2026年8月内容改訂
経営革新支援事業は、中小企業者等が新商品・新サービスの開発、新たな生産・販売方式の導入、技術に関する研究開発などの「新事業活動」に取り組む際、経営革新計画の承認を受けることで、金融支援や信用保証の特例、販路開拓支援などの支援策を活用できる可能性がある制度です。
経営革新計画は、単に支援策を受けるための申請書ではありません。自社の強みや課題を整理し、新たな事業活動の内容、実施体制、売上・利益・付加価値額などの目標を具体化する中期的な経営計画です。承認を受けても、各支援策の利用には別途審査が必要ですが、計画づくりを通じて新たな事業の方向性を明確にできる点も大きなメリットです。
本記事では、経営革新支援事業の概要、経営革新計画の対象となる新事業活動、承認を受けるメリット、申請前に確認したいポイント、手続きの流れを整理します。
経営革新支援事業とは?
経営革新支援事業は、中小企業等経営強化法に基づき、中小企業者等が新たな事業活動に取り組むための経営革新計画を作成し、都道府県知事または国の承認を受けることで、各種支援策の利用につなげる制度です。
経営革新計画には、これまでの事業とは異なる新たな取り組みと、一定の経営目標を盛り込む必要があります。対象となるのは、まったく新しい分野への進出だけではありません。既存事業の強みを生かして新商品を開発する、販売方法を変える、新しいサービスの提供方式を導入する、研究開発の成果を事業に活用するなど、自社にとって新しい取り組みであれば対象となる可能性があります。
ただし、すでに同業他社で広く普及している取り組みや、単なる設備更新、通常の営業活動の延長と判断されるものは、経営革新計画として承認されない場合があります。申請を検討する際は、自社にとっての新規性、事業としての実現可能性、経営力向上への効果を整理することが重要です。
経営革新計画の対象となる事業者
経営革新計画の対象となるのは、制度上の要件を満たす中小企業者、個人事業主、組合、連合会などです。会社、個人、組合等の区分や、業種、資本金、従業員数などによって対象範囲が定められています。
また、複数の中小企業者が共同で計画を作成することもできます。共同で取り組む場合は、代表者や実施体制、申請先が異なることがあるため、事前に都道府県の担当部局や国の地方機関等に確認してください。
経営革新計画で求められる「新事業活動」
経営革新計画では、自社にとって新しい事業活動に取り組むことが求められます。新事業活動には、主に次の5つがあります。
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新事業活動の類型 |
内容の例 |
|---|---|
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新商品の開発または生産 |
新しい製品を開発する、既存技術を生かして新分野の商品を生産する |
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新役務の開発または提供 |
新しいサービスを開発する、既存事業から派生した新サービスを提供する |
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商品の新たな生産または販売方式の導入 |
製造工程を変える、新しい販売チャネルや販売方法を導入する |
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役務の新たな提供方式の導入 |
サービスの提供方法、予約・配送・接客方法などを新しくする |
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技術に関する研究開発およびその成果の利用、その他の新たな事業活動 |
研究開発で得た技術やノウハウを自社の事業に活用する |
たとえば、製造業が新素材を使った製品を開発する、飲食店が新しい提供方式を導入する、小売業がECや定期販売など新たな販売方法を導入する、サービス業が専門性を生かして新しい顧客層向けのサービスを展開する、といった取り組みが考えられます。
重要なのは、「他社にとって新しいか」だけでなく、「自社にとって新しい取り組みであり、経営力の向上につながる計画になっているか」です。
経営革新計画で求められる経営目標
経営革新計画では、3年から5年の計画期間を設定し、事業の実施によって経営力がどの程度向上するかを数値で示す必要があります。
主な指標は、次の2つです。
|
経営指標 |
内容 |
|---|---|
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付加価値額または一人あたりの付加価値額 |
営業利益、人件費、減価償却費などをもとに、自社が生み出す価値の伸びを確認する指標 |
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給与支給総額 |
役員や従業員に支払う給与、賞与、各種手当などの総額の伸びを確認する指標 |
付加価値額は、一般に次のように考えます。
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
一人あたりの付加価値額=付加価値額÷従業員数
目標となる伸び率は、計画期間が3年、4年、5年のいずれかによって異なります。たとえば、付加価値額または一人あたりの付加価値額、給与支給総額について、計画期間に応じた一定以上の伸びを示す必要があります。基準や算定方法は変更されることがあるため、最新のガイドブックや申請先の案内で確認してください。
経営革新計画の承認を受けるメリット
経営革新計画の承認を受けるメリットは、大きく分けると「計画づくりによる経営面のメリット」と「承認後に利用を検討できる支援策」の2つがあります。
1.自社の課題と新事業の方向性を整理できる
経営革新計画を作成する過程では、自社の現状、強み、弱み、外部環境、顧客ニーズ、競合状況などを整理します。そのうえで、新たな事業活動の内容、売上や利益の見通し、実施体制、資金計画、スケジュールを具体化します。
そのため、承認の有無にかかわらず、計画づくり自体が新事業を進めるための準備になります。社内で方針を共有しやすくなる、金融機関や支援機関に説明しやすくなる、実行後の進捗管理がしやすくなるといった効果も期待できます。
2.政府系金融機関や中小企業基盤整備機構の融資制度を検討できる
経営革新計画の承認を受けた事業者は、日本政策金融公庫の「新事業活動促進資金」や中小企業基盤整備機構の高度化融資制度など、経営革新計画に関連する融資制度の利用や優遇措置の活用を検討できます。
ただし、計画の承認を受ければ必ず融資を受けられるわけではありません。融資の利用には、日本政策金融公庫等による別途審査があります。
※高度化融資制度(中小企業基盤整備機構)については、P.20を参照ください。
※中小企業基盤整備機構の高度化融資制度の貸付利率は、令和8年度貸付決定分について年1.35%です。貸付利率は年度によって異なる場合があります。
3.信用保証の特例を検討できる
経営革新計画の承認を受けた事業者は、信用保証の特例の利用を検討できる場合があります。信用保証制度は、中小企業者が金融機関から事業資金を借り入れる際に、信用保証協会が保証を行う制度です。
