約20年にわたり女性の開業相談を受けてきた経験から、女性が無理なく開業できて、開業後も着実に成長していくための注意点やアドバイスをお伝えします。
2.「小さく始める」ためのサービスが増えている
「開業時に大きな借金をしたくない」と考える女性は多いです。近年、特に2020年以降は「小さな開業」をサポートするサービスが増え、大きな投資をしなくても副業レベルからの開業が容易になってきました。「ヒト・モノ・カネ」と呼ばれる経営資源ごとに「小さく始める」ためのアイデアを紹介します。
(1)「ヒト」=多様な働き方に対応しよう
開業当初は売上が不安定になりがちです。最初からフルタイムでスタッフを雇うと、固定費としての人件費が重くのしかかります。まずは自分自身で、または家族とスタートして、売上の伸びに応じてスタッフを増やしていきましょう。
女性スタッフを雇う場合は、在宅勤務や短時間勤務など多様な働き方に対応することで、フルタイムの出勤が難しい女性人材を獲得しやすくなります。また、経理やwebマーケティングなどの専門的な業務については、専門知識を持つ人に副業としてお願いするのもひとつの方法です。
(2)「モノ」=シェアリングサービスを活用しよう
最近は地方でもシェアオフィスやコワーキングスペースが増えているほか、オンライン会議ツールの普及もあり、自宅でパソコン1台からでも起業できるようになりました。
しかし女性の場合、会社登記やwebサイトなどで自宅を公開したくないという人の声も多く聞かれます。その場合は住所登記ができるレンタルオフィスや、郵便物を転送してくれるバーチャルオフィスを検討してみましょう。
店舗を構えて開業する場合、初期投資が大きくなりがちです。飲食の場合はシェアキッチン、習い事の場合はレンタルスタジオなどで小規模に事業を始めて、サービスや経営のスタイルが固まってきた段階で本格的に店舗を構える人が増えてきています。
(3)「カネ」=融資が主流だが、クラウドファンディングも検討しよう
開業資金や運転資金については、自己資金と金融機関からの融資で賄う人が大半です。ほかには制度融資と呼ばれる自治内の融資制度や、女性の開業であれば日本政策金融公庫の特別利率の融資制度「女性、若者/シニア起業家支援資金」(*1)もおすすめです。
また、社会的課題の解決や地域おこしなど応援者が集まりやすい新事業であれば、クラウドファンディングで資金の一部を調達する例も増えているので検討してみましょう。
このほか、「カネ」で重要なことをひとつ。女性は家計を任されていることが多く、なかには家計と事業のお金の管理が一緒になっている人がいます。開業時に銀行やカードの口座を分けるなど、家計と事業の資金管理はきちんと分離しましょう。
3.女性が事業を伸ばしていくために必要なこと
開業後の女性を数年間フォローしていると、着実に事業が伸びていく人と、いわゆる「扶養の範囲内」で小さい事業のまま留まる人がいます。着実に事業が伸びていく女性経営者に共通する特徴は以下のものがあります。
(1)家族や親族の協力体制ができている
女性の場合、家族や親族の理解や応援は非常に大切です。最初は「開業を応援するよ」と言っていた家族も、いざ開業してみると「(今まで通り家事をこなしてくれるのであれば)開業を応援するよ」という意味だった、ということが少なくありません。
特に事業が軌道に乗るまでは、事業のことだけに精一杯になりがちです。家族と具体的に家事を分担する、外部化できるものはプロに任せるなど事前によく話し合いましょう。また「売上目標が達成できたら家族旅行に行く!」など、事業の目標を家族と共有することで協力が得られやすくなる場合もあります。
(2)ネットワークが広く、自分のブランディングができている
特にBtoC(消費者向け)ビジネスやサービス業の場合は、女性経営者個人の信用やブランドによって「顔の見える範囲」の顧客がつくことが非常に多いです。個人のSNSやホームページでの情報発信は顧客獲得の重要なツールになります。
とはいえ、「積極的なセルフブランディングや売り込みは恥ずかしい」と感じる人も多いのが実情です。まずは「自分は事業において何を大事にしているのか」「何が特徴的なのか」が伝わるような情報発信を心がけましょう。
商圏となる地域内のネットワークはもちろんですが、同業者同士のネットワークも広げておくと、仕事を融通してもらえたり、逆にこちらが忙しいときに協力してもらえたりします。
(3)経営について勉強や相談をする機会が多い
冒頭の統計にもあったとおり、「財務・税務・法務」など経営に関する知識の不足を感じている女性は多いようです。事業規模が大きくなり動かす資金やスタッフが増えるほど戸惑うことが多くなります。そのような場合、無料の公的窓口などを活用して経営について学んだり相談したりする機会をつくるとよいでしょう。
ほとんどの自治体や商工会・商工会議所には無料の開業相談窓口があり、開業に向けたセミナーも開催しています。最近はオンラインのセミナーが多いのですが、開業前であればリアル開催のセミナーをおすすめします。開業後にセミナー受講者同士が「同期」として励まし合っている姿をよく見かけるからです。
開業後も、都道府県ごとの支援機関や「よろず支援拠点」など、無料で相談できる公的機関を利用するとよいでしょう。オンラインや電話相談にも対応しているところも多くあります。成長の段階で課題を感じたら気軽に相談してみてください。
<参考文献>