2026年8月内容改訂

地域団体商標制度は、「地域の名称」と「商品・サービスの名称」などを組み合わせた地域ブランドを、商標として保護する制度です。地域の特産品、伝統工芸品、観光サービスなどの名称を守り、地域全体でブランド価値を高めたい場合に活用を検討できます。

地域団体商標を登録するには、出願できる団体、商標の構成、地域との関連性、一定の周知性などの要件を満たす必要があります。また、出願前の相談、制度説明、海外展開時の知財相談、外国出願費用の支援、海外での模倣品・抜け駆け商標対策など、関連する支援策も用意されています。

本記事では、地域団体商標制度の概要、出願できる団体、主な登録要件、取得までの流れ、相談窓口と支援策を整理します。

地域団体商標制度とは?

地域団体商標制度は、地域の産品やサービスの名称を「地域ブランド」として保護するための制度です。地域の名称と商品・サービス名などを組み合わせた文字商標について、一定の要件を満たす場合に商標登録を受けられるようにするものです。

たとえば、地域名と特産品名、地域名とサービス名などを組み合わせた名称は、通常の商標では登録が難しい場合があります。しかし、地域団体商標制度では、全国的に広く知られていない名称であっても、一定の地理的範囲の需要者に周知されていることなどを示せれば、登録を受けられる可能性があります。

地域団体商標の登録は、単に名称を守るだけでなく、地域の事業者が共通のブランドを育て、品質管理や販路開拓、地域の認知度向上に取り組むきっかけにもなります。地域の特産品や観光資源を活用して、地域全体でブランド価値を高めたい場合に検討したい制度です。

地域団体商標として登録できる商標

地域団体商標として登録できるのは、原則として、「地域の名称」と「商品・サービスの名称等」を組み合わせた文字商標です。主に、次のような組み合わせが想定されます。

  • 地域の名称+商品名
  • 地域の名称+サービス名
  • 地域の名称+商品やサービスの慣用名称
  • 地域の名称+「本場」「特産」「名産」など、産地等を示す際に慣用されている文字+商品名またはサービス名

ここでいう地域の名称には、現在の行政区画名だけでなく、旧地名、旧国名、河川名、山岳名、海域名などが含まれる場合があります。

一方で、図形やロゴを含むもの、文字が図案化されているもの、商標全体が普通名称と判断されるものなどは、地域団体商標として登録できない場合があります。出願を検討する際は、名称の使われ方や地域との関係、既存商標の有無などを事前に確認することが重要です。

地域団体商標を出願できる対象者

地域団体商標は、個々の事業者が単独で出願する制度ではありません。地域の事業者が共同で使用する商標を保護する制度であるため、出願できる主体は一定の団体に限られます。

主な対象者は次のとおりです。

対象となる団体

主な例

特別の法律により設立された法人格を持つ組合

事業協同組合、農業協同組合、漁業協同組合など

商工会

地域の商工業者で構成される商工会

商工会議所

各地域の商工会議所

NPO法人

特定非営利活動法人

上記に相当する外国の法人

外国の制度に基づく同種の法人

一定の条件を満たす一般社団法人

地域未来投資促進法に基づく特例の対象となる場合

一般社団法人については、地域未来投資促進法に基づく特例により、一定の条件を満たす場合に地域団体商標を出願できることがあります。対象になるかどうかは、事業計画の承認状況などによって異なるため、出願前に特許庁や専門家に確認するとよいでしょう。

地域団体商標の主な登録要件

地域団体商標として登録を受けるには、主に次の要件を満たす必要があります。

確認項目

主な内容

出願主体

商工会、商工会議所、事業協同組合、NPO法人など、制度上出願できる団体であるか

商標の構成

地域の名称と商品・サービス名などを組み合わせた文字商標であるか

使用主体

団体の構成員に使用させる商標であるか

地域との関連性

地域の名称と商品・サービスの生産地、提供地などに関連性があるか

周知性

一定の地理的範囲の需要者に、ある程度知られていることを説明できるか

既存商標との関係

他人の登録商標と同一・類似でないか、混同のおそれがないか

特に重要なのが、一定の周知性を示す資料です。販売実績、出荷量、取引先、新聞・雑誌・テレビ・ウェブなどでの紹介実績、イベントでの使用実績、パンフレット、カタログ、広告、受賞歴などが、客観的な資料として役立つ場合があります。

ただし、必要となる資料は商品・サービスの種類や取引の実態によって異なります。出願前に、どのような資料を準備すべきかを専門家や相談窓口に確認しておくことが大切です。

