経営強化・起業

ソーシャルビジネス支援資金

2023年1月更新

ソーシャルビジネスとは、高齢者や障がい者の介護・福祉、子育て支援、まちづくり、地域活性化や環境保護等、地域や社会が抱える課題の解決に取り組む事業をいいます。近年の社会的課題の多様化や複雑化により、行政や地縁活動だけでは解決が困難になってきており、持続的かつ自律的に社会課題を解決しながら仕事として担うソーシャルビジネスは、さまざまな形で広がりを見せています。

このような背景により、社会的企業や社会起業家、NPO法人等のソーシャルビジネス事業者の活動内容は多方面に広がり、資金需要も年々高まっています。そこで、政府系の金融機関である日本政策金融公庫により創設された融資制度が、「ソーシャルビジネス支援資金」です。

ソーシャルビジネスの取組み例

ソーシャルビジネスのための融資制度

社会起業やNPO法人を設立する上での大きな課題に資金調達があります。一般的に、実績のない創業期の企業が民間の金融機関から融資を得るのは、簡単ではありません。特にソーシャルビジネスは、一般の企業のように営利を前面に出した事業であることは少なく、資金調達が困難なため、寄付で運営している団体もあります。

日本政策金融公庫が2014年に実施したアンケートでは、ソーシャルビジネスを進めていく上での課題として、「人手の確保」と回答した人の割合49.0%、「従業員の能力向上」と回答した人の割合41.9%に続き、「運転資金の確保」「設備資金の確保」と回答した人の合計割合は37.1%となっています。

ここでは、日本政策金融公庫がソーシャルビジネスのために2015年より実施している「ソーシャルビジネス支援資金」の活用についてご紹介いたします。

ソーシャルビジネス支援資金の概要

この制度は、ソーシャルビジネスに取り組む中小企業・小規模事業者、NPOの方を対象とした融資制度です。法人の形態や事業の内容に制限が設けられている点が特徴です。

貸付は、日本政策金融公庫(国民生活事業)または沖縄振興開発金融公庫が行います。対象となる資金は、事業を行うために必要な設備資金および運転資金で、融資限度額は担保ありの場合、7,200万円です。また、新たに事業を始める方や事業開始後税務申告を2期終えていない方は「新創業融資制度」、税務申告を2期以上行っている方は「担保を不要とする融資」を併用することで、無担保で融資を受けることも可能です。この場合の融資限度額はそれぞれ3,000万円、4,800万円となります。貸付期間は、設備資金の場合は20年以内、運転資金の場合は7年以内となりますが、最初の2年以内は据え置き期間として元本の支払いが猶予されます。つまり、最長2年間は利息のみ支払えば良いということになります。

貸付の利率は、NPO法人の場合、(ア)保育サービス事業、介護サービス事業を営む方、(イ)認定NPO法人、(ウ)社会的課題の解決を目的とする事業を営む方、NPO法人以外の場合、(ア)保育サービス事業、介護サービス事業を営む方、(イ)社会的課題の解決を目的とする事業を営む方は、基準利率から優遇された特別利率が適用されます。

基準利率は金利情勢によって変動しますので、最新情報は下記の日本政策金融公庫ホームページでご確認ください。

参考までに、令和5年1月4日現在では無担保の場合、年利2.15〜3.15%となっています。

対象者

NPO法人またはNPO法人以外であって、次の(1)または(2)に該当する方
(1)保育サービス事業、介護サービス事業等を営む方
(2)社会的課題の解決を目的とする事業を営む方

融資限度額

■担保あり
7,200万円(うち運転資金4,800万円)
■担保なし
「新創業融資制度」を利用する方:3,000万円(うち運転資金1,500万円)
「担保を不要とする融資」を利用する方:4,800万円

対象資金

事業を行うために必要な設備資金および運転資金

貸付期間

設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内)

貸付利率

■NPO法人
(ア) 保育サービス事業、介護サービス事業等を営む方:特別利率B(基準利率より0.65%引き下げ)
(イ) 認定NPO法人:特別利率A(基準利率より0.4%引き下げ)
(ウ) 社会的課題の解決を目的とする事業を営む方:特別利率A(基準利率より0.4%引き下げ)
「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に定める過疎地域内で事業を行うために必要な資金の場合は特別利率B(基準金利より0.65%引き下げ)
(エ) 上記(ア)〜(ウ)に該当しない方:基準利率
■NPO法人以外
(ア) 保育サービス事業、介護サービス事業等を営む方:特別利率B(基準利率より0.65%引き下げ)
(イ) 社会的課題の解決を目的とする事業を営む方:特別利率A(基準利率より0.4%引き下げ)
「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に定める過疎地域内で事業を行うために必要な資金の場合は特別利率B(基準金利より0.65%引き下げ)

融資を受けるための要件は?

融資を受けられるのは、「NPO法人」または「社会的課題の解決を目的とする事業を営む方」のみです。日本政策金融公庫では、地域や社会の課題を解決し、安定的かつ継続的な雇用を創出するソーシャルビジネスの担い手を積極的に支援しており、該当する事業者にとっては比較的借りやすい融資となっているため、ぜひ活用しましょう。

日本政策金融公庫から融資を受けるメリット

<メリット(1)>
日本政策金融公庫の融資の一番のメリットは、過去の実績や営利性が強くなくても融資を受けられることです。民間の金融機関では、貸付リスクの高い相手にはなかなか融資が下りませんが、国の政策として積極的にソーシャルビジネスを支援しているため、該当する事業者にとって利用しやすい融資となっています。

<メリット(2)>
日本政策金融公庫には無担保・無保証の融資制度として、「新創業融資制度」「担保を不要とする融資」があります。「ソーシャルビジネス支援資金」と併用することで、無担保・無保証で融資を受けることも可能となります。

<メリット(3)>
民間の金融機関では企業の格付けにより金利が決まり、業績が悪いほど高金利となります。日本政策金融公庫では、融資の種類によって金利が決まっており、財務状況によらず一律に低金利で融資を受けられます。

<メリット(4)>
上述のとおり、融資の種類によって固定の金利が決定しますので、安心して中長期の事業計画を策定することができます。

<メリット(5)>
民間の場合、短くて半年、長くても7年で返済するのが一般的ですが、日本政策金融公庫の場合は最長で20年と、長期の借入れが可能となっています。

手続きはどうする?

全国にある日本政策金融公庫の支店窓口での手続きとなります。提出する書類は、「事業計画書」や「会社案内」等の参考資料、「決算書」等が必要となります。状況に応じてその他必要となる書類が異なりますので、まずは支店窓口や日本政策金融公庫事業資金相談ダイヤル(0120-154-505)等にお問い合わせください。

まとめ

  1. NPO法人や社会的課題の解決を目的とする事業を営む方には「ソーシャルビジネス支援資金」の活用がおすすめ
  2. 設備資金や運転資金を対象に7,200万円まで融資が受けられる
  3. 最長2年間の元本返済の据置期間の優遇が受けられる
  4. 普通貸付よりも利率の引き下げの優遇が受けられる
  5. 後継者不在等の問題を抱えている場合は、中小企業成長支援ファンドによる資金提供や販路拡大等の経営支援を受けることも考えられる
  6. 無担保、無保証の融資制度との併用も可能
  7. 日本政策金融公庫の融資は、
     —開業資金の借入れが可能
     —無担保・無保証制度がある
     —民間の金融機関よりも低利
     —固定金利で借入れが可能
     —長期間の借入れが可能
    といったメリットがある
  8. 手続きは日本政策金融公庫の窓口で行う