闘いつづける経営者たち

「伊藤 雅俊」味の素株式会社(第1回)

01.日本がグローバルへの第1歩

国内市場を掘りまくる

地球規模で成長しつづける「確かなグローバルカンパニー」-。これが、2011年に新たな中期経営計画をスタートさせた味の素の大きなテーマだ。すでに多くの国々で調味料の「味の素」を展開する同社だが、目指すところは遙か先にある。21世紀の人類社会が抱える「地球持続性」「食糧問題」「健康」などを解決する、真に世界から必要とされる企業だ。

伊藤雅俊社長は「『グローバル企業になりたい』という観点で言うと、日本自体がグローバルなエリア。だからこそ、まず国内をきっちりとやる。そして日本の会社という価値を海外で生かす」と話す。グローバルカンパニーの最初のカギは、国内にあるのだ。

国内の食品市場は、節約志向や少子高齢化などの影響を受け厳しい状況が続いている。だが伊藤社長は「健康志向など消費の変化に合わせた商品を提供できれば、安定した収益は確保できる」と強調する。このために必要なのは、新たなニーズの掘り起こしと既存商品の価値向上だ。

クノールカップスープ
コールド

例えば、春夏限定の粉末スープ「クノール カップスープcold」は、お客様相談センターに届いた「暑い日には熱湯を注いで飲むスープでなく、冷たいスープが飲みたい」と言う声から生まれた。こうした商品を投入することで、取り込めていなかったニーズを掘り起こし、国内消費の活性化につなげる考え。

さらに既存商品については「見せ方」を工夫することで新たな価値を生みだし、新たな顧客の獲得を狙う。定番の粉末スープ『クノールカップスープ』は、「パンとスープでの新しい朝食スタイル」という新しい価値を、2010年から提案している。トーストをスープにつけながら食べる『つけパン』と、ひたして食べる『ひたパン』といった食べ方だ。人気俳優の三浦春馬さんと北川景子さんのCMキャラクター起用も奏功して「若者を中心に非常に好調」(伊藤社長)。という

食品から健康市場へ

得意分野のアミノ酸を軸にして、同社は「健康」という切り口で食品以外の分野も拡大している。通信販売で展開するサプリメントや医療用食品の提供だ。さらに2011年4月からアミノ酸研究の延長として『アミノインデックス』というサービスを開始した。これは体のなかのアミノ酸の比率を元に健康診断するもの。企業などの集団健診による採血を利用して診断する。現在は、ガンに対してだけだが、今後は他の病気にも応用でき、広がる可能性は大いにあるという。例えば健康診断では分かりにくいストレスの有無などにも応用ができそうだ。将来的には「在宅ケアまでカバーできるような体制を整える」(伊藤社長)ことを目標に掲げる。

原点はうま味調味料

味の素株式会社・川崎事業所

1908年、池田菊苗博士が「うま味(み)」という概念を発見し、昆布から抽出したグルタミン酸から、同社の原点であるうま味調味料「味の素」が誕生した。さらに独自素材を加えることで風味調味料が開発された。その代表格が「ほんだし」。かつお節の香り、風味、味を引き出す技術を投入し、さらに顆粒(かりゅう)にして商品化した。おいしさ、簡便性、保存性を追求した成果だ。これらの技術が中華、洋風のだしにも展開されている。

この風味調味料の発想と技術が、もう一つのグローバル化のカギだ。風味調味料は、各国の味覚に合わせた調味料の開発に役立っている。グローバルで共通する技術の中心になっているという意味でも日本は重要な役割を担っている。

プロフィール

伊藤 雅俊 (いとう まさとし)

1947年、東京都生まれ。1971年慶應義塾大学経済学部卒、同年味の素入社。95年食品部長、99年取締役、05年常務執行役員、06年食品カンパニープレジデント。創業100年目にあたる09年に社長に就任した。グローバルな仕事がしたいと味の素を選んだ。本流の食品部門を歩み、海外企業の買収や提携で手腕を発揮。趣味は料理。和洋中とレパートリーは広いが、食材を無駄なく使い切る料理を心がける。

企業データ

企業名
味の素株式会社
Webサイト
設立
1925年12月17日
資本金
798億6300万円
従業員数
単体3,310名 連結28,084名
所在地
〒104-8315 東京都中央区京橋一丁目15番1号
事業内容
食品製造販売

掲載日:2011年12月5日