地域団体商標を取得するメリット

地域団体商標を取得すると、地域ブランドの名称を商標権として保護できます。主なメリットは次のとおりです。

メリット

内容

名称の保護

他者が無断で同一・類似の名称を使用する場合に、商標権に基づいて対応できる可能性があります

信用力の向上

地域団体商標として登録されていることを示し、取引先や消費者への説明に活用できます

ブランドの統一

地域内で名称の使い方をそろえ、品質管理や販促活動を進めやすくなります

販路開拓への活用

展示会、商談、観光PR、EC販売などで地域ブランドとして訴求しやすくなります

組織力の向上

団体や構成員が共通のブランドを育てる意識を持ちやすくなります

ただし、地域団体商標を取得すれば、ただちに売上や知名度が上がるわけではありません。商標登録はブランドづくりの土台であり、品質管理、販売戦略、情報発信、地域内の合意形成などと組み合わせて活用することが重要です。

地域団体商標を取得するまでの流れ

地域団体商標の取得は、一般的に次の流れで進みます。

1.地域ブランドとして守りたい名称を整理する

まず、どの名称を商標として保護したいのかを整理します。地域名、商品・サービス名、現在の使われ方、今後の活用方針を確認します。

2.先行商標を調査する

同一または類似の商標がすでに登録・出願されていないかを確認します。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)などを使って調べるほか、専門家に相談する方法もあります。

3.出願主体と構成員を確認する

商工会、商工会議所、組合、NPO法人など、出願できる団体に該当するかを確認します。構成員に使用させる商標であることも重要です。

4.地域との関連性と周知性を確認する

商品・サービスと地域の関係、販売実績、報道実績、イベント出展、パンフレット、ウェブ掲載など、周知性を示す資料を整理します。

5.特許庁に出願する

必要書類を準備し、特許庁に出願します。出願後、方式審査や実体審査が行われます。

6.拒絶理由通知への対応

登録要件を満たさないと判断された場合は、拒絶理由通知が届きます。意見書や補正書を提出し、必要に応じて説明資料を追加します。

7.登録査定・登録料納付

審査の結果、登録が認められると登録査定が出されます。その後、登録料を納付すると商標権が発生します。

8.登録後の活用・更新

登録後は、団体内で使用ルールを整備し、品質管理や表示方法を確認しながら活用します。商標権は更新により継続できるため、期限管理も必要です。

※出願料・登録料等の軽減措置についても紹介しています。

出願前に確認したいチェックリスト

地域団体商標の出願を検討する際は、次の点を確認しておくとよいでしょう。

確認項目

確認する内容

守りたい名称

地域名と商品・サービス名などの組み合わせになっているか

出願主体

商工会、商工会議所、組合、NPO法人など、出願可能な団体か

使用者

団体の構成員が使用する商標として整理できるか

地域との関係

商品・サービスの生産地、提供地、由来などを説明できるか

周知性資料

販売実績、報道実績、広告、パンフレット、イベント実績などを示せるか

先行商標

同一・類似の商標がすでに登録・出願されていないか

使用ルール

誰が、どの条件で、どのように名称を使うかを定められるか

品質管理

ブランド価値を維持するための基準や管理方法があるか

海外展開

海外販売や輸出を予定する場合、外国での商標出願も検討しているか

相談先

特許庁、INPIT知財総合支援窓口、弁理士などに相談する準備があるか

地域団体商標に関する相談・支援

地域団体商標の出願や活用を検討する場合、次のような組織や支援を利用できます。

1.特許庁の制度説明・セミナー講師派遣

特許庁では、地域団体商標制度や活用事例について、担当者が説明を行う制度説明・セミナー講師派遣を実施しています。原則として、事業協同組合、農業協同組合、商工会、商工会議所、NPO法人、地方自治体などが対象です。派遣にかかる旅費や謝金は不要とされています。

地域団体商標制度を地域内の事業者に説明したい場合や、GI制度との違い、出願前に準備すべきことを確認したい場合に活用できます。

2.INPIT知財総合支援窓口

INPIT知財総合支援窓口では、中小企業等の知的財産に関する相談を受け付けています。商標、特許、意匠、営業秘密、ブランド戦略などについて、支援担当者が相談内容に応じて助言します。より専門的な相談では、弁理士、弁護士、中小企業診断士、ブランド専門家、デザイナーなどと連携した支援を受けられる場合があります。

地域団体商標を取得すべきか、通常の商標登録とどちらがよいか、出願前にどのような資料を準備すればよいかを相談したい場合に利用しやすい窓口です。

3.地域団体商標ガイドブック・活用事例

特許庁では、地域団体商標制度の概要や活用事例をまとめたガイドブックを公開しています。登録されている地域団体商標の例や、地域ブランドづくりに取り組む団体の事例を確認できます。