経営革新計画に基づく新事業活動を進めるために資金調達を行う場合、通常の保証枠とは別枠での保証など、特例措置を利用できる可能性があります。ただし、信用保証協会や金融機関による審査が別途必要です。
4.特許関係料金の軽減措置を検討できる
経営革新計画の内容に技術に関する研究開発が含まれる場合、一定の要件を満たすことで、特許関係料金の軽減措置を利用できる可能性があります。対象となる料金や適用条件は制度によって異なるため、特許庁の最新情報を確認してください。
5.その他の支援策を検討できる場合がある
経営革新計画の承認を受けた事業者は、事業化や販路開拓、資金調達などに関する支援策の利用を検討できる場合があります。たとえば、中小企業投資育成株式会社法の特例、販路開拓・事業化支援、海外展開時の資金調達支援などが挙げられます。
ただし、利用できる支援策は時期や地域、実施機関によって異なります。また、経営革新計画の承認を受ければ必ず利用できるものではなく、支援策ごとに別途要件確認や審査が必要です。最新の制度内容や申請要件は、関係機関の案内で確認してください。
承認を受ける際の注意点
経営革新計画の承認は、各種支援策の利用を保証するものではありません。承認後に融資、信用保証、補助金、特許関係料金の軽減、販路開拓支援などを利用する場合は、それぞれの実施機関で別途審査や申請手続きが必要です。
また、承認を受けた計画については、実施状況の確認やフォローアップ調査が行われる場合があります。計画を作成して終わりにするのではなく、実施後の進捗管理、売上・利益・付加価値額の確認、必要に応じた計画の見直しを行うことが重要です。
申請前に確認したいチェックリスト
経営革新計画の申請を検討する場合は、次の点を確認しておくとよいでしょう。
|
確認項目 |
確認する内容 |
|---|---|
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対象事業者 |
自社が制度上の対象となる中小企業者等に該当するか |
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新事業活動 |
自社にとって新しい取り組みであり、制度上の類型に該当するか |
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新規性 |
同業他社で広く普及している取り組みではないか |
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実現可能性 |
人員、設備、技術、資金、協力先などの実施体制があるか |
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経営目標 |
付加価値額または一人あたり付加価値額、給与支給総額の目標を設定できるか |
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資金計画 |
必要資金、自己資金、借入、補助金等の見通しを整理しているか |
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販路・顧客 |
想定する顧客、販売方法、価格、競合との差別化を説明できるか |
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支援策 |
承認後に利用を検討したい融資、保証、補助金、専門家支援などを確認しているか |
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申請窓口 |
都道府県の担当部局、または国の地方機関等の窓口を確認しているか |
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実施後の管理 |
計画の進捗管理やフォローアップ調査に対応できるか |
手続きの流れ
経営革新計画の申請は、一般的に次の流れで進めます。
1.新たに取り組みたい事業を整理する
まず、自社が取り組みたい新商品、新サービス、新たな生産・販売方式、研究開発などの内容を整理します。既存事業との違い、顧客ニーズ、競合との差別化、実施体制を確認します。
2.申請窓口に相談する
原則として、都道府県の担当部局が相談・申請窓口になります。複数の中小企業者が共同で計画を作成する場合などは、国の地方機関等が窓口となる場合があります。まずは、所在地の都道府県担当課に相談しましょう。
3.経営革新計画を作成する
新事業活動の内容、実施体制、販売計画、資金計画、数値目標などを整理し、申請書等を作成します。必要に応じて、商工会、商工会議所、都道府県の支援機関、認定経営革新等支援機関などに相談するとよいでしょう。
4.必要書類を準備し、申請する
申請書、決算書、会社概要、事業計画に関する資料など、申請先が定める書類を準備します。必要書類や提出方法は都道府県によって異なるため、事前に確認してください。
5.審査・承認を受ける
提出された計画は、申請先で審査されます。計画の新規性、実現可能性、経営目標、資金計画などが確認され、適切と判断されれば承認されます。
6.計画を実行し、支援策の利用を検討する
承認後は、計画に沿って新事業活動を実施します。融資、信用保証、補助金、販路開拓支援などを利用する場合は、各支援策の実施機関に別途申請し、審査を受ける必要があります。
7.進捗管理・フォローアップに対応する
計画開始後は、目標に対する進捗を確認し、必要に応じて改善を行います。都道府県等によるフォローアップ調査や助言が行われる場合があります。
まとめ
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経営革新支援事業は、中小企業者等が新たな事業活動に取り組むための経営革新計画を作成し、都道府県知事または国の承認を受けることで、各種支援策の利用につなげる制度である
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経営革新計画には、新商品・新サービスの開発、新たな生産・販売方式の導入、技術に関する研究開発など、自社にとって新しい取り組みを盛り込む必要がある
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計画では、付加価値額または一人あたりの付加価値額、給与支給総額などの経営目標を設定する
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承認を受けることで、政府系金融機関の融資、信用保証の特例、特許関係料金の軽減、販路開拓支援などを検討できる場合がある
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ただし、経営革新計画の承認は各支援策の利用を保証するものではなく、支援策ごとに別途審査や申請が必要である
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申請を検討する場合は、まず都道府県の担当部局に相談し、最新のガイドブックや申請先の案内を確認することが重要である









