RoHS指令の基礎

エネルギー関連製品指令(ErP指令)が発効しました

2009年12月18日

EUでは、「エネルギー使用製品のエコデザインに関する指令(EuP指令)」に代わり、エコデザイン要求の対象製品を従来の「エネルギー使用製品」から「エネルギー消費に影響を及ぼす製品」にまで拡大する「エネルギー関連製品のエコデザイン指令(ErP指令2009/125/EC)注1)」が10月31日に告示され、11月20日に発効しました。ErP指令には以下のような経過があります。

(1)2009年4月24日に欧州議会が、現行の「エネルギー使用製品のエコデザインンに関する指令(EuP指令、2005/32/EC)」の対象範囲をエネルギー関連製品にまで広げることで欧州連合理事会と合意して指令見直しに向けた報告を採択しました注2)。

(2)2009年9月24日に欧州理事会はEuPを見直す新しいエコデザイン指令(ErP指令)を採択しています注3)。ErP指令は、現行のEuP指令の対象範囲を原則、すべてのエネルギーに関連する製品(Energy-related Products)にまで拡張することとしています。具体的には、洗濯機、冷蔵庫、ヘアドライヤなどのエネルギーを使用する製品から、窓、断熱材、シャワーヘッドや節水弁などの水を利用する製品のような直接エネルギーを使用しない製品にまで拡大されることになります。

新指令発効に伴いEU加盟各国は第23条の規定に基づき、2010年11月20日までに新指令(ErP指令)を国内法に転換する必要があります(ErP指令の第1条~第9条、第11条、第14条、第15条、第20条、附属書I~V、VII、VIIIが対象となっています)。

新旧両指令の本文、附属書には共通した部分が多く、EuP指令において「EuP(エネルギー使用製品)」とあるのは、ErP指令においては「product(製品)」と置換された条文となっていて、EuP指令とErP指令はその本質において同様な指令であると考えられます。

したがって、EuP指令が廃止されて、ErP指令が別なものとして制定されたというより、ErP指令はEuP指令の拡大版と位置づけるのが妥当だと思います。

なお、ErP指令の附属書Xに新旧指令の対比表が掲載されています。

ErP指令では第1条において、以下のように指令の目的と適用範囲を規定しています(一部要約)。

「域内での自由移動を確実にする目的でエネルギー関連製品に対する共同体エコデザイン要求を設定する枠組みを確立し、上市および/またはサービスのため実施措置によりエネルギー関連製品が実行しなければならない要求事項を規定する」

第2条の定義では、エネルギー関連製品を以下のように定義しています。

「エネルギー関連製品とは、上市および/またはサービスに供されるエネルギー消費に重大な影響を持つ製品をいう。この指令でカバーされるエネルギー関連製品に組み込まれるエンドユーザー向けに上市および/またはサービスに供され、環境性能が個別に評価された個々の部品を含む(第2条1項)」

また、前文(4)に以下の記述があります。

「多くのエネルギー関連製品は、設計改善を通じて環境影響の低減とエネルギー削減の達成に対する重大な改善ポテンシャルを持っており、同時にビジネスと消費者の経済的削減効果を主導する。エネルギーを使用、発生、移動、測定する製品に加え、たとえば建築に使用される窓、絶縁材料、またはシャワーヘッドや節水栓のような水使用製品は使用中のエネルギー節減に大きな貢献をする」

第3条から第20条までの条文の規定の大部分はEuP指令で規定されていた内容が大筋において継承されています(輸入者の責任、マーキングとEC適合宣言、自由移動、セーフガード条項、適合評価、消費者情報、実施措置、作業計画、罰則等)。

ErP指令では、EU委員会に対して「作業計画」(第16条)において次の要求をしています。

すなわち、EU委員会は、第15条(実施措置)に規定する基準と第18条のコンサルテーションフォーラムとの協議に基づいて2010年10月20日までに作業計画を確立するよう規定されています。作業計画には今後3年間の実施措置の採用のために優先的に考慮すべき製品群の表示リストが規定されます。またEU委員会は作業計画をコンサルテーションフォーラムと協議した後に定期的に修正することが規定されています。

また、EU委員会は第21条に規定されている「レビュー」の内容について、2012年以前に行うよう要請されています。当該、レビューは特に以下を含むこの指令の効果および実施措置について行うこととされています。

(a)製品のライフサイクル全体を考慮した資源効率のような重要な環境パラメータの特定とカバーに対する方法論

(b)実施措置に対する閾値

(c)市場調査メカニズム

(d)適切な自己規制

注1)

注2)

注3)

(担当:瀧山 森雄)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。
情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会