出願を検討する段階では、自分たちの地域ブランドに近い事例を探し、名称の使い方、品質管理、PR方法、団体内の合意形成などを参考にするとよいでしょう。

4.地域団体商標マークの活用

地域団体商標を登録した団体等は、特許庁に登録された「地域の名物」であることを示す地域団体商標マークを使用できます。商品パッケージ、パンフレット、ウェブサイト、展示会資料などに表示することで、地域ブランドであることを消費者や取引先に伝えやすくなります。

使用にあたっては、商標権者である団体、団体の構成員、使用許諾を受けた者など、使用できる範囲を確認する必要があります。

海外展開を考える場合の支援

地域ブランドを海外で販売・展開する場合、日本で地域団体商標を登録していても、そのまま海外で商標権が保護されるわけではありません。商標権は国・地域ごとに取得する必要があります。

海外展開を予定している場合は、早い段階で外国での商標出願、現地での名称の使われ方、模倣品対策、抜け駆け商標対策を検討することが重要です。

1.海外出願支援事業

中小企業等海外展開支援事業費補助金の海外出願支援事業では、中小企業等が外国へ特許、実用新案、意匠、商標などを出願する際の費用の一部を支援しています。地域団体商標の外国出願については、商工会議所、商工会、NPO法人等も対象となる場合があります。

補助対象経費には、外国特許庁への出願手数料、国内・現地代理人費用、翻訳費用などが含まれます。補助率や上限額、公募期間、申請窓口は年度や実施機関によって異なるため、最新情報を確認してください。

2.海外での模倣品・抜け駆け商標対策

海外で地域ブランドを展開する場合、現地企業等に名称を先取りして出願される「抜け駆け商標」や、模倣品の流通が問題になることがあります。

特許庁やジェトロでは、海外での模倣品調査、警告文作成、行政摘発、税関差止申請、ウェブページ削除、抜け駆け商標を取り消すための係争活動などに関する支援を実施しています。海外展開を検討する地域ブランドでは、日本での登録だけでなく、進出先での権利取得や侵害対策もあわせて確認することが重要です。

地域団体商標とGI制度の違い

地域ブランドを保護する制度には、地域団体商標のほか、地理的表示(GI)保護制度などがあります。

地域団体商標は、地域名と商品・サービス名などからなる商標を、団体が商標権として登録・管理する制度です。農林水産物・食品に限らず、工芸品やサービスなども対象となる場合があります。

一方、GI制度は、地域と結びついた農林水産物・食品等の名称を保護する制度です。品質、社会的評価、その他の特性が産地と結びついていることなどが重視されます。

どちらの制度が適しているかは、対象となる商品・サービス、地域ブランドの性質、管理体制、今後の販売・展開方針によって異なります。地域団体商標とGI制度のどちらか一方だけでなく、必要に応じて複数の知的財産制度を組み合わせて活用することも考えられます。

地域団体商標を活用する際の注意点

地域団体商標は、登録して終わりではありません。登録後にブランド価値を高めるには、次のような点に注意が必要です。

  • 団体内で商標の使用ルールを定める
  • 商品・サービスの品質基準を確認する
  • 構成員による表示方法をそろえる
  • 無断使用や類似名称を定期的に確認する
  • 展示会、商談、EC、観光PRなどで商標を活用する
  • 更新期限を管理する

特に、品質管理や使用ルールが不十分なまま名称だけを広げると、ブランドイメージの低下や団体内のトラブルにつながるおそれがあります。地域団体商標制度をうまく活用するには、商標登録の手続きだけでなく、地域の共通財産として、登録後のブランド運用まで見据えて準備することが望ましいでしょう。

まとめ

  • 地域団体商標制度は、地域名と商品・サービス名などを組み合わせた地域ブランドを商標として保護する制度である
  • 出願できるのは、商工会、商工会議所、事業協同組合、NPO法人など、一定の団体に限られる
  • 登録には、商標の構成、地域との関連性、団体の構成員による使用、一定の周知性などの要件を満たす必要がある
  • 出願前には、先行商標の調査、周知性を示す資料の整理、団体内の使用ルールや品質管理の検討が重要である
  • 特許庁の制度説明、INPIT知財総合支援窓口、地域団体商標ガイドブック、海外出願・侵害対策支援などを活用できる場合がある
  • 海外展開を検討する場合は、日本での登録だけでなく、進出先での商標出願や模倣品・抜け駆け商標対策も早めに確認する必要がある