2026年6月改訂

デジタル化・AI導入補助金2026は、中小企業・小規模事業者等によるITツールやAIサービスの導入を支援する補助金です。従来の「IT導入補助金」から名称が変更され、通常枠では最大450万円、セキュリティ対策推進枠では最大150万円などが補助されます。申請には、対象となるITツールの選定、IT導入支援事業者との連携、GビズIDプライムの取得、SECURITY ACTIONの自己宣言などが必要です。本記事では、対象事業者、補助額・補助率、対象経費、申請の流れと注意点を整理します。

中小企業デジタル化・AI導入支援事業の概要とは?

中小企業デジタル化・AI導入支援事業は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、デジタル化やDX等に向けたAIを含むITツールの導入を支援する事業です。

この事業において、事業者が申請する補助金が「デジタル化・AI導入補助金」です。従来は「IT導入補助金」として実施されてきましたが、令和7年度補正予算事業から「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変更されました。会計、受発注、決済、顧客管理、在庫管理、販売管理、勤怠管理などの業務効率化に加え、DXの推進やAIを活用した業務改善、サイバーセキュリティ対策などにも活用できます。

この補助金の特徴は、事業者の目的や導入内容に応じて複数の申請枠が設けられている点です。業務効率化やDXを進めたい場合、インボイス制度に対応したい場合、サイバーセキュリティ対策を強化したい場合、複数の事業者が連携して面的にデジタル化を進めたい場合など、目的に応じて申請枠を選ぶことになります。

なお、補助金は申請すれば必ず交付されるものではありません。公募要領で定められた要件を満たし、審査を経て交付決定を受ける必要があります。

デジタル化・AI導入補助金の対象事業者は?

対象となるのは、労働生産性の向上を目的として、AIを含むITツール、ソフトウェア、サービス等の導入を検討している中小企業・小規模事業者等です。ただし、補助対象となる事業者の範囲や要件は、業種、資本金、従業員数、申請枠などによって異なります。

(参考)補助の対象となる中小企業・小規模事業者等

また、補助金の申請では、導入したいITツールが事務局に登録されていることや、IT導入支援事業者と連携して申請を行うことなどが前提となります。そのため、申請を検討する場合は、自社が対象事業者に該当するか、導入したいツールが補助対象として登録されているか、申請枠ごとの要件を満たしているかを事前に確認する必要があります。

IT導入支援事業者とは、生産性向上を目指す中小企業・小規模事業者等に対してITツールを導入し、補助事業を円滑に遂行するための支援を行う事業者です。事務局に登録申請を行い、事務局および外部審査委員会による審査の結果、採択される必要があります。

デジタル化・AI導入補助金の相関図

デジタル化・AI導入補助金の申請枠と補助額

デジタル化・AI導入補助金2026には、主に次の申請枠があります。

申請枠と補助額

通常枠

通常枠は、業務効率化やDXの推進を目的として、ITツールを導入する事業者を支援する枠です。生産性の向上につながるソフトウェアやサービスの導入費用、クラウド利用料、導入関連費用などが対象となります。

たとえば、会計ソフト、販売管理システム、在庫管理システム、顧客管理システム、勤怠管理システム、予約管理システム、業務自動化ツールなど、日常業務の効率化や経営管理の高度化につながるITツールの導入が想定されます。

通常枠の補助額は、導入する業務プロセス数などに応じて、5万円以上150万円未満、または150万円以上450万円以下です。

通常枠の補助率は原則として2分の1以内です。ただし、令和6年10月から令和7年9月までの間に、所定の賃金範囲で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある場合は、3分の2以内となります。適用条件や提出書類は、公募要領で確認する必要があります。

AIを活用した需要予測、問い合わせ対応、在庫管理、帳票処理、データ分析などのツールも、事務局に登録されたITツールであれば、申請枠の要件を満たす場合には補助対象となる可能性があります。導入したいツールが補助対象として登録されているか、IT導入支援事業者と確認しておくことが重要です。

