闘いつづける経営者たち

「志太 勤」シダックス株式会社(第4回)

04.ビッグチェンジにはビッグチャンスあり

努力が報われると信じ愚直に努力を続けてきた

1997年、私財を投じてスタートした志太起業塾。40代から50代を中心に2003年3月終了までの塾生は約1,400人。うち1割程度の人が実際に起業したという。

終生忘れられない言葉がある。
「大きな成功を志すものは、人の何倍も働け」

獅子文六の経済小説「大番」の主人公、ギューちゃんのモデルで、異色の相場師として知られる故佐藤和三郎氏から授かった言葉だ。

志太27歳のとき、和三郎氏の主催する勉強会に参加した縁で、多くの場面で薫陶を受ける幸運に恵まれる。「人の何倍も働け」とのアドバイスを志太は心の励みにし、これを実行したのだ。

志太は社員に対し、日頃から「会社で一番働いているのは私だ」と言い続けている。これも和三郎氏から「率先垂範」の大切さを学んだ心構えの一つである。「会社で一番・・・」は、社員に対してよりむしろ自らに言い聞かせてきた志太一流の言い回しなのだ。

いま、ビジネスを大成させた志太は、自身の生き様を振り返ってこう語る。「努力すれば必ず報われると信じ、愚直に努力してきた」と。マジックなどとは無縁の志太の真骨頂がここにある。

IT革命という三番目の激動の時代に入った

成長のキーワードは、時代の流れに逆らわず、いま大事なことに集中することです。

「ビッグチェンジにはビッグチャンスあり」というのが志太の経験則。「マーケットは変化を望んでいる。変化の行き着く先を先取りできれば、ビジネスは成功する可能性が高い」と説く。

カフェテリア方式の導入、レストランカラオケ、病院給食—。志太が始めたいずれの事業をみても、時代の変化を先取りしたサービスといえる。さらにそこには「時代の変化の兆しは現場の第一線に現れる」という現場重視の考え方が貫かれている。

それでは現代をどう分析しているのか。この問いに志太は「明治維新、終戦に続く3番目の激動の時代に入った」と解説する。別の見方をすれば「今はまさに第3次産業革命の時代」なのだ。

そして、そのキーワードとは「IT」。シダックスがフードビジネスに情報ネットワークをフルに活用してきたのも、時代の変化に即座に対応する経営戦略の賜物なのだ。

大志を持ち到達点を設定してから始めよ

年商1,900億円のシダックスグループを一代で築き上げた志太。趣味が高じて始めたワイン事業も、コンクールで金賞を受賞するなどブランド化に成功した。

「商売で日本一になる」との志を立ててスタートした給食事業。フードビジネスへと大きく羽ばたき、頂上に上りついた志太の持論は「人生2回論」。

第二の人生とは起業家支援。地域別だったニュービジネス協議会を、北畑隆三経済産業政策局長(現経済産業事務次官)と二人三脚で全国組織に取りまとめた「日本ニュービジネス協議会連合会」は会長の立場から中小・ベンチャー企業を支援する活動の拠点だ。

支援活動をより深めるため、2005年10月に設立した参加企業数40万社強を誇る「e-連携フォーラム」代表としての活躍は、新事業創出を目指す中小・ベンチャー企業にとって、頼り甲斐のある味方となっている。

「何かを成すときはまず大志を持ち、到達点を設定してから始めよ」。志太が全国の企業家とこれから起業する人たちに発信する合言葉だ。

プロフィール

志太 勤 (しだ つとむ)

1979年兵庫県芦屋市生まれ。恵泉女学園大学を卒業後、銀行、不動産会社などの勤務を経て2008年に株式会社つ・い・つ・いを創業。「ついつい手にとって食べてしまう、ちょっと贅沢なあられ」を商品コンセプトに、ルミネ北千住を中心とした店舗とウェブサイトのオンラインショップで販売する。アメリカ、フランス、マレーシアなど海外への販売も好調。2013年に「日経ウーマンオブザイヤー2013キャリアクリエイト部門」受賞、2014年には在日米国大使館から起業家を顕彰する第4回日本起業家賞の特別賞を受賞した。

企業データ

企業名
シダックス株式会社
Webサイト
設立
2001年04月02日
資本金
8,930 (百万円)
従業員数
11,000(23,042)(名)
所在地
〒150-0041 東京都渋谷区神南1丁目12番13号
Tel
03(5784)8881(代表)
事業内容
フードビジネスに関する企業の株式を所有する持株会社。子会社に対する経営指導、管理業務などが主な事業。
売上高
175,150 (百万円)

掲載日:2007年10月29日