RoHS指令の基礎

EuP指令をめぐる最近の動き(2)

2009年6月12日

前回に続いてEuP指令をめぐる最近の動きを紹介します。

EuP指令の実施規則が順次公布されています。これら規則の中で、Lot6(待機電力、オフモード電力消費量基準)は、家庭用およびオフィス用電気・電子機器に広く適用されますので大きな影響があります。Lot6に関する情報を整理してみます。

(1)エコデザイン要求

2010年1月8日以降のエコデザイン要求内容、ただし、( )内の数値は2013年1月8日以降に適用

  1. 「オフモード」の電力消費量
    オフモードの状態における機器の電力消費量は、1.00W(0.50W)を超えてはならない。
  2. 「待機モード」の電力消費量
    再開機能のみを提供する、または再開機能および使用可能な再開機能の表示のみを提供する状態にある機器の電力消費量は、1.00W(0.50W)を超えてはならない。
  3. 情報または状態表示のみを提供する、または再開機能と情報、もしくは状態表示の組合せのみを提供する状態にある機器の電力消費量は、2.00W(1.00W)を超えてはならない。
  4. オフモードおよび/または待機モードが利用可能であること

(2)適用される製品と除外される製品

ENERGY STARの分類と整合されており、日常的に業務で使用する機器で、専門のプロの業務用の主要設備は除くものです。

範囲外機器としては、家庭用・事務用に対応しない機器です。例えば、EN55022(EMC指令の整合規格)による分類ではClass A機器はプロ・産業用で、Class B機器は家庭用ですから、Class A機器は適用範囲外です。

また、治安、防衛、加盟国安全活動などの機器やエンドユーザー機器でないコーポーネントやサブアッセンブリーも適用範囲外です。

(3)用語の定義について

  1. 「待機モード〔standby mode(s)〕」
    機器が主電源に接続されており、意図した働きをするために主電源からのエネルギー入力を受けている状態で、不特定の間持続する機能のみ提供する状態を意味する。
    1. 再開機能、または再開機能および使用可能な再開機能の表示のみ
      および/または
    2. 情報または状態表示
  2. 「再起動機能(reactivation function)」
    主要機能を含む追加の機能を提供する状態に切り替えるために、内部センサー、タイマーなどのリモートスイッチにより、作動モードを含む他のモードの作動を促す機能を意味する。
  3. 「情報または状態表示(information or status display)
    情報を提供する、または時計を含めディスプレイ上に機器の状態を表示する継続的機能を意味する。
  4. 「アクティブモード〔active mode(s)〕」
    機器が主電源に接続され、機器の意図された働きを提供する主要機能の少なくともひとつが作動されている状態を意味する。
  5. 「オフモード(off mode)」
    機器が電源に接続されており、いかなる機能も提供していない状態を意味する。また以下もオフモードとみなされる。
    1. オフモードの状態であることを示す表示のみを提供している状態
    2. EMC指令 に基づく電磁適合性を確保することを意図した機能のみを提供している状態

(4)オフモードの解釈

オフモードは次が要件となります。

  1. エネルギー使用製品が主電源に接続されている
  2. ユーザーの動作に反応するスイッチ(含むソフト)以外の機能が提供されていない

この定義は、Energy StarのOff Modeの定義であるソフトスイッチまたは物理的スイッチでオフと同じです。オフモードでもスイッチが川下にあるのでパワー消費は起きているので規制がされます。

逆にエネルギーを使用する製品が何か追加機能を提供すればオフモードではなくなります。時計表示などの情報提供やLANなどからの情報を受けるセンサーが動いているなどです。

Energy StarのSeep Modeの定義は、例えば、コンピュータが動作していない状態でキーボード、マウス、またはローカル・エリア・ネットワークから通常の操作に急速に戻る状態を意味します。一般的に、スリープモードのパワー使用はオフモードより高くなります。

(5)スタンバイモードの解釈

スタンバイ機能は、リモートスイッチ、内部センサーまたはタイマーでエネルギーを使用する製品をアクティブなモードに切り換える機能などです。

エネルギー使用製品が主電源に接続され、ユーザーからの以下の要求対応または保護的な再起動機能、リモートスイッチ、内部センサー、タイマーで、他のモード(含むアクティブモード)の起動を容易にする機能、時計を含む情報や状態の表示、製品が遠隔操作信号に応じるオーディオ/ビデオ製品の中のIRセンサー、タイマーによる自動オフ/自動オンなどの機能が発揮されている場合です。

しかし、例えば、LEDによる単純な表示は機能ではなく、オフモードでLEDの点燈もありえます。

EuP指令の実施規則は各論になりますとグレーな部分が多くなります。各Lotの予備調査報告書をよく読みことが重要に思えます。

予備調査後にコンサルテーションフォーラム(注1)が開催され、規制委員会(注2)で実施措置案の検討をします。

各Lotの情報は各Lotのホームページで見ることができます(注3)。Lot6のFinal Reportはホームページから申し込むことで入手できます(注4)。

これらの情報を入手することも重要です。

(松浦徹也)

(注1)

(注2)

(注3)

(注4)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。
情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会