闘いつづける経営者たち

「花木義麿」オークマ株式会社(第4回)

04.人づくりに力

オークマでは、海外での工作機械販売やマーケティングに加え、日本の開発・製造現場で一歩先を見据えた人材育成に力を入れている。本社工場再構築や工作機械のデザイン開発などで、部門横断のプロジェクトチームが編成され、着々と成果を出しつつある。

新工場は人間工学の視点を導入

若手が牽引する「プレミアムデザインプロジェクト」

本社工場再構築の「大口再開発プロジェクト」は部長、課長ら約10人が専任で切り盛りする。まず第1弾は13年春の新工場棟を整備する。人間工学に基づき、使い勝手や作業環境を改善する「プレミアムデザインプロジェクト」は若手の男女社員17人が兼務の体制で携わった。社外デザイナーに協力を得たとはいえ、このところ増えている女性社員らを起用したのが注目される。女性社員の職場は設計や加工技術開発、テストカット、NCスクールなどに広がっている。

プロジェクトではないものの、MCや複合加工機に比べて伸び悩む研削盤事業をテコ入れするための「研削盤センター」は、再浮上をかけて組織・人員を拡充した。12年11月の日本国際工作機械見本市(JIMTOF2012)では、高精度、高生産性のコンピューター数値制御(CNC)内面研削盤「GI-NIIシリーズ」などを発表。GI-NIIは熱変位制御技術で機械始動時から長時間がたっても寸法変化を抑えたのが特徴だ。花木社長は「オークマは、自社固有の優れた技術があっても、ビジネスに生かし切れていなかった」と率直に語る。この弱点を、どのようなマーケティング、モノづくり、販売活動で払拭(ふっしょく)するか注目される。

新興国市場の開拓

中国の展示会で最新技術を披露

オークマの2012年(暦年)の工作機械受注は前年比13.5%減の1059億5500円。内訳は内需が同8.4%減の488億2300万円、外需が同17.4%減の571億3200万円。外需比率は約54%。12年前半はタイの洪水被害からの復旧需要の一方、円高ダメージ、中国の景気減速が重なり苦戦した。それでも東日本大震災の復興需要など国内事業が下支えして、堅調さを維持してきた。同社は13年中をめどに中国の販売網の規模を倍増するなど、「オークマブランド」の一層の浸透を狙う。新興国市場の開拓を進め、売上高に占める海外比率を70%に引き上げる目標「グローバル70」を達成する考えだ。

あるオークマOBは本社工場再構築計画について「意志強固な花木さんらしく大胆なことをやるなあ。考え方や方針には大賛成。併せて後継者もしっかり育ててほしいね」と語る。花木社長は「工作機械業界を取り巻く環境変化は顕著だが、世界でみれば需要は底堅く、弱気になることはない」と強気の姿勢をみせるのだった。

プロフィール

花木 義麿 (はなき よしまろ)

1942年(昭17)生まれ。愛知県出身。65年、名古屋大学工学部を卒業し、大隈鉄工所(現オークマ)に入社。99年常務、2001年オークマアメリカ社長、05年オークマ社長。精密工学会フェロー。数値制御(NC)装置「OSP」の推進役で、同社の技術陣の顔として知られる。「才気煥発(さいきかんぱつ)、切れ味鋭い技術者」「品格があり、基本思想にこだわる。論理的で実行力がある」といった社内外の声がある。趣味はゴルフ、サッカー観戦。「真摯(しんし)」を信条とする。

企業データ

企業名
オークマ株式会社
Webサイト
資本金
180億円
所在地
愛知県丹羽郡大口町下小口五丁目25番地の1
Tel
0587-95-9295
事業内容
数値制御(NC)工作機械(旋盤、複合加工機、マシニングセンタ、研削盤)、NC装置、工場自動化(FA)製品、サーボモーター、その他、製造・販売
連結売上高
1405億円(2012年3月期)

掲載日:2013年2月28日