「在庫」は企業にとってさまざまな面で経営を圧迫します。適正な在庫をもつことは企業の使命ですが、余裕をもつことがエスカレートして在庫過剰になることが、恒常的に発生するケースが散見されます。多くの優良企業は、必ず在庫削減を目標として、体質改善を行っているといっても過言ではありません。
在庫の増加が、企業経営にどのように影響するかを考えてみましょう。
(1)資金繰りが悪くなり、必要のない借入金が増加する
「在庫=お金」ですから、在庫が多いとそれだけ多くの運転資金が必要となります。借入金が増加すると、自己資本比率が低下して、企業の経営安定性が問われることとなります。また、当然借入利息が発生しますので、利益を圧迫することとなります。
(2)経費が増大し、収益性が悪くなる
在庫が増大すると、製品を運搬したり、在庫管理を行う人の人件費が増加します。また、製品を作りすぎるということは、製造のための人件費も余分にかかります。また、自社倉庫に入りきらず、外部倉庫を使用した場合には、保管料や保険料などが発生します。このような在庫を維持するための費用の増加が、収益性を悪化させます。
(3)工場内の問題点が隠されてしまう
製品などを作りすぎて過剰在庫となっているケースでは、慢性的な機械不良、作業人員の過多、工程間の生産バランスのアンマッチなど、工場内でのさまざまな問題点が隠されてしまいがちです。工場を池とたとえてみてください。池の中に水(=在庫)が満水状態になっていたら、底にある石(=問題点)がまったく見えません。
以上のような過剰在庫による悪影響を改善するために、在庫削減を行うことは、企業経営にとって非常に重要なことです。在庫削減の進め方・考え方について、以下に説明します。代表的な管理工程ごとに改善の例を見てみましょう。
(1)不良品発生に備えてもっていた在庫を少なくしてみると
不良品が出ると他工程がストップする→不良発生による停止の状況が一目瞭然に分かる→品質管理の強化や作業工程の改善を行う。
(2)外注部品の納期遅延に備えてもっていた在庫を少なくしてみると
外注部品の遅れで自社工場の工程がストップする→外注管理不備による工場への影響がよくわかる→外注管理の改善に着手する。
(3)機械故障に備えてもっていた在庫を少なくしてみると
機械故障があると他工程がストップする→機械故障による停止状況がよく分かる→設備保全を強化する。
図1 適正な在庫生産のための考え方
このように在庫を削減することによって、工場内のさまざまな問題点を浮き彫りにして品質管理、外注管理、設備管理など、さまざまな改善活動につなげていくことができるわけです。
ただし、工場内の一部の部署で在庫削減を行おうとしてもうまくはいきません。在庫削減は、会社全体で取り組む必要があります。そのためには、企業の経営者自身が先頭に立ってリードしていく姿勢が重要です。在庫削減の目標を全社員に明示して強力にリードしていくことが、成功のカギです。ぜひとも、在庫削減に挑戦しましょう。