インボイス枠(インボイス対応類型)

インボイス枠のうち、インボイス対応類型は、インボイス制度に対応したITツールの導入を支援する枠です。対象となるのは、会計、受発注、決済の機能を有するソフトウェアのほか、一定の条件を満たすPC、タブレット、レジ、券売機などのハードウェアです。

たとえば、インボイス制度に対応した会計ソフトを導入する、対象となる受発注・決済システムを整備する、レジや券売機を対応機器に更新する、といったケースで活用が考えられます。

補助額や補助率は、導入するソフトウェアやハードウェアの種類、事業者の規模などによって異なります。小規模事業者については、比較的高い補助率が設定されている場合があるため、少額のITツール導入にも活用しやすい枠です。

インボイス枠(電子取引類型)

インボイス枠のうち、電子取引類型は、発注者がインボイス制度に対応した受発注ソフトを導入し、受注側の中小企業・小規模事業者等に無償で利用させる場合などを支援する枠です。取引先を含めた受発注業務のデジタル化を進めたい場合や、取引先のインボイス対応を支援しながら自社の業務効率化も図りたい場合に活用が考えられます。

単独の事業者だけでなく、取引関係のある複数の事業者の間で電子取引を進めることを想定した枠であり、サプライチェーン全体の事務負担軽減にもつながります。

セキュリティ対策推進枠

セキュリティ対策推進枠は、サイバー攻撃や情報漏えいなどのリスクに備えるため、サイバーセキュリティ対策サービスの導入を支援する枠です。対象となるのは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載され、IT導入支援事業者が提供・登録しているサービスの利用料です。補助対象期間は最大2年分とされています。

補助額は5万円以上150万円以下で、補助率は小規模事業者が3分の2以内、中小企業が2分の1以内です。

中小企業においても、ランサムウェア、フィッシング、標的型攻撃、取引先を経由したサイバー攻撃などのリスクは高まっています。セキュリティ担当者を専任で置くことが難しい企業にとって、専門サービスを活用しながら対策を進める手段として利用できます。

複数者連携デジタル化・AI導入枠

複数者連携デジタル化・AI導入枠は、商店街、商工団体、サプライチェーン、地域の複数事業者などが連携してITツール等を導入し、面的なデジタル化やDX、生産性向上を図る取り組みを支援する枠です。たとえば、商店街全体でキャッシュレス決済やデータ分析ツールを導入する、複数店舗で共通の予約・販売管理システムを活用する、地域の事業者が連携して顧客データや消費動向を分析する、といった取り組みが想定されます。

補助対象には、インボイス対応類型の対象経費、消費動向等分析経費、事務費・専門家費などが含まれます。基盤導入経費と消費動向等分析経費の合計は3,000万円まで、事務費・専門家費は200万円までとされています。個社単位のIT導入にとどまらず、地域や業界、取引関係の中で複数の事業者が連携してデジタル化を進める場合に活用できる枠です。

申請枠は、導入したいITツールや取り組みの目的によって異なります。まずは自社が何を実現したいのかを整理したうえで、該当しそうな申請枠を確認しましょう。制度を利用する目的と申請枠をまとめると次のようになります。

目的

検討する申請枠

会計、販売管理、在庫管理、勤怠管理などを導入したい

通常枠

インボイス対応の会計・受発注・決済ソフトを導入したい

インボイス枠・インボイス対応類型

発注者が取引先にもインボイス対応の受発注ソフトを使わせたい

インボイス枠・電子取引類型

サイバーセキュリティ対策サービスを導入したい

セキュリティ対策推進枠

商店街や複数事業者で共通システムを導入したい

複数者連携デジタル化・AI導入枠

補助対象となるITツール・経費

補助対象となる経費は、申請枠によって異なります。

通常枠では、ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費などが対象となります。クラウド利用料については、最大2年分が補助対象となる場合があります。

