2.使用者による年5日の年次有給休暇の時季指定
年休は、働く人が請求するのが本来の取得方法ですが、職場の雰囲気を気遣って年休を「遠慮」するような"日本的な事情"もあり、本来の方法だけでは取得が進みません。今回の改正法は、こうした事情も踏まえて、使用者が年5日に限って時季指定するという方法を新設したといえます。
(1)対象となる労働者
使用者による時季指定の対象となるのは、「法定の年次有給休暇日数が10日以上となるすべての労働者」です。
① 「法定の年次有給休暇日数が10日以上」とは、改正法の施行日である2019年4月1日以後に新たに付与された年休が10日以上、ということです。2019年3月31日以前に付与された年休は、10日以上あっても時季指定の対象にはなりません。
② 「すべての労働者」ですので、正社員かパートタイマー等かは問いません。正社員は最初から10日以上付与なので全員が対象ですが、パートの人は、図表3.のうち青色部分の人に限られます。
パートの人についてご注意いただきたいのは、前年の繰越分が「年休で10日」に含まれないことです。例えば、前年の6日の年休のうち2日を繰越していたパートさんに、新たに8日が付与され計10日になった場合(図表3.の赤枠 の場合)、時季指定の対象になるでしょうか。答えは「ならない」です。この人の場合、「新たに付与された年休」は8日で「10日以上」ではないからです。
図表3.(再掲)
(2) 使用者が時季指定を行わなくてはならない期間
① いつまでに行わなくてはならないか。
使用者は、労働者ごとに、年10日以上の年休が付与された日から1年以内に、時季を指定して取得させなくてはなりませんが、そのタイミングは、1年間の期首に限りません。年休の取得状況をみながら、期間の途中で行うこともできます。年休が付与された日(「基準日」)と「時季指定義務のある期間」の関係は、4月1日入社の人の例で見ると以下のようになります。
図表4.
ここで、取扱いに注意いただきたい事例を紹介しておきます。
* 「時季指定義務のある期間」の途中に、育児休業や産前産後休業などから復帰した人の場合、時季指定はしなくてよいのでしょうか。
答えは、図表5.の赤矢印の期間です。つまり、復帰した日から、もともとの「時季指定義務のある期間」の残りの期間中で時季指定することになります。ただし、残りの期間が5日に満たないならその日数でということになります。
図表5.
* 法定の週1日の休日以外の休日、例えば祝祭日の休日を労働日に変更して年休に指定することはできるのでしょうか。
答えは、実質的に年休の取得の促進につながっておらず、改正法の趣旨からみて望ましくない、です。そもそも、休日だった日を労働日に変えることは労働条件の不利益変更ですから、労働者の同意なしにはできません。
② 時季指定義務のある5日から控除できる日数
使用者は、どんな場合も5日の時季指定をしなければならない訳ではありません。5日から控除してよい日数があるからです。労働者が請求して取得した日数、計画的取得制度(計画年休)※により取得した日数は5日から控除します。
(例)労働者が時季指定した日数2日、計画年休の日数2日の場合
時季指定義務のある日数=5日-(2日+2日)=1日
※ 計画年休は、年5日の時季指定への対応としても有用です。概要は、後ほどご紹介します。(5.参照)
* 新たに付与された年休が10日以上ある人が、前年の繰越分から5日を取得しました。この人の場合、時季指定の対象になるのでしょうか。
答えは、「時季指定の対象にならない」です。前年の繰越分の取得も控除できるので、時季指定すべき日数はゼロになるからです。
* 入社したての人への配慮などから、年10日以上の年休の一部を前倒しで付与することがあると思います。このような場合、基準日前に取得した年休は控除できるのでしょうか。
答えは、5日から控除できる、です。取得した日と、時季指定義務のある期間の関係は図表6.のようになります。
図表6.
* 年休は1日単位の取得が原則ですが、労働者が半日単位での年休を取得した場合、時季指定すべき5日から控除できるのでしょうか。また、時間単位の年休を取得した場合はどうなるのでしょうか。
答えは、「半日単位の取得は0.5日として控除できる」が、「時間単位の取得は控除できない」です。
* 慶弔休暇を年5日までは有給で認めている場合、その取得日数は、時季指定すべき5日から控除できるのでしょうか。
答えは、「控除できない」です。取得目的を特定した企業独自の特別休暇は、取得目的を問わない法定の年休とは別のものだからです。逆にいえば、取得目的を特定せず自由に使えるのなら、名称は何であれ(例えばリフレッシュ休暇)、法定の年休の上乗せとみなして5日から控除してよいことになります。