闘いつづける経営者たち

「谷田 千里」株式会社タニタ(第4回)

04.尿糖計と睡眠計で新市場開拓狙う

効果的な生活習慣の改善に

次の事業の柱のひとつとして期待する携帯型デジタル尿糖計

タニタの谷田千里社長は現在の事業の柱である体組成計、歩数計、活動量計や料理用はかりなどに加え、「尿糖計と睡眠計を新たな事業の柱にしたい」と力を込める。どちらの機器も現代の多くの人が抱える疾患に深くかかわる。特に糖尿病は厚生労働省によると予備軍も含めた糖尿病患者が07年の時点で2210万人いるとされており、「国民病」になりつつある。

同社は04年に携帯型のデジタル尿糖計を発売。小型で携帯できるのが特徴で、尿をかけた後6秒ですぐに結果が分かる。糖尿病の中でも「特に食後尿糖が問題」と谷田社長は強調する。普段の尿糖値は正常値だが、食後にのみ急激に上昇する症例だ。これまでの据え置き型の尿糖計では食後に毎回測ることは難しいが、携帯型尿糖計なら外出先でも簡単に測ることができる。尿糖の測定を日常的に行うことで、尿糖の高い時と低い時の生活習慣を振り返り、効果的な生活習慣の改善につなげることができる。

新市場開拓で医療費削減

今年発売した一般用睡眠計

さらに、中国を重要マーケットとしてとらえる。中国でも経済発展により糖尿病やその予備軍の数が急増しており、糖尿病の兆候を調べたいというニーズが高まっている。法律の関係で日本では尿糖計広告を出せないが、中国では広告を出せることから、現地で積極的にアピールしていく考えだ。糖尿病に限らず、新興国で健康に対する関心は高まっており、「人口が増えている新興国やアジア向けに力を入れ、将来は海外売上高比率が50%を超えるようにしたい」と力を込める。

また、もうひとつの事業の柱として期待する睡眠計は、07年に業務用を発売し、今年には3万6750円と低価格の一般用製品を発売。この睡眠計は体を拘束することなく、センサーマットを寝具の下に敷いて寝るだけで、眠りの深さや脈拍、呼吸数、体の動きなどを計測できる。「法人向けに売っていきたい。一般企業でも社員の健康管理のツールとして使ってもらえれば」と期待する。既に徳島県美馬市にモニター用途で出荷しており、病院や一般企業、研究室から相当数の問い合わせが来ているという。今後は運転手の健康管理が必要な運輸業界向けに売り込む考えで、運送関係の業界団体などに提案していく。

谷田社長は「どの製品でも、病気の兆候を早期に発見し、病気を未然に防ぐセーフティーネットとして活用してもらいたい」と話す。「特に糖尿病は一度かかると治りにくいため、治療にかかる医療費は多額だ。患者数を減らせば、医療費の削減に貢献できる」と強調する。同社では今後も人々の健康を守る製品を開発し、新しい市場を開拓することで「医療費の削減に貢献する」ことを目指していく。

プロフィール

谷田 千里 (たにだ せんり)

1972年6月6日生まれ。97年佐賀大学理工学部卒業。97年(株)ニュートン入社、98年(株)船井総合研究所入社、01年(株)タニタ入社、05年タニタアメリカINC取締役、07年(株)タニタ取締役。

企業データ

企業名
株式会社タニタ
Webサイト
設立
1944年1月
資本金
5,100万円
従業員数
1,200人(グループ)
所在地
〒174-8630 東京都板橋区前野町1-14-2
事業内容
家庭用・業務用計量器(体組成計、体内脂肪計、脂肪計付きヘルスメーター、ヘルスメーター、クッキングスケール、活動量計、歩数計、タイマー、尿糖計、塩分計、血圧計、脈拍計、デジタルカロリースケール、体温計、温湿度計)などの製造・販売
創業
1923年3月
事業所
東京営業所、大阪営業所、名古屋営業所、福岡営業所、北日本営業所(秋田県)

掲載日:2010年9月16日