インボイス枠では、会計、受発注、決済などの機能を持つソフトウェアのほか、PC、タブレット、レジ、券売機などのハードウェアが対象となる場合があります。

セキュリティ対策推進枠では、対象となるサイバーセキュリティサービスの利用料が補助対象です。

ただし、補助対象となるのは、事務局に登録されたITツールやサービスに限られます。一般に市販されているすべてのソフトウェアや機器が補助対象になるわけではありません。

また、交付決定前に契約、発注、購入、支払いなどを行った経費は、原則として補助対象外となります。申請から交付決定、契約、導入、支払い、実績報告までの流れを事前に確認し、手続きの順序を誤らないことが重要です。

申請に必要なGビズIDとSECURITY ACTION

デジタル化・AI導入補助金の申請にあたっては、主に次のような準備が必要です。

まず、GビズIDプライムアカウントの取得が必要です。GビズIDは、複数の行政サービスで利用できる共通認証システムであり、補助金申請においても必要となります。取得には一定の時間がかかる場合があるため、早めに準備しておくことが望まれます。

次に、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の自己宣言が必要です。これは、中小企業・小規模事業者等が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。なお、2026年の申請では、SECURITY ACTIONの自己宣言方法に変更があります。第2次公募以降は、デジタル化・AI導入補助金で使用するGビズIDを用いて、SECURITY ACTION管理システムから自己宣言を行う必要があります。申請前に、公式サイトで最新の案内を確認してください。

さらに、申請にあたっては、IT導入支援事業者と連携して手続きを進める必要があります。申請者はIT導入支援事業者と相談しながら、導入するITツールを選定し、事業計画を作成します。IT導入支援事業者は、補助金事務局に登録された事業者であり、ITツールの導入や申請手続きのサポートを行います。

申請前に確認したい注意点

申請を検討する場合は、制度の概要を理解するだけでなく、自社が対象になるか、導入したいITツールが補助対象になるか、申請に必要な準備が整っているかを事前に確認することが重要です。特に、交付決定前に契約・発注・支払いを行うと、原則として補助対象外となるため注意が必要です。

確認項目

確認する内容

対象事業者

自社が中小企業・小規模事業者等に該当するか

申請枠

通常枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠など、目的に合う枠はどれか

ITツール

導入したいITツールやサービスが事務局に登録されているか

IT導入支援事業者

連携する事業者が登録済みか

GビズID

GビズIDプライムのアカウントを取得済みか、または取得準備を進めているか

SECURITY ACTION

GビズIDを用いて自己宣言を済ませているか

契約・発注の時期

交付決定前に契約・発注・購入・支払いをしていないか

効果報告

導入後に生産性向上や業務効率化の効果を説明できるか

デジタル化・AI導入補助金の申請方法・流れ

申請の一般的な流れは、下図のとおりです。まずは、デジタル化・AI導入補助金の仕組みを理解したうえで、「ITツール」「IT導入支援事業者」を検索してみましょう。

申請の一般的な流れ

注意したいのは、交付決定前に契約や発注、支払いを行わないことです。補助金は、申請すれば必ず受け取れるものではなく、交付決定を受けた後に、定められた手順に沿って事業を実施する必要があります。

また、補助金の受給後も、導入したITツールによる効果報告が求められます。単にツールを購入するだけでなく、労働生産性の向上や業務効率化にどのようにつながったかを説明できるようにしておくことが大切です。

まとめ

  • 中小企業デジタル化・AI導入支援事業では、事業者向けの補助金として「デジタル化・AI導入補助金」が実施されている
  • この補助金は、中小企業・小規模事業者等がITツールやAIを含むソフトウェア・サービスを導入する際、その経費の一部を支援する制度である
  • 申請枠には、通常枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠などがあり、補助対象経費や補助率、補助額は枠ごとに異なる
  • 申請には、GビズIDプライムの取得、SECURITY ACTIONの自己宣言、IT導入支援事業者との連携などが必要である
  • 交付決定前に契約、発注、購入、支払いを行った経費は、原則として補助対象外となるため注意